ハワイで訓練中のMV-22が墜落

2015.5.18


 military.comによれば、米海兵隊のMV-22オスプレイが日曜日にハワイで落下着陸し、海兵隊員1人が死亡、21人が病院へ送られました。

 MV-22は午前11時40分頃、落下着陸をしたと、第15海兵遠征部隊は声明で言いました。当局は負傷者の状態について詳細を提供しませんでした。航空機には海兵隊員21人と部隊に配属中の海軍衛生下士官1人が乗っていたと部隊広報官、ブライアン・ブロック大尉(Capt. Brian Block)は言いました。

 第15海兵遠征部隊はカルフォルニアのキャンプ・ペンデルトン(Camp Pendleton)に拠点を置き、訓練のためにハワイに約1週間いました。

 オスプレイは落下着陸した時、オアフ島のベローズ空軍基地(Bellows Air Force Station・kmzファイルはこちら)で訓練のために使われていました。

 キンバリー・ハインド(Kimberly Hynd)は、人気の高いラニカイ・ピルボックス・トレイル(Lanikai Pillbox Trail)をハイキングしていて、彼女の展望地点からオスプレイ3機がベローズ上空で機動飛行を行うのを見たと言いました。彼女はそれらが粉塵を巻き起こしたのに気がつきましたが、それから煙と炎を見ました。2〜3マイル(3.2〜4.8km)離れていたと考えられるハインドは大きな墜落の音を聞きませんでした。「彼らはある種の機動や編隊を行っているようで、通常それらがそれほど密集するのを見ることはできないので写真を撮りました」。


 記事は墜落に直接関係がある部分を紹介しました。

 これだけの記事から墜落原因までは分かりません。しかし、乗員全員が死亡または負傷していることから、かなりの衝撃があった墜落なのは間違いがありません。

 ハインドの証言は重要です。ラニカイ・ピルボックス・トレイルは基地のすぐ北にある山の尾根にあるL字型のトレッキングコースです。基地が見渡せるのは南北に走る尾根の部分で、この辺の標高は100m前後です。下図では、下の方の尾根がトレッキングコースで、ここから滑走路北端付近までの距離が3.2〜4.8kmです。なので、ハインドはおそらく、この図に見えるコースのどこかで事故を目撃し、事故は滑走路北端で起きたと想像されます。

写真は右クリックで拡大できます。

  ハインドの目撃談はオスプレイの編隊が密接に機動飛行を行っていたことを示します。これは戦闘員を乗せ、敵地に離着陸するための訓練でしょう。敵の攻撃を受ける危険を最小限にするため、ヘリコプターは密集編隊で同時に着陸し、兵士を降ろすと、再び同時に離陸するのです。ベローズ空軍基地はこういう訓練を行うのに適しています。住宅地はすべて山の向こうにあり、基地は海岸に面しています。大きな騒音を立てる訓練も、山によって住宅地に音は及ばず、離陸して沖で反転し、滑走路に着陸することで、兵士を展開させる訓練を行えるのです。訓練が終わってからの着陸なら、機体はもっと離れて着陸したでしょう。

 こうした訓練の最中に、3機中1機だけが墜落したのです。ハインドが見た塵芥はオスプレイのローターが巻き起こすもので、これはオスプレイが着陸しようとしてヘリモードで高度を下げていたことを示します。

 事故の状況は2010年にアフガニスタンで起きた墜落事故に似ていますが、こちらは標高約1,500mで起こり、その高度が原因とみられます(過去の記事はこちら )。今回の事故は標高1mで起きています。

 ハインドはオスプレイが墜落するのは見ていません。これは他のオスプレイがまき散らした塵芥で見えなかった可能性もあります。この基地の滑走路は手入れされておらず、滑走路場に草が生えているところもあります。あるいは、着陸地点が草原だった可能性もあります。

 墜落は着陸プロセスの最終段階で起こり、おそらく十数メートル程度の高さから急速に落下したのでしょう。この時に何が起きたかまでは分かりません。隣のオスプレイが巻き起こした風、ボルテックス・リング状態(ヘリコプターの失速)、操作ミスなど色々考えられます。

 いずれにしても、これは横田基地で低空・夜間飛行の訓練を行うとしている米軍に対する反論の材料になります。地元自治体などは、事件の詳細を無視するべきではありません。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.