米で女性の徴兵制が憲法議論に

2020.3.13



 military.comが 男性だけを対象とする徴兵制度は憲法違反かという記事を報じました。

 政府委員会がこの問題を議論するのに数週間先立ち、火曜日に、連邦上訴裁判所の陪審団は男性のみの徴兵登録システムを憲法 違反だと裁定するよう求められました。

 しかし、第5巡回上訴裁判所の3人のメンバーは、男性のみの徴兵登録システムを支持すると判決した最高裁の1981年に照 らし、そうすべきということに懐疑的のようでした。

 カール・スチュワート判事(Carl Stewart)、ドン・ウィレット判事(Don Willett)、ジェイクス・ウェイナー判事(Jacques Weiner)は、2015年に軍隊が女性に戦闘任務を認めると決めたにも関わらず、1981年の判例が無視され得るかどうかに疑問を示しました。

 「それは私たちが先回りした棄却を行うことに関わる自由を与えないのですか?」とウィレット判事は火曜日の審問の間に尋ね ました。この審問はチューレーン大学(Tulane University)で、学生、教職員、その他のオブザーバら、約50人の聴衆の前で開催されました。

 男性のみの徴兵に反対する「the National Coalition for Men」と男性2人のために論争する弁護士、マーク・アンジェルッチ(Marc Angelucci)は、1981年の判例は、女性がほとんど戦闘に不在の時代に決定されたと言いました。

 現在、女性は戦闘任務につき、状況は大きく変わったとアンジェルッチは言いました。さらに彼は、下級裁判所は事実がこうも 大きく変化したのだから、時代遅れの判例に縛られないと言いました。

 政府側で論述した米司法省の法律家、クレア・マレー(Claire Murray)は、下級裁判所は最高裁の判決を覆す権限がないと言いました。

 彼女は、裁判所は軍隊の徴兵を管理する事柄については議会に従わなければならないとつけ加えました。議会は女性を徴兵登録 する必要があるように態度を変えていません。

 彼女は、議会は徴兵制を復活させる必要がある有事において、女性を徴兵するかどうかを決める上で、法にかなった議論をして いると言いました。これらの議論は戦闘における予測される女性の死亡率と、男性と同数が徴兵された女性のための装備品と施設 の必要性を含みます。

 裁判所が1981年の最高裁の判決を打ち勝てない判決を支持するなら、これらの論争はほとんど意味がないとウェイナーは言 いました。

 上訴委員会は、男性のみの徴兵は憲法違反だとするテキサス州の連邦判事の2019年の判決を支持するかどうかを検討してい ます。それはいつ裁定するのかを示しませんでした。

 米政府は若者を徴兵するのを1973年に止めました。しかし、すべての男性は未だに18歳になると徴兵に登録しなければな りません。

 国が未だに徴兵登録システムを必要とするか、女性が登録される必要があるかと、その他の変更が必要かを含めて、3月25 日、連邦委員会は最終報告を出し、徴兵について勧告することになっています。

 委員会議長、元共和党議員、ネバダ州のジョー・ヘック下院議員(Rep. Joe Heck)は、女性を徴兵登録する必要性を公に支持しています。

 「委員会は進行するに連れて、この裁判を注視しており、我々の仕事をなおさら適切で重要なものにしています」と、ヘックは 月曜日に電子メールの声明で言いました。

 アンジェルッチは火曜日、裁判所に、彼は委員会が何を勧告しても裁判をするだろうと言いました。

 記事にあるように、米軍は志願制をとっていますが、徴兵制を止めたわけではなく、それが必要になったときに復活で きるよう、徴兵の年令になった人のリストを作成しています。そのリストの中から、実際に徴兵される人が無作為に選ばれます。 ほとんど可能性がないのに、予算をかけてリストを作成すべきかどうかについては、よく議会で議論になります。

 徴兵の対象は男性のみで、女性は対象ではありません。憲法上、誰もが平等なので、この差が認められるかどうかは当然、議論 となります。トランプ大統領がトランスジェンダーの軍務に制限をつけたことも、トランスジェンダーを理由に国防の任務につけ ないという点で、憲法上の議論となります。

 米軍は最近、多くの職場を女性に開放しています。海軍は潜水艦にも女性隊員を乗せています。特殊部隊に女性が入隊する実例 も出てきました。徴兵に関しても同じだという考え方は当然ありえます。

 しかし、前に紹介したことがあるように、徴兵登録は議会が徴兵制度を復活させない限りは機能しません(関連記事はこ ちら)。しかも、徴兵制度は昔と違って、日本人がイメージするように、銃を担ぐ兵隊を集めるのではなく、特別な 能力をもった人から集められるので、そういう人が指名される可能性のほうが高いのです。だから、抽選で決まる徴兵制は実際に は行われないかもしれません。実際、アメリカでは ノース・オグデン市の市長が、情報分析の能力があることから応酬され、アフガニスタンでインサイダー攻撃のために死亡してい ます。(関連記事はこちら

 時代はすでに女性の徴兵もあり得るところに来ています。それを判断基準とするのか、現実的に徴兵制が必要ではないから男性 のみでよいのか。そんなところが議論の中心になるかもしれません。政府委員会の判断に注目しています。

 


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