「The Sentry」報告書 キール大統領(1)

2016.9.19


 「The Sentry」報告書の残りは、逐語訳ではなく要旨を紹介していきます。まとめ方が下手だと、重要部分が欠落するので、慎重に内容を評価していこうと思っています。書式は当サイトのものに戻します。今回紹介するのはキール大統領に関する部分です。12〜26ページが該当しますが、今回紹介するのは前半の12〜18ページです。(報告書の原文はこちら

サルバ・キール・マヤディット大統領

  • キールの大統領としての年俸は60,000ドル。
  • 10代、20代の者を含む彼の近親者は国外で豪勢に暮らし、南スーダンの石油、鉱山、経済部門を含む広範なビジネス活動の株式を保有する。
  • 大統領の義理の兄弟、グレゴリー・バシリ将軍(Gen. Gregory Vasili)は大きな食糧調達スキャンダルに関与した会社の株式を持っており、マレーシアの大手石油企業「Petronas」との石油売買の合弁事業を行った。

ルリ(Luri)の農場

図は右クリックで拡大できます。
  • ジュバの西約10マイルにあるサバンナ、森林地帯のルリに独立した2011年に土地を買った。
  • ルリ川の岸にある高さ約305mの切り立った丘の影に、壁に囲まれた多数の家、牛に関する施設、耕作地、飛行場とヘリパッド、鉱物と石の採石施設がある。(当サイトでこの牧場の牛が戦闘で逃げたことを紹介 記事はこちら
  • 牧場には飛行場(kmzファイル)、採石場(kmzファイル)、邸宅(kmzファイル)、民兵基地(kmzファイル)がある。
  • 慣習法当局は便宜を図るのを見返りに無償で土地をキール大統領に認めた。
  • 施設の建設は2013年後半に始まり、2年以上続き、2016年前半に完成したようにみえる。この期間は現在の内戦と深刻な財政危機と経済の内部崩壊の日付けにほぼ正確に一致する。南スーダンは石油収入の喪失、インフレの劇的増加(2016年7月までに661%)、重度の通貨不足、経済全体の大きな縮小をみた。
  • この地所は「ABMC Thai-South Sudan Construction Company Limited」という会社に結びつけられる。この会社の多くの従業員と役員はタイの出身で、ABMCは南スーダンの商工会議所の議長も務める一方で、建設、銀行、エネルギー、ホスピタリティ、瓶詰、航空に投資をしている南スーダンのビジネスマン、ベンジャミン・ボル・メル(Benjamin Bol Mel)が経営する。
  • キール大統領はABMCに割り振られた数億ドルの道路建設契約を推し進めた。
  • キール大統領がABMCから個人的な利益を得て、密室で会社の利益を積極的に支持した(元政府高官筋の情報)。
  • ボル・メル氏はキール大統領の子供と共に南スーダン銀行の株式を所有している。
  • ABMCの施設は採石工場、金属板圧延工場、パン屋を含む。
  • キール大統領の報道官は大統領のABMCやボル・メル氏とのつながりを否定し、ルリの牧場に牛を持っているだけだと主張。
  • 衛星写真はキール大統領の施設に隣接した土地が耕作されたことを示し、ここでキール大統領がトラクターの座席に座る写真が存在する。
  • ルリに配置された多数のABMC従業員が住居の内部や牛の給餌施設のものを含む写真をソーシャルメディアに投稿している。
  • 唯一舗装された道路に沿って新しい軍用飛行場がある。
  • 2016年5月まで、攻撃ヘリコプター4機が飛行場に駐機していた。
  • ABMC従業員数名がMi-24攻撃ヘリコプターの写真を投稿している。
  • 国連専門委員会と報道によれば、この飛行場は内戦の間、軍事作戦に使われたMi-24の基地として用いられた。
  • Mi-24は反対勢力の領域と西エクアトリア州の地域を攻撃するために政府軍が使い、国際的な非難を浴びた。
  • 国連専門委員会の2016年1月の報告で、Mi-24は軍事作戦で優位に立つために重要で、戦争の拡大を容易にして、紛争の軍事解決を模索する政府の中で奨励された。
  • 国連調査員は航空機の整備を提供するウクライナの企業「Motor Sich」の非南スーダン人の人員をみつけた。
  • 2016年7月に戦闘で政府軍はMi-24を使い続けた。
  • 報道、国連、アフリカ連合は、2013年12月にジュバで大量の残虐行為を行ったマシアン・エニヨア(Mathiang Anyoor)の民兵がルリのキールの牧場で訓練を受けたと主張した。
  • マシアン・エニヨアはディンカ族の中で「大統領を救う」を意味する「ドット・ケ・ベニ(Dot ke Beny)」として知られる。
  • この民兵の起源は様々にいわれるが、2012年に北部のバハル・アル・ガザール州(Bahr el Ghazal state)で、スーダン政府からの挑発への対応のために結成されたとする説がある。
  • マシアン・エニヨアは主に自警武装集団として用いられ、軍隊の通常の枠外で活動し、キール大統領と彼の同盟者だけに忠実。
  • 南スーダン高官の一人は、紛争中の民兵の徴用と配備は秘密の動員だと説明した。国連専門委員会によれば、民兵の武器調達は正規の経路を回避した。
  • 民兵の訓練は通常の手順を回避し、少なくとも一部の兵士はルリで訓練を受けた。国連専門委員会の2016年1月の報告書によれば、民兵は当時の参謀長、ジェームズ・ホス・マイ(James Hoth Mai)の承認を受けずに、ルリのキールの牧場で訓練された。
  • 国家保安局将校3,000人以上の訓練の最初の4カ月も部分的にルリで行われた。
  • 一部の南スーダン人はこれらの兵士を「ルリ・ボーイズ(Luri boys)」と呼んだ。
  • 衛星写真は、2014年前半に一時的な構造物が築かれ、兵士の部隊らしいものがキール大統領の家の北西半マイルの土地にあるのを示す。
  • アフリカ連合が民兵を発見した。
  • 調査委員会は、この民兵が掃討作戦、家宅捜索、的を絞った殺害、民間人に対する残虐行為を含め、2013年12月に始まった紛争の憂慮すべき残虐行為と人権侵害の原因だとしました。

 これまでに訳した報告書の目次は以下のとおり。

 概説
 南スーダン内戦

  途中までなので、まだ感想は書けませんが、個人が所有する土地で民兵の訓練はおかしな話です。アフリカならあり得ることかも知れませんが、これは大統領の私兵を養成しているとしか思えません。

 


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