NATOがリビアで民間人を誤爆か

2011.6.20


 BBCによれば、リビア政府はNATO軍がトリポリの住宅を爆撃し、少なくとも5人が死亡したと主張しました。

 住宅地のソク・アル・ジマ地区(Souk al-Juma・kmzファイルはこちら)の3階建ての家はひどく破壊されていました。BBCの特派員、ジェレミー・ボーエン(Jeremy Bowen)は後でトリポリ病院で5体の遺体を見ました。

 NATO軍は夜間にトリポリ北部の地対空ミサイル基地を破壊したと言い、リビアの主張を調査していると言いました。マイク・ブラッケン中佐(Wing Cdr Mike Bracken)は、彼はその住宅の正確な位置を知らないと言いました。「この事件を再調査してNATO軍の作戦であると結論した場合、NATO軍は(リビア)作戦のすべての民間人の人命損失を遺憾に思い、深く謝罪します」「我々のパイロットと航空部隊の要員は民間人の危険を最小限にするたむに最大限努力していますが、軍事作戦においてリスクをゼロにするのは結局のところできないのです」「過去にカダフィ政権が住宅地だと主張したことがあるかもしれないこれらの地域は、後にC2の拠点(指揮統制センター)として使われていると判明しました」。

 特派員は後でリビア政府当局者にトリポリ病院に連れていかれ、女性、男性、赤ん坊の死体を見せられました。当局者は彼らが「NATO軍の空襲で死んだ家族だと言いました。特派員は別の男性と赤ん坊の死体も見せられました。それより前に、彼はソク・アル・ジマ地区で2体の遺体を、瓦礫から引き出された遺体と、救急車の中の遺体を見ました。

 リビア当局者は日曜日の攻撃は深夜少し過ぎに貧困層の地区の一つで起きたと言いました。大勢の男たちが救急隊の近くで作業し、瓦礫の部分を除去し、死体を探していました。地元民は一家全員が殺されたと言いましたが、特派員は独自に確認できませんでした。彼は、損害のレベルは空襲の跡のように見え、コンクリートの床が通りに飛び散っており、リビア政府が作ったようには見えないと言いました。場所はNATO軍が繰り返し目標にしている軍用空港から約1マイル離れています。

 リビア政府広報官、ムーサ・イブラヒム(Moussa Ibrahim)は、「NATO軍はリビア国民の心の中に憎悪の種を蒔いています。国民は外国の軍隊が自分たちの未来を決めるのを望んでいません」カリド・カイム外務副大臣(Deputy Foreign Minister Khaled Kaim)は記者に、この場所が「意図的、計画的に民間人の家を狙った」ことを表していると言いました。

 この事件はリビアの首相がNATO軍が作戦で明確に民間人を標的としていると非難してから24時間を越えた時に起こりました。

 NATO軍は作戦開始以来、約4,400回のリビア政府の目標に対する攻撃を含め、11,000回を越える出撃を行っています。


 記事に掲載されたビデオ映像を見る限り、誤爆は本当のようです。このような状況を意図的に作り出すことは、まず不可能です。

 場所は正確には分からないものの、ソク・アル・ジマ地区の位置は分かります。kmzファイルを使い、Google Earthで確認してみてください。地区の東側にある空港が、記事がいう軍用空港です。ここを狙った攻撃が逸れたと考えるべきでしょう。何か軍事施設があるような場所ではありません。

 空港の外縁近くには、戦闘機のスクランブル待機用の掩蔽壕があり、空港の外側にも軍のものらしい建物があります。こういった場所を狙った爆弾(誘導式のミサイルかもしれませんが)が目標からずれて着弾したのです。NATO軍は対空陣地を狙ったと言っていますが、常設の基地は、今のところ見つていません。Google Earthの衛星写真は2010年のものです。リビア政府が言うような意図的な虐殺ではありません。今のところ分かるのは、そんなところです。



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