報告書がシールズ死亡のヘリ墜落を解明

2011.10.14


 military.comによれば、8月6日に数十人の海軍シールズ隊員が死亡したヘリコプター墜落に関して、軍の調査官は問題となる行為がなかったことを見出しました。記事から、当日の作戦に関する部分を抽出しました。

 機密扱いではない要旨において、調査官のジェフリー・コルト陸軍准将(Army Brig. Gen. Jeffrey Colt)は、この任務と遂行に採用された戦術と資源は、過去の米軍特殊作戦任務と合致し、任務を遂行するために選択された攻撃部隊は適切だったと断定しました。

 コルト准将はタリバンの携行式ロケット弾がCH-47「チヌーク」を撃墜し、搭乗していたシールズ「チーム6」を含む38人全員を殺害したたことを認めました。

 一部の者は、これほど多くの高価値の特殊作戦要員を正規の陸軍特殊作戦用ヘリコプターではなく、州軍のヘリコプターに一緒に乗せて活動へ送り込むことにおいて、指揮官が正しい決定をしたかを疑いました。コルト准将の報告書は、墜落と人命の損失は戦争の避けられない結果だったと言います。

 「この任務を飛ぶために命じられたCH-47の要員は完全に訓練され、命じられた搭乗任務を果たす資格を与えられていました」と彼は書きました。ヘリコプター自体は完全に任務のために準備されていました。

 報告書は墜落の状況について、これまでで最も多くの詳細を提供します。作戦はワルダク州(Wardak Province)、タンギ峡谷(the Tangi Valley)のアフガンの武装勢力指揮官、カリ・タヒル(Qari Tahir)を捕獲若しくは殺害するために始められました。同盟国の諜報機関が彼が8月5日に特定の施設にいることを知り、指揮官は特殊作戦要員に彼を捕まえに行くように命じました。

 AH-64攻撃「アパッチ」ヘリコプター、AC-130「ガンシップ」、比較的強力な諜報、監視、偵察航空機と共にチヌーク2機に乗った陸軍レンジャー部隊は、攻撃の第一陣となりました。シールズとその他の特殊作戦要員は、前進作戦基地において、レンジャー部隊が援護を必要とした場合に支援する、第二の「即応部隊」の一部でした。指揮官は施設の外にまだ敵戦士のグループがいるのを見ていました。落後した者が逃げるのを防ぐため、指揮官は即応部隊を送りました。軍は、出来るだけ早くに彼らが地上に降り、行動に移るために、ヘリコプター1機に乗せた兵士を必要としました。

 17人のシールズ隊員、5人の海軍の支援要員、3人の空軍特殊作戦要員、7人のアフガン兵、軍用犬と航空要員を乗せたヘリコプターが着陸した時、それまで察知されていなかったタリバンと疑われる戦闘員が連続的にRPGを2〜3発発射しました。最初のRPGはヘリコプターに命中せず、二番目が後部ローターのブレードの一つに命中して爆発しました。ヘリコプターは乾燥した河床に落ち、すぐに大きな火の玉に飲み込まれ、数時間後に機体が燃え尽きるまで、複数回の燃料と弾薬の爆発を起こしました。

 報告書は撃墜がオサマ・ビン・ラディン殺害への復讐のための精巧な罠であったという断定を解消しました。撃墜は仕掛けられた待ち伏せの結果というよりは、タンギ峡谷の北西部の部分に集中した、3時間半進行していた同盟軍の航空作戦のために警戒状態にあった結果だと書きました。

 コルト准将は指揮官が十分な監視用航空機をシールズ部隊につけなかったことを非難しましたが、それが撃墜の原因ではないと付け加えました。「ヘリコプターを投入するよりも前に頭上に航空機を用いることは、差し迫った地上作戦の敵が警戒する可能性を最小限にするために、よりよく同期しなければなりません」。

 中央軍が公表した報告書の要旨は、指揮官がチヌークを攻撃した武装勢力を殺したと信じる後の空軍の攻撃について述べていません。アフガン駐留米軍指揮官、ジョン・アレン海兵大将(Marine Gen. John Allen)は8月に、レンジャー部隊が襲撃する上空に監視用航空機を飛ばせば、指揮官が彼らを攻撃できるようになるまで、RPG射手を追跡できるかも知れないと言いました。


 この事件は当サイトでも紹介済みです(記事)。

 結局、米軍が所在を知らなかった敵がいて、彼らがヘリコプターを撃墜したということのようです。どんなにうまく作戦を考えても、最悪の不運に見舞われると大損害を出すのが戦争です。戦争は理論だけでなく、運にも支配されているのです。

 報告書は、その線ですべてを説明しているようです。しかし、敵は別の航空作戦で警戒態勢にあり、事前に警戒した敵の近くに降下した結果として攻撃を受けています。作戦の是非自体が問題視されるべきだと、私は感じます。しかし、これだけの記事から結論を出すべきではないでしょう。問題の航空作戦がどれだけ離れた場所で行われていたのかも知る必要があるからです。

 また、現場を監視する航空機をもっとたくさん用意していれば、隠れていたタリバン兵を見つけて、先に攻撃できたということになります。彼らがなぜ見つからなかったのかは不明です。監視用航空機などの数字は機密でしょうから、この辺は評価のしようがありません。

 もやもやしたものは残りますが、これ以上の評価は無理のようです。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.