チヌークは着陸時に撃墜か

2011.8.10


 military.comが、海軍シールズらを死亡させたヘリコプター撃墜について続報を報じました。記事から事件の核心部分を紹介します。

 米軍指揮官は、武装勢力がPRG(携行型ロケット弾)でヘリコプターを撃墜した時、隊員が銃撃戦に巻き込まれた米兵を支援するために飛行中だったと認めました。「ヘリコプターは米軍隊員と特殊部隊を進行している交戦の現場へ輸送中にRPGによって攻撃されたと報告されました」とISAFの声明は言いました。

 国防総省当局者2人はマクラッチー紙に、撃墜の軍隊内での調査は、現在あまりにも危険な戦いの中へチヌーク・ヘリコプターを降下させるかどうかを問うと言いました。事件前、タリバンは滅多にチヌークを撃墜せず、軍はブラックホーク・ヘリコプターよりも多くの人を運べる航空機を使用して、こうした状況下で運用できるという指揮官の確信を強めました。

 しかし、ちょうど2週間前、7月25日、タリバンは東部アフガニスタンのクナール州(Kunar province)でチヌークを撃墜し、2人を負傷させたのにRPGを用いました。チヌークは底部に被弾し、ハードランディングを強いられたと、国防当局者は言いました。

 土曜日に、当局者はRPGはヘリコプターの真ん中に命中し、それを空中で真っ二つにして、搭乗していた全員を殺しました。

 同盟軍の声明によると、土曜日の事件は、米地上軍がRPGとAK-47で武装したタリバン軍との戦いに巻き込まれた時に始まりました。兵士たちは、隔絶した地域で「武装勢力の作戦」を指揮した特定されていないタリバン指揮官を捜索するためにタンギ峡谷に入った米軍兵士を支援するために飛んでいました」とISAFの声明は言いました。

 「捜索を開始した後、地上の最初の部隊はいくらかのRPGとAK-47で武装した武装勢力が地域を移動しているのを観察しました」「部隊と武装勢力は小火器で交戦し、数名の敵が殺されました」。兵士たちは支援を要請し、海軍シールズと空軍兵、アフガン特殊部隊の33人がチヌークに搭乗して、5人のヘリ要員によって、戦いに向かいました。チヌークが着陸する時はゆっくりと地面に降下します。土曜日、チヌークは保護を提供する囲まれた基盤のない隔絶した地域でそれを行いました。最高の状況下ですら、軍事当局者は、着陸は戦闘で最も脆弱になる部分だと言います。アフガンで、激戦の中では、それはタリバンが一度に大勢の兵士を殺す絶好の機会です。

 撃墜の後、地上部隊は武装勢力との交戦を止め、墜落現場へ移動し、そこを確保して、生存者を探したと、ISAFは言いました。


 この記事では、チヌークは着陸しようとした時に攻撃されたことになっています。これは自然なことです。多分、着陸時に撃墜されたことで間違いはないのでしょう。

 落下することで全員が死亡したのだから、チヌークは数十mの高度にあるあたりで攻撃を受けたのでしょう。身につけた重たい装備品は、兵士を余計に傷つけたことでしょう。こういう場合、ハイテク装備は邪魔になるだけです。

 しかし、まだ疑問は残ります。応援が必要なほど激しい交戦に巻き込まれた地上部隊が、墜落したヘリへと移動して、捜索活動ができたという点です。タリバンにとって、これは格好の機会です。墜落地点周辺に防衛線を張る間、捜索活動をおこなう間は、いずれも攻撃の好機です。捜索後に遺体を収容する作業があるわけで、そのために別のヘリコプターが到着することになりますから、それもまた攻撃の目標となります。つまり、直ちに救出に向かったというのは、遺族への配慮と米軍の面子のために、「すぐに助けに行った」と言うための方便であり、地上部隊はその場で銃撃戦を続け、タリバンを制圧した後に捜索活動に転じたと見るのが自然です。

 また、先にも指摘しましたが、空軍の前線航空管制官が3人もいたのなら、ヘリが降下する前に地上部隊と連絡し、敵の位置を精密に確認して、空爆させることはできなかったのでしょうか。

 結局、ヘリのルートと敵の位置が分からないと、この事件は評価しようがありません。しかし、応援要請自体からそもそも疑問視すべきです。地上部隊が捜索活動をするだけの余裕があるのなら、応援はむしろ不要でした。チヌークを戦闘地域に出すべきかどうかだけが問題なのか、私には疑問です。



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