「The Sentry」報告書 内戦の解説を邦訳

2016.9.19


 「The Sentry」報告書の内戦に関する解説「South Sudan's Civil War: Fighting for Control of the Kleptocracy」(10〜11ページ)を邦訳しました。(報告書の原文はこちら

 

南スーダン内戦
泥棒政治の支配をめぐる戦い

 キール大統領と追放されたマシャル副大統領の対立状態は目新しいものではありません。スーダン人民解放運動軍(SPLM/A)の高官として、キール大統領とマシャル副大統領は自決へ向けた前進の中で、傑出した人物でした。これら二人の最高指導者の関係は数十年間ひどく揺れ動いてきました。二人の男は手を組み、1990年代に敵に転じ、それから2000年代初期の独立へ向けた最後の前進中に、再び手を組みました。2005年にハルツーム(訳註 スーダン政府)との包括的和平合意に署名してから、南スーダンの政治はキール大統領とマシャル副大統領が率いるネットワーク間の競合する汚職により特徴づけられてきました。これらの対立する派閥は国家と特権の支配で優位な立場になろうとしてきました。

 これらの男たちは2011年の独立から2013年12月にキール大統領がマシャル副大統領を解任するまで、南スーダンの二つの最高位を握りました。続く数ヶ月にわたって緊張は拡大し、2013年12月にキール大統領がマシャルと彼の支持者がクーデターを企てたと非難した時に収拾がつかなくなりました。2013年12月のジュバでの激しい暴力が勃発し、キール大統領に忠誠を誓う政府軍と民兵をマシャル副大統領が率いるスーダン人民解放運動軍・反対勢力(SPLM/IO)に対向させる現在の内戦の始まりをもたらしました。紛争は2016年初期に和平合意に署名した数ヶ月後に収まりました。マシャルはようやく2016年4月に地位に復帰するためにジュバに戻りましたが、停戦は短命だと判りました。2016年7月までに、南スーダンは紛争へ戻り、キール大統領とマシャル副大統領はクーデターの謀議と汚職についてお互いを非難し、2016年8月に、キール大統領はマシャル副大統領を解任し、タバン・デン・ガイと置き換えました。キール大統領とマシャル副大統領は汚職と職権濫用についてお互いを非難しました。しかし間違いなく、現在の戦争は南スーダンのシステムを変えることではなく、誰がそれを支配するかに関することです。

 キール大統領とマシャル副大統領指揮下の軍隊は南スーダン全土にわたる大量の残虐行為とその他の忌々しい人権侵害の原因となってきました。2012年12月にジュバで戦争が最初に起きた数日後に、キール大統領に徴用された民兵で、最も近い顧問のマシアン・エニヨア、SPLA参謀長のポール・マロン・アワン将軍、多くが北バハル・アル・ガザール州のディンカ族グループで構成された若い男たちは、ジュバで大量の人々を虐殺したとされ、狙われた者の多くは異なる部族グループ、ヌエル族の出身でした。これは上ナイル地方のあらゆる場所で、両者によって段階的に増加する残虐行為の報復の連続を引き起こしました。例えば、2014年4月、マシャル指揮下の部隊は石油が豊富なユニティ州のベンティーウを占領するために攻勢を開始しました。包囲中、SPLM-IOの兵士は多数の民間人を含んだ数百人を虐殺したと報告されます。その他の類似する残虐行為が、2014年と2015年を通して、そして2016年に入ってすら、政府とSPLM-IOの兵士両方によって、上ナイル地域の至るところで行われたとされます。

 2015年にアフリカ連合が内戦中に行われた虐待を報告するために調査委員会を設置したとき、その調査結果は汚職が紛争を煽る中で演じた役割に関して明白でした。

 様々な委員会の協議から、公正な資源配分の欠如と、その結果起こる南スーダンの様々なグループの疎外化が、結果として起きた戦争の突発の背景となる一触即発の妬みと失望の源であったことは明らかでした。政治権力と天然資源の収益、汚職、縁故採用のための戦いが、全土を荒廃させた危機を勃発させたことを明確に示す主要な要素であるようにみえます。

 キール大統領とマシャル副大統領自身たちですら、汚職がこの国で現在起きている危機の中心にあると認めました。

 2012年6月、キール大統領は記者にリークされた政府当局者へ向けの書簡の中で「40億ドルと見積もられる金が使途不明か、もしくは単に元職と現職の当局者、政府当局者とつながる腐敗した個人により盗まれました」と書きました。しかし、これらの基金は回収されず、最初に略奪を許した泥棒政治のシステムは完全に無傷のままです。


 報告書の概説部分はここに掲載しています。この記事と合わせてお読みください。

  すでに知っている部分も多いのですが、これが南スーダン内戦の原因です。キールとマシャルの対立が金になる資源の争奪戦だとの主旨です。

 ジェームズ・ダニガンの「Dirty Little Secrets of the Twentieth Century」は20世紀に起きた共産主義やナチス、アフリカ諸国が起き行った虐殺について書いています。(283ページ)

 これらの戦争の大半は金にまつわることでした。悲しいかな事実です。これらの殺戮者たちは、しばしば気高く聞こえるでっちあげの理由で正当化されます。しかし、それは概して、土地、金、あるいはその両方にまつわることです。

 南スーダン内戦にもこの原則が当てはまりそうですが、キールの資産に比べると、マシャルのそれはかなり少なく、競合するような内容ではないことが気になります。この報告書はマシャルも告発していますが、マシャルの報道官は彼の無実を証明しているとコメントしています。

 いずれが正しいのかは、今後見極めていく必要があります。

 私は再び、民進党、共産党、社民党、生活の党に、ここに日本語訳があることを連絡しました。その内容は以下のとおりです。

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このメールは民進党、共産党、社民党、生活の党にお送りしています。

私は平和と軍事の問題を扱うホームページ「スパイク通信員の軍事評論」を運営する者です。

御存知の通り、アメリカの監視団体「The Sentry」が南スーダン政府の腐敗を暴いた報告書を公表しました。その概説部分の邦訳は先日お知らせしたとおりです。

日本は南スーダン政府を支援するために自衛隊を派遣しており、直接的間接的に南スーダン政府を支援しています。当サイトで繰り返して警告してきたとおり、南スーダンは全面的な内戦に突入しており、施設部隊による建設支援を中心としたPKO活動は頓挫しているも同然です。私は直ちに撤退し、別の方法で南スーダンが国家として正常化するよう支援すべきだと考えています。

そうした主張の一環として「The Sentry」の報告書の概説部分を邦訳し、当サイトに掲載しました。ぜひとも貴党の皆様に閲覧戴き、後学にして戴きたいと考えます。

アドレスは以下のとおりです。
http://spikemilrev.com/news/2016/9/19-1.html

報告書の日本語化は今後も進め、日本人の多くに読んでもらえるようにする予定です。

このメールに返信は不要です。私は皆様の行動を必要としています。

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