ヨルダンの世論はイスラム国の空爆反対へ傾く

2015.1.31


 military.comによれば、パイロットが捕虜になったことは空爆に反対するヨルダンの世論を堅固にしたと、アナリストは言いました。

 ヨルダンの超保守的なイスラム主義グループとつながる学者、マルワン・シハーデ(Marwan Shehadeh)は「ヨルダンの世論は政府がイスラム国と交渉する政府に対して強い圧力をかけています」。「もし、政府が彼を釈放するために真剣な努力をしなければ、ヨルダン軍の士気が下がり、大衆は政権への信頼を失うでしょう」と言いました。

 報じられるところでは、ヨルダンは人質を解放させるため、イラクの宗教・部族の指導者を通じて民兵と間接的交渉を行っています。声明の中で政府広報官のモハメッド・アル・モマニ(Mohammed al-Momani )は、ヨルダンはアル・リシャウィ(al-Rishawi)とパイロットの交換しようとしているとだけ言いました。彼は人質交換が調整されたかどうかは言いません。


 記事は一部を紹介しました。記事の大半は日本発の情報で、国内でも報じられています。

 ヨルダンは宗教・部族の指導者を通じてイスラム国と交渉し、日本政府はその報告を定期的にもらっているのが、日本政府が言う「人質の解放に全力をあげる」ということです。外務省は待っているだけです。

 外務省には情報収集能力がありません。アルジェリア日本人人質事件でも、彼らは何もできませんでした。それでも保守的な日本人は満足してくれます。世論調査では60%の国民がこの事件への対応に満足していますし、アルジェリア事件でも65%が支持派でした。だから、外務省は改善しようとはしません。(アルジェリア事件の記事はこちら 

 アメリカはテロリストに身代金を払わないと言いながら、情報機関に人質の居場所を調べさせ、失敗はしたものの救出作戦を行いました。これに対するアメリカの世論調査は知りませんが、多分、60%もの支持はもらえないでしょう。日本人は我慢強いので、この程度の低サービスでも満足してくれるのです。

 それはともかく、気になるのは宗教・部族の指導者がどんな交渉を行っているかです。毎日新聞によると、ヨルダン軍関係者は30日、「中尉が生存している証拠を待っている」と話し、両者の交渉が進展していないことを明かしたと言います。この情報がカサスバ中尉の両親に知らされた情報なら、昨日指摘したのと違い、宗教・部族の指導者からの情報だった可能性が高いと考えられます。ヨルダン政府はかなりの確度で中尉が生存していると考えているものの、イスラム国からの直接の情報ではないと思っているのでしょう。SNSなど公の場に彼らが表明しない限り、公式の回答とは認めないということなのでしょうか。そのために、中尉と後藤氏の命を危険にさらす価値があるとは、私には思えません。

 仲介役の話では不十分でも、人質交換の場で中尉の生存は確認できるでしょうし、イスラム国が後藤氏しか連れてこないのなら、人質交換を中止すればよいことです。当局者たちにはトルコ軍の護衛がつくのですから、危険は最小限です。

 これ以外に表になっていない交渉があって、そのために表に見えるものが不自然に感じられるのかも知れません。そして、それで何もかもが解決することを祈るしかありません。

 


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