ロシアが「リビアで誤爆なし」に物言い

2011.12.21

 military.comによれば、月曜日にロシアは、民間人の犠牲者がいないという主張は嘘であると言い、NATO軍にリビアでの爆撃作戦による民間人の死を調査するよう要請しました。

 ロシアのウィタリー・チュルキン国連大使(U.N. Ambassador Vitaly Churkin)は、彼はNATO軍に国連安保理にリビアでの活動を総括する決定的な報告書を提出するよう求めてきたと言いました。彼は「残念なことに同盟は形式的な報告と言うよりは断片的な報告しか提供せず、これはまったく参考になりませんでした」と言いました。ロシアは今月最高会議を開き、チェルキン大使は記者に、彼は木曜日にリビアについて議論する時に民間人の犠牲を取り上げると言いました。

 「残念なことに、NATO軍はまったくのプロパガンダ・スタイルを採用し、まったく信じがたく、真実ではないことに、民間人の犠牲はゼロだと主張しました」とチェルキン大使は言いました。それは家を破壊された人たち、親類が死傷した人たち、カダフィの支持者だと疑われた隣人のために汚名を被った人たちに、実際には何も起こらなかったということは、冷酷で、冷笑的だと言いました。彼は同盟が自身で行うのを嫌うのならば、国連がNATO軍の空爆による民間人の犠牲を完全に調査することは可能だと確信すると言いました。チェルキン大使は潘基文国連事務総長がNATO軍の犠牲者なしの主張を支持したことも批判しましたが、事務総長が「リビアの民間人の犠牲について誤解があってはならない」と言ったことは称賛しました。

 先月、NATO軍広報官、オアナ・ランゲスク(Oana Lungescu)は、NATO軍が完全に国作法を順守して作戦を行ったことを確信していると言いました。10月31日に終了した7ヶ月間のNATO軍の作戦で、軍用機は9,600回の攻撃任務を含め、26,000回出撃し、1,000以上の戦車、車両、火砲を破壊しました。NATO軍の指導者たちは任務が遂行された精度を称賛し、成功の証拠として爆撃による民間人の死者数が少数であると主張しました。ブリュッセルに拠点を置く軍事同盟の代表は、リビアでのすべてのNATO軍の空爆は軍事目標を狙ったと言いました。


 タリバンのやり方に比べれば、チェルキン大使の言動の方が有効です。ロシアが国連に提案するという決議をすれば、この問題はさらに進展があるでしょう。

 リビア作戦での民間人の犠牲者は報道されていますし、それらを当サイトでも何度も取り上げてきました。それらには、間違いなく誤爆とみられるものと、軍事目標を狙った結果、周囲の民家に被害が及んだ場合、原因が不明瞭な事例などが含まれます(記事)。こうした犠牲は他にも出ているはずです。

 軍事的には9,600回の攻撃で、民間人の被害がこれだけ少ないことは飛躍的な成果だという評価でしょう。しかし、少ないとは言え、調査を行うべき数は誤爆は起きています。それができないのは、NATO軍が各国の軍隊の寄り集まりで、厳しい調査が難しいことにも一因があります。ある意味で、こういう軍同盟は無責任にならざるを得ないのです。また、軍事的には意図的に民間人を狙わない限り、責任を軍人に課すことはありません。発射した空対地ミサイルが故障し、別の目標に命中したとした場合、攻撃機のパイロットに責任を課すことに意味はないという考え方です。

 誤爆の事例を詳しく調べることは可能です。しかし、勝ち戦でNATO軍も国連も、そんな調査はやりたがらないでしょう。こういうところに戦争という問題の矛盾があるのです。



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