トランプがトランスジェンダー政策に逆行

2017.7.27


 military.comによれば、ドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)はトランスジェンダーが米軍で勤務することを禁止すると発表しました。

 一連のツィートで、大統領は「将軍たちと軍事専門家と協議して、米政府は米軍のあらゆる地位において勤務することで、トランスジェンダーの個人を容認したり、受け入れないことを勧告しています」と述べました。

 彼は「我が軍は決定的で圧倒的な勝利に集中しなければならず、軍隊内のトランスジェンダーがもたらす、とてつもない医療費と混乱を負えません。ありがとう」と彼は付け加えました。

 国防総省は大統領の発表について追加の詳細を直ちに公表しておらず、問題についての質問すべてをホワイトハウスへ回しました。

 今月の頭に、ジム・マティス国防長官(Defense Secretary Jim Matti)の報道官は、トランスジェンダーの勤務を認めることが、軍の準備態勢や殺傷力を傷つけるかどうかを評価するために各軍の指揮官に半年間を与えたと言いました。

 陸軍て空軍は二年間の猶予を求めていて、海軍は海兵隊からの求めもあり、一年間の猶予を求めていました。

 国防総省報道官、ダナ・ホワイト(Dana White)によれば、マティス長官が命令した遅延は、すでに公に軍務についているトランスジェンダーの兵士には影響を与えませんでした。これらの個人にいま直ちに何が起きるかは明らかではありません。

 約250人の人々が国防総省の人事制度で性転換したり、性転換を承認されています。

 トランスジェンダーの兵士が公に勤務容認の推進はバラク・オバマ元大統領(President Barack Obama)の政権で始まりました。当時の国防長官アシュトン・カーター(Defense Secretary Ashton Carter)は2016年夏に、指揮官たちにトランスジェンダーの新兵を受け入れる計画を起案し、2017年1月1日までに準備を整えるよう命じました。

 2011年、オバマ大統領は、ゲイとレズビアンの兵士が公に勤務するのを妨げる、軍の「尋ねない、言わない(don't ask, don't tell)」政策を終わらせました。

 ランド社(Rand Corp.)によれば、トランスジェンダーの兵士の総数は軍の0.5%未満と見積もらます。

 アグネス・グレベン・シェーファー(Agnes Gereben Schaefer)による2016年の研究によれば、現役で現在勤務している兵士は1,320〜6,630人で、その総計は1,300万人の現役部分で0.1〜0.5%、選抜予備役で830〜4,160人で、軍隊に15,000人近いトランスジェンダーの兵士がいると見積もりました。

 シェーファーによれば、どの年でも、これら現役隊員の少数、29〜129人の隊員が、派遣に影響を与えかねない性別適合手術(gender reassignment surgery)を受けようするようです。

 トランスジェンダーの兵士の人数が比較的少数な一方、彼らは軍隊の様々な場所で勤務します。

 Military.comが先週報じた最初の記事で、海軍特殊作戦の仕事で最初の女性候補者はトランスジェンダーになるかもしれません。海軍の全志願制特殊戦争戦闘員/クラフト・クルーマン・プログラム(Special Warfare Combatant-Craft Crewman program、SWCC)は彼らの指揮系統に彼らがトランスジェンダーとして性別を特定されると通知しました。

 すでにトランスジェンダーとして指揮系統に特定されている兵士が人事措置に直面するかどうかは明らかではありませんでした。

 昨年秋に公表された海軍政策ガイダンスによれば、隊員は医療の必要があると医師に診断されなければならず、司令部は性転換プロセスを始めることを承認しなければなりません。それはホルモン療法から手術まで様々な形になることがあります。隊員は健康基準と転換しようとしている性別の必要条件に合格できることも証明する必要があります。

 ランド社の報告は、トランスジェンダーの兵士に性別適合手術を提供することとその他の治療に関連する費用は比較的定額だといいます。

 研究によれば、トランスジェンダーの隊員への健康医療補償を提供することは、現役部分の健康医療費用を僅かに、年間2,400〜8,400万ドル増やし、医療費全体では0.04〜0.13%押し上げます。

 議員、権利援護者らは素早く大統領の発表に反応しました。

 ニューヨーク選出の民主党員で、上院軍事委員会のカーステン・ギリブランド上院議員(Sen. Kirsten Gillibrand)は、この動きを「許しがたい」と言いました。

 「今朝、トランスジェンダーの隊員は制服を着て、軍務に現れたのに、最高指揮官に(ツィッター上だけで)どの地位においても彼らを望まないと言われました。許しがたいことです!」「この新しい決定は有害で、道を間違えるものです。我が軍を強くするのではなく、弱くします。私はこれと戦うために私の力の限りあらゆることをするつもりです」。

 アリゾナ州選出の共和党員で同委員会議長のジョン・マケイン上院議員(Sen. John McCain)は、トランプのツィートは、なぜ主要政策の発表がツィッターを介するべきでないかのもう一つの実例だと言いました。

 最近、脳腫瘍と診断された80歳の上院議員は「国防総省は現在、それが現在、軍の準備態勢への影響と、現在制服を着て勤務したり、入隊を望むトランスジェンダーに関係する関連問題へ引き起こす医療義務に関する研究を行っています」と付け加えました。「私はいかなる新しい政策決定も研究が完了し、国防長官、軍指導層、議会による徹底的な評価が行われるまで使われるとは信じません」。

 退役海兵隊員で、ワシントン地区のキリスト教社会政策部の「家族研究評議会(the Family Research Council)」の代表、トニー・パーキンス(Tony Perkins)は、トランプの動きを賞賛しました。

 「軍の優先事項へ立ち戻り、我が国の軍隊を駄目にするオバマ時代の社会実験を続けないという約束を守ったことで、私はトランプ大統領に拍手を送ります」とパーキンスは声明で言いました。「軍隊はいまや、オバマの社会的課題を進めるために使われるのではなく、戦うために準備する努力に集中できます」。

 軍隊の中のレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの人々を研究する、サンフランシスコのパーム・センター(the Palm Center)の代表、アーロン・ベルキン(Aaron Belkin)は、大統領の発表を「衝撃的で無知な攻撃です」と言いました。

 「不名誉な政策の悲惨な歴史から分かるように、差別は軍の準備態勢を損ないます」とベルキンは声明で言いました。「これは我が軍と、この一年、誇りをもち、有益に勤務してきたトランスジェンダーの兵士に対する衝撃的で無知な攻撃です」。


 米軍は身内の不祥事もよく報道しますが、やはり福利厚生に関する重要問題となると、記事が長くなります。

 トランスジェンダーは自分が属する性別に対して不一致感を感じている人のことで、米軍は2015年にこの人達の入隊を認める方向で動いていると報じられています。(関連記事はこちら

 つい最近まではその方向で動いていました。

 それをトランプ大統領がいきなり変えてしまったのです。衝撃が走るのは当然です。

 しかし、これはトランプ大統領のスタンドプレーのようです。米軍自体はなにも発表していません。支持率が低迷する大統領の思いつきとしか思えません。 国防総省が大混乱しているのが目に浮かびます。

 ゲイとレズビアンの勤務を認めるための議論も、当サイトで何度も紹介してきました。激しい議論はあったものの、最後にはマイク・マレン統合参謀本部議長が大統領の命令を実行するよう命令して、方針が決まったことでした。

 それを大統領の一存でひっくり返せば、米軍が混乱するのは当然です。

 この記事も、明らかにトランプの主張が事実と違うかを強調しています。トランスジェンダーに対処したところで、大した費用はかからないのです。2012年に米軍は兵士の過剰体重と肥満に対処するために11億ドルを使っていると報じられています(関連記事はこちら)。トランスジェンダーに対処するのに年間2,400〜8,400万ドルしかかからないのです。

 準備体制への影響なんか、ほとんど数値化できない程度の話でしょう。

 要するに、差別主義者のトランプにとって、トランスジェンダーは理解できない人たちで、軍隊から追い出したいのです。それだけの理由しかありません。

 

 

 


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