防衛大臣2人の退役・就任会見を読む

2016.8.6


 稲田朋美という人物が防衛大臣になったこともあり、今後は防衛省の記者会見のページをよく読むことにします。非生産的な作業が増えることになりますが、人物が人物なので警戒を怠る訳にはいきません。

 まずは中谷元氏の退任会見から見てみます。


平成28年8月4日
中谷元の退任記者会見

Q:1年8ヶ月の中で、記者会見やぶらさがりで、印象に残っていることは何かありますでしょうか。

A:やはり自衛隊というものが、どういう存在で、どういう役割を果たしていかなければならないのか、いろんな経緯があります。自衛隊というのは、その誕生のときから、しかもそれが、憲法の問題にかかっておりますので、国会でも、この憲法と自衛隊の関係、未だに議論のテーマになっているわけでありますが、非常に大事なテーマでありまして、そもそも自衛隊があるべき本質論につきまして、質問を受けて、私の考えは、お話をいたしましたけれども、そういう思いが国民の皆さんにも伝わるように、そういう希望は持ちました。特に、実オペレーションで、北朝鮮のミサイルの対応、また、南西海域の警戒監視や南スーダンでのPKO活動、本当に隊員の皆さんが、懸命に現場で務めている中で、そういうことに対して、率直な質問や御意見、そういうことがありました。私なりには、精一杯答えたつもりでございますが、まだまだ、そういう点におきましては、課題やこれからの検討事項があるなという思いであります。

 「南スーダンでのPKO活動」としか述べていないのが気になります。すでに戦闘が激化して自衛隊はPKO活動はできておらず、基地内で待機と施設警備だけやっている状況です。状況がどうなるかが分からない中、これだけのコメントしかないのかと、愕然とします。

 第2次世界大戦時の零戦パイロット、坂井三郎氏の著書「大空のサムライ」に、硫黄島の激戦から退避して東京に着いたら、戦争などしていないかのように穏やかで驚いたと書かれています。その東京も硫黄島が陥落すると、そこから離陸した爆撃機の攻撃にさらされるようになり、地獄と化しました。このように、戦争とは目の前まで来ないと実感できないものなのです。そこで、実感ではなく、論理的に危機を判断して行動すべきだとなるのですが、さっぱりそうならないのが困りものです。

平成28年8月4日
稲田朋美の就任記者会見

 稲田防衛大臣の発言は、今後注視していく必要がありますので、就任会見全文を引用しました。

 注目されるのは、記者が珍しく第2次世界大戦で日本が侵略戦争をしたかどうかについて繰り返し、しつこく質問しているところです。いま聞いておかないといけないことなので記者も食い下がったのでしょう。

 それに対して稲田は「心の問題」と、流石は法律家らしく「内心の自由」を盾に答えを拒んでいます。

 要するに論点を逸らしているだけです。しかし、記者が尋ねているのは稲田個人ではなく、大臣としての見解です。これは「心の問題」で説明することは不適切なのです。

 米軍では、軍服を着用しながらの政治活動、大統領を含む上官への批判が禁じられています。これが憲法が保証する「表現の自由」を侵害するかについては、すでに法律上の議論は決着していて、軍人は一定の制限を受けるものとされています。

 実例をあげましょう。

 2012年、米陸軍予備役のジェシー・トーセン伍長(Cpl. Jesse Thorsen)が軍服を着用している時に、アイオワ州党員集会で共和党候補者指名争い中のロン・ポール下院議員(Rep. Ron Paul)を公的に支持したことが問題視されました。(関連記事はこちら

 2012年に、海兵隊のゲーリー・スタイン軍曹(Marine Sgt. Gary Stein)は、自身のフェイスブック上で最高司令官、バラク・オバマ大統領の命令に従わないと断言し、問題とされました。(関連記事はこちら

 2010年には、ハワイの上院議員レイダ・カバニラ・アラカワ(Rep. Rida Cabanilla Arakawa)が、軍服で選挙活動をすることを禁じる国防総省の方針を破ったとされました。2008年に出された国防総省の指令は、陸軍の予備役を含む現役ではない隊員は、軍服を着た写真を、選挙用のチラシ、広告用掲示板、ウェブサイト、テレビCMで、「主要な写真の表現」としており、これに違反したからです。退役軍人にも義務が課せられている点が注目されます。これは日本では問題視されていませんから。(関連記事はこちら

 これらの規則は内心の自由まで制約するものではなく、非公式に意見を述べることや軍人が政治家に個人献金をすることなどは許されていますし、投票の自由は最大限保証されています。

 クーデターの心配がないといわれる米軍では隊員に表現の自由に制限を課しているのです。同じく民主主義国で、外務省によれば「アメリカと価値観を共有する」とする日本の自衛隊にも、同種の規則が必要なのは当然です。しかし、昨今の状況を見ると、そもそも自衛隊のトップからして、これを理解していない自衛隊ことが分かる事例があります。稲田の今回の記者会見も同じです。

 稲田はこれまで日中戦争から第2次世界大戦について侵略戦争ではなかったと何度も言い続けてきました。それが防衛大臣になった途端に、心の問題として答えなくなったのです。稲田も多くの大臣と同様、大臣席に座るためには何でも売り渡す変節の人であるわけです。

 その他の問題についても同断です。多くを述べる必要もありません。靖国参拝は岸田外務大臣から釘を刺されているので、立場が上の外務省には逆らえないのでしょう。岸田大臣は外務官僚から稲田大臣をけん制しておくよう頼まれてのでしょうね。

 なお、訪中の希望を述べたように報じた記事がありましたが、会見録を読む限りでは、記者の質問を回避したいためのリップサービス程度で、実質的には何も考えていないと思われました。

 全体的に、北朝鮮のミサイルの捜索を除くと、軍事的に重要なことは大して出ていない会見でした。

 稲田は中国と韓国との関係を悪化させ、いずれアメリカから問題視されるようになります。稲田外しの強力な圧力がかかる可能性もあります。いまは安倍の庇護の下にあると喜んでいるでしょうが、安倍はアメリカに逆らえないのです。

 思想から軍事問題に関わった人は、現実を見ない性癖故に不適切な言動を繰り返し、さらには変節します。軍事問題を客観視する立場の方が数段楽で、ものが見えてくるようになるのに、思想から入ったために袋小路へ迷い込むのです。いずれ考えを大きく変更せざるを得ないことも分かっており、それを見るのが楽しみです。

 

 以下、記者会見録。

Q:大臣は、日中戦争から第2次世界大戦にいたる戦争は、侵略戦争だと思いますか。自衛のための戦争だと思いますか。アジア解放のための戦争だと思いますか。
A:歴史認識に関する政府の見解は、総理、官房長官にお尋ねいただきたいと思います。防衛大臣として、私個人の歴史認識について、お答えする立場ではありません。

Q:防衛大臣としての見解を伺いたい。
A:防衛大臣として、お答えする立場にはないと考えております。

Q:大臣は、靖国の参拝を心の問題だとおっしゃったけれども、かつて小泉内閣時代に、総理は堂々と靖国に公式参拝するべきだとおっしゃられていました。それが、なぜ今、防衛大臣になられて、公式参拝をするとも、しないとも言えないのですか。
A:私は、靖国神社に参拝するか、しないか、これは、私は、心の問題であるというふうに感じております。そして、それぞれ一人一人の心の問題について、行くべきであるとか、行かないべきであるとか、また、行くか、行かないか、防衛大臣として、行くか、行かないかを含めて、申し上げるべきではないと考えております。

Q:かつて、総理大臣が一国のリーダーとして、堂々と公式参拝するべきだというふうにおっしゃっていましたけれども、それとは考え方が変わったということですか。
A:変わったというより、本質は心の問題であるというふうに感じております。

Q:そのときには、総理大臣は行くべきだというふうにおっしゃっていた訳ではないですか。心の問題だというふうにおっしゃっていないではないですか。
A:そのときの私の考えを、ここで申し上げるべきではないというふうに思います。また、一貫して、行政改革担当大臣、さらには政調会長、もうずっとこの問題は心の問題であって、行くとか、行かないとかは、お話しはしませんけれども、安倍内閣の一員として適切に判断をして行動してまいりたいと思っております。

Q:行政改革担当大臣としては行かれた。防衛大臣としては、なぜ行くとも行かないとも言わないのですか。
A:行政改革担当大臣の時代にも、何度も予算委員会、それから様々な記者会見でもお尋ねを受けました。その際にも私は、心の問題であり、靖国に参拝するとか、しないとか、すべきであるとか、すべきでないとか、申し上げませんということを一貫して申し上げてきたとおりです。

Q:一国の総理大臣は、公式参拝すべきだと言っているではないですか。べきだと、「べきだ論」を言っているではないですか。
A:私は、これの本質は心の問題だというふうに感じております。

Q:別件になるのですけれども、先ほど沖縄の件で、大臣は辺野古が唯一の解決策だというふうに従来の政府の見解を示されました。ただ、なかなか移設は進んでいない状況があると、この根本的な原因はどこにあるとお考えでしょうか。
A:まずは、普天間の辺野古移設が決められた経緯でありますけれども、この問題の本質は、普天間飛行場が世界一危険な飛行場と言われ、まさしく市の中心部、ど真ん中、小学校のすぐ近くにあるということだというふうに思っております。そういったこの問題の本質を、やはり住民の皆様方にしっかりと説明をしていくということが必要であろうと思っております。そして、大きな議論の末に、裁判所で国と県が和解をして、和解条項が成立したわけでありますので、その和解条項に基づいて、今、国も提訴し、さらには協議も進めて行くのだということも説明した上で、誠実に対処していく必要がある、引き続き粘り強く取組んでいく必要があるというふうに思っております。

Q:住民に説明するのが必要と仰いましたけれども、防衛大臣になられて、自ら沖縄に訪問する、行きたいというお考えはありますか。
A:この問題については、しっかりと知事や県民の皆様方にも、御説明をする必要があるというふうに思っています。今、具体的にスケジュール的なものを検討しているわけではありませんけれども、その必要があるというふうに考えております。

Q:大臣の就任が決まってから、中国やフランスのメディアなどが、右翼政治家と指摘していたと思うのですけれども、大臣のそれについての御見解と、自分をどういう政治家だと。
A:多分、弁護士時代に関わっていた裁判などを捉えられたりされているのではないかというふうに思っておりますけれども、私自身は、歴史認識の問題について、様々な評価はあるでしょうけれども、一番重要なことは客観的な事実が何かということだと思います。私自身の歴史認識に関する考え方も、一面的なものではなくて、やはり客観的事実が何かということを追求してきたつもりであります。その上で、私は、やはり先ほども申し上げましたように、東アジア太平洋地域の平和と安定、そしてそのためには、中国、韓国との協力的な関係を築いていくということは不可欠だろうというふうに思っております。いつでも、私は、交流というか、話し合いの場を自分から設けていきたい。そして、議論することによって、私に対する誤解も、多分払拭されていくのではないかというふうに思っております。

Q:それに関連して、前の大臣、中谷さんは、訪中についてかなり追求されていたと思うのですけれども、大臣、先ほどの質問で聞かせていただいたのですが、訪中に関する考え方を教えて下さい。
A:機会があれば、訪中したいというふうに思っております。

Q:海外メディアは、大臣の歴史問題に関しまして、南京事件について御見解がいろいろあると思うのですが、聞きたいということと、防衛省の正式な見解では、非戦闘員の殺害、略奪行為をやったことは否定できないと。正しいか、いろいろな説はあるのでどれかとは整理はできませんとあるのですけれども、この見解についてはどう御覧になられますか。
A:私が、弁護士時代取組んでいたのは、南京大虐殺の象徴的な事件といわれている百人切りがあったか、なかったか。私は、これはなかったと思っておりますが、そういったことを裁判として取り上げたわけであります。それ以上の歴史認識については、ここでお答えすることは差し控えたいと思います。

Q:外務省の方の見解は、これは政府としての正式な見解ではないと思うのですけれども、どうお考えですか。
A:外務省の見解を申し上げていただけますか。

Q:南京入城の時に、非戦闘員が殺害、略奪行為があったことは否定できないと思われていますと。具体的なニュースについては、諸説あるので政府はどれが正しいか言えませんと。歴史のQ&Aのホームページ、外務省に書いてあるのですけれども、これはいかがでしょうか。
A:それは、三十万人、四十万人という数が、南京大虐殺の数として指摘をされています。そういった点については、私は、やはり研究も進んでいることですので、何度も言いますけれども、歴史的事実については、私は、客観的事実が何かということが最も重要だろうというふうに思います。

Q:この見解については、虐殺があったと。略奪行為。民間人の虐殺であったと。数は分からないと。この認識だと思うのですけど。これはお認めになるのですか。
A:数はどうであったかということは、私は重要なことだというふうに思っております。それ以上に、この問題について、お答えする立場にはないというふうに思っています。

Q:例えば秦郁彦なんて、ああいった右の方だと思うのですが、日本軍の陣中日記ですとか、その作戦の照合とか御覧になって、捕虜になって捕まった人は、正式な軍事裁判にかけられずに殺されていると。これは、民間人ではないし、虐殺に当たる。虐殺というか、不法な殺害に当たるので、そういう意味では数万の殺害は認めざるを得ないと。これは、かなりコンセンサス的にできあがっているところだと思うのですけれども、戦闘詳報とか、先ほど「事実が大切」と仰いましたが、日本側の残した正式な記録に残る少なくとも数万の殺害というのは、認められるのかどうかというのをぜひお伺いしたいのですが。
A:秦先生を含め、様々な見解が出ていいます。何が客観的事実かどうか、しっかりと見極めていくことが重要で、それ以上について、私がお答えできる立場にはないと思います。

Q:外務省の見解についてはどうなのですか。ホームページに載っているのですけれども。外務省と防衛省、見解が違ったら困ると思うのですが。
A:外務省の見解が、政府の見解と反するということではない、当たり前のことですけれども。

Q:大臣もこの見解をとられると、従うということですか。
A:大臣もというか、私は、歴史的な問題については客観的事実が全てであり、数は関係ないという御意見もありますけれども、数を含めて客観的事実が何かということを、しっかりと検証していくことが重要だというふうに思っています。

Q:その点でのポイントというのは、ここ20年ぐらいは議論が進んでいなくて、歴史家でこれに挑戦する人ってあまりいないのですけれども、大臣、そこら辺は、事実、事実と仰られますが、この点についても、捕虜の殺害、この点、疑義があられるということなのでしょうか。
A:私がここで秦先生の見解について、何かコメントをする立場にはありません。

Q:弊社の本日行った世論調査について、大臣の防衛大臣起用について、「評価しない」が43%、「評価する」が約32%ということで、「評価しない」が上回ったのですけれども、その見解をどのように受け止めるかということと、この結果を受けて、どのように取組まれるか、お考えをお聞かせください。
A:わが国の防衛という大変重要な責務について、しっかりと取組んでいくということでございます。

Q:別件で大変恐縮なのですけれども、北朝鮮の弾道ミサイル、発射されたものについて、回収作業というのは、現在、どのような感じで進んでらっしゃるのか。一部報道で、打ち切ったということも報じられているのですけれども、大臣としては、どのように認識されていますか。
A:昨日から今朝にかけて、弾道ミサイル、あるいは、その一部が落下したと推定される海域において、自衛隊のP-3Cや護衛艦、海上保安庁の航空機や巡視船による捜索を実施し、発見した漂流物を回収しているところであります。他方、現在までに回収した漂流物の中に、弾道ミサイル、あるいは、その一部と判断できるようなものは確認されておりません。引き続き、自衛隊の護衛艦や艦載ヘリによる捜索を実施し、仮に、弾道ミサイル、あるいは、その一部と判断できるような物体を発見できれば、それを回収し、分析することを考えております。

Q:防衛費についてお聞かせください。一時的な例外を除いて、日本の防衛費はGDPの1%以下に抑えられていたという整理だったと思うのですけれども、事実として、1%に抑えられてきたと、それが意識されていたという経緯もあるかと思うのですけれども、そういった防衛費の扱い方というのは、適正かどうかというのを、大臣、どのようにお考えでしょうか。
A:予算の中で防衛費がどうあるべきか、日本の安全を守るためにどれぐらいの防衛予算が必要か、非常に重要な問題だと思います。そういった点を踏まえて、中期防も計画を立てているわけでありますので、その中で着実に、必要な防衛費ということは、つけていくということだというふうに思います。

Q:必要があれば、1%を超えることも、躊躇するべきではないというふうに、大臣、お考えでしょうか。
A:しっかりと、いろいろなことを勘案して計画は立てております。そして、その結果が防衛予算、それが必要なものを積み上げたものであるというふうに、私は認識をいたしております。

Q:慰安婦問題に関して聞きたいのですけれども、2007年に、事実委員会が、報告をアメリカの新聞に出したのですけれど、そのときは、大臣は賛同者として名前をつけたのですけれども、慰安婦は、強制性はなかったとコメントもあったので、今の考え方は変わっていますか。
A:慰安婦制度に関しては、私は女性の人権と尊厳を傷つけるものであるというふうに認識をいたしております。今、そのワシントンポストの意見公告についてでありますが、その公告は、強制連行して、若い女性を20万人強制連行して、性奴隷にして虐殺をしたというような、そういった米国の簡易決議に関連してなされたものだというふうに思っております。いずれにいたしましても、8月14日、総理談話で述べられているように、戦場の影に深く名誉と尊厳を傷つけられた女性達がいたことを忘れてはならず、20世紀において、戦時下、多くの女性達の尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を胸に刻みつけて、21世紀は女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードしていくという、その決意であります。

Q:強制性はあったということですか。
A:そういうことではありません。そういうことを言っているのではありません。

Q:既に政調会長も経験されて、また再入閣ということで、将来の首相候補としての存在感が増していると思うわけですけれども、それについての受け止めをお願いします。
A:政治家であれば、誰しも総理を目指していると思いますが、ただ、総理大臣はなろうと思ってなれるものでもなく、実力も、タイミングも、人の輪も、そして運も、大きな様々な要素があって、初めて実現するものだというふうに思っておりますので、今、与えられたこの重要な任務をしっかりとこなしていきたいというふうに思っております。

Q:自民党の二階幹事長が、総裁任期延長について、年内にも考え方を出すと前向きな発言をされています。大臣御自身の総裁の任期延長の是非を含めて、お考えを聞かせて下さい。
A:やはり、今、安定した安倍政権、3年半続いて、その安定した政権が続くということは、私は日本の存在感を世界に示すものでもありますし、国民の財産であるというふうに思っております。やはり、どなたが総理にふさわしいかということを中心に考えるべきで、そして、総裁任期というのは、自民党の内規に過ぎませんから、それについては、私は二階総務会長と同じように年内に検討されるというのであれば、前向きに考えています。

Q:それは延長を、応じるべきだというお考えなのでしょうか。
A:そういうことも視野に入れて議論すべきだと思います。

Q:戦死ということについてお伺いしたいのですけれども、国民国家においては日本に限らず、戦死ということに様々な意味が付与されてきたと思います。現在、自衛隊員を預かる防衛大臣として、戦死、戦争で亡くなるということに対して、どういうふうなお考えを持つのか、戦死という言葉が持つ意味についての御認識をお聞かせ下さい。
A:憲法上、日本は戦争を放棄いたしております。ただ、憲法ができた時には9条があるので、攻めてこられたとしても、白旗を揚げて自衛権も行使しないというのが解釈だったわけですけれども、1954年に解釈を変えて、そして、日本も主権国家であるので、自衛隊は憲法違反ではない、合憲である。そして、自衛権の行使も、必要最小限度の行使を可能であるということを解釈上決め、また、それは最高裁でもそのような解釈にあるわけであります。自衛権の行使の過程において、犠牲者が出る事も、考えておかなきゃいけないことだろうとは思います。非常に、重たい問題だと思います。

Q:アメリカのトランプ氏が在日米軍駐留費を全額負担すべきと発言していますが、この点について受け止めと、仮にトランプ氏が当選した際に、日米関係にどういうあるかというのをお願いします。
A:アメリカ大統領候補者の一つ一つの発言について、コメントすることは差し控えたいと思いますが、しかし、日米安保体制、そして、米軍が駐留をしていることは、日本の利益のみならず、東アジア太平洋地域の平和と安定、これは、ひいてはアメリカの利益にも繋がることだというふうに思っております。

Q:今日、午前の菅官房長官の会見で、基地問題と振興策がリンクしている部分があるのではないかという懸念が出ました。大臣御自身は、沖縄の基地問題、現在の辺野古移設とか止まっていますが、これが進まない段階では、振興策は減らすべきだとお考えですか。
A:振興策を減らすとはどういうことでしょうか。

Q:沖縄の振興予算を減額すべきだとお考えでしょうか。
A:私は、沖縄の基地移転、そしてその負担軽減、これは、政府を上げて安倍政権が出来ることは全て行い、また、目に見える形で実施するという基本方針の基で、在日米軍の再編を初めとした施策を着実に進めて行きたいというふうに思っております。その上で、振興策について、防衛省として、お答えする立場にはないというふうに思います。また、基地問題と沖縄振興をリンクさせることについては、本日午前の官房長官会見において、菅長官が述べられたとおりだと承知いたしております。

Q:先ほどお答えいただけなかったので、もう一回聞きますけれども、軍事的組織の自衛隊のトップとしての防衛大臣に伺いますが、日中戦争から第二次世界大戦にいたる戦争は侵略戦争ですか、自衛のための戦争ですか、アジア解放のための戦争ですか、見解を教えてください。
A:政府の見解は、総理、官房長官に聞いていただきたいと思います。私は、昨年総理が出された談話、これが政府の見解だと認識しております。

Q:大臣自身の見解もそのとおりですか。異論はないのですか。
A:昨年の総理が出された談話に異論はありません。

Q:侵略戦争ですか。
A:侵略か侵略でないかというのは、評価の問題であって、それは一概に言えないし、70年談話でも、そのことについて言及をしているというふうには認識していません。

Q:大臣は侵略戦争だというふうに思いますか、思いませんか。
A:私の個人的な見解をここで述べるべきではないと思います。

Q:防衛大臣として極めて重要な問いかけだと思うので答えてください。答えられないのであれば、その理由を言って下さい。
A:防衛大臣として、その問題についてここで答える必要はないのではないでしょうか。

Q:軍事的組織のトップですよ。自衛隊のトップですよ。その人が過去の戦争について、直近の戦争について、それは侵略だったのか、侵略じゃないか答える必要はあるのではないですか。何故、答えられないのですか。
A:何度も言いますけども、歴史認識において、最も重要な事は、私は、客観的事実が何かということだと思います。

Q:侵略だと思うか、思わないかということを聞いているわけです。
A:侵略か侵略でないかは事実ではなく、それは評価の問題でそれぞれの方々が、それぞれの認識を持たれるでしょうし、私は歴史認識において最も重要なことは客観的事実であって、そして、この場で私の個人的な見解を述べる立場にはありません。

Q:防衛大臣としての見解ですよ。
A:防衛大臣として、今の御質問について、答える立場にはありません。

Q:では、関連ですけれども、日中戦争と太平洋戦争は若干違うと思うのですが、日中戦争の前、日本は、あの時は南満州鉄道あたりしか駐留する権利はなかったわけですね、軍隊を。そこからはみ出して、傀儡国家を打ち立てて、満州国を作ったと。これ侵略じゃないのですか。普通の常識から言って、いろいろ議論はあるのでしょうけれど、太平洋戦争は議論があるとしても、満州国を作るときの経緯というのは、どういう法律に基づいたのか、しかも、あのとき陸軍は、天皇の統帥権を最後無視して、暴走して、拡大して、後から認めた件はありますけれども、それが日本にとって最大の軍事的な教訓なわけですよね。日中戦争、あるいは、その満州国の作り方について、評価できないというのは、国のリーダーとして、いかがなものかと思いますけれど、この2点いかがですか。
A:私は、安倍内閣の一員として、政府の大臣として、この場におります。私の個人的な見解や、また、この場は、歴史論争をする場ではないと思います。政府の一員として、私は、政府の見解、これは昨年の70年談話において総理が示されたとおりだというふうに認識をいたしております。

Q:別に歴史認識をしたいわけではなくて、これはリアルな、過去をどう捉えて、軍をどうコントロールするか、あるいは、今の近隣諸国とどう仲良くやっていくか、今のリアルの問題と繋がっているからお聞きしているので、別に学者的な論争をしたいわけではないのですけど。日中戦争の、特に満州国の作るときの過程というのは、これは侵略じゃないと、歴史学者は、普通、侵略と言うと思うのですけれども、国際法の専門家の議論はあると思うのですけれども、国民感情からして、歴史学者は、普通、侵略というのは、一般の常識じゃないかと思うのですけれども、そういった一般の、例えば世界中の人々に受け止め方ですね。これ、侵略じゃないと言い切って、どこの欧米の方でもリーダーとして議論されたらいいと思うのですけれども、まともに議論できるとお思いなのでしょうか。
A:私は、歴史認識において、最も重要なのは、客観的事実が何かということだと思います。また、昨年の70年談話でも示されたように、我が国は、過去の歩みをしっかり反省をして、戦後、しっかりと憲法の下で、法律を守り、法の支配の下で、どこの国を侵略することも、また、戦争することもなく、70年の平和な歩みを続けてきたこの歩みを続けていくということだと思っております。

Q:これから、例えば、中国、韓国のリーダーとか、欧米のリーダーと会うときに、あの戦争、太平洋戦争はいろいろ議論があるかもしれませんが、日中戦争に関しても、侵略かどうか、私、言えませんというふうにおっしゃって議論されるわけですね。
A:そういう単純な質問はないと思うのですね。

Q:でも、報道関係、みんなに見られているからですね。欧米のメディアは、そこに歴史認識を集中しているわけですよ。単純と言われようがそういう具合に、この人こういう歴史認識を持っているのではないかとみんな懸念しているわけですよ。別に、単純に議論を私がふっかけるのではなくて、割と世界中のメディアがそういう懸念を持って、書いていると。それに対して答える影響というのは、我々国民なのですから、説明責任はあると思うのですが、いかがですか。
A:私は、昨年、総理が出された70年談話、この認識と一致いたしております。

 


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