マシャルの脱出にスーダンが関与との報道

2016.8.22


 sudantribune.comによれば、南スーダンの反対勢力当局者は金曜日、スーダン政府がレイク・マシャル(Riek Machar)を南スーダンの国外へ運ぶ任務で積極的な役割を果たしたという報道を否定しました。

 ケニヤの「The Standard紙」のウェブサイトは木曜日、スーダン政府が元第一副大統領を隠れ家からケニヤへ避難させる航空機を送ったと報じました。

 しかし、匿名を希望したSPLM-IO当局者は、報じられた記事は事実に基づいていないと言いました。

 「スーダン政府は救助作戦に関与していませんでした。報じられたように、スーダンの航空機は使われませんでした」と彼は言いました。

 反対勢力当局者は。誰が救助作戦を行ったかや、マシャルを安全な場所に輸送するためにどの航空機が使われたについてコメントを避けました。

 報道記事は、マシャルが広大な中央アフリカ国家の外へ避難するために、コンゴ軍と交渉したと国連平和維持軍とコンゴ共和国で接触を確立したとしていました。

 氏名不詳の当局者の言を引用したケニアの新聞は、大型の輸送機、多分アントノフがマシャルを氏名不詳の国連当局者から受け取ったスーダン軍当局者と遊撃部隊員と共に、イシロ(Isiro・kmzファイルはこちら)で田舎の滑走路に着陸したとしました。

 いくつかの報道はスーダン大統領府の高官が機上にいたことを示します。
 
 マシャルは病気で、脚に怪我を負い、医療支援を求めているともされます。

 しかし、SPLM-IO当局者は申し立ては捏造されたと言いました。

 「彼は病気でも負傷してもおらず、安全で健康です」と当局者は言いました。

 「彼が病気で負傷したとの申し立てはまったくの嘘です」と彼は言い、「噂は政治的プロパガンダ目的で、敵が作り出しています」。

 その他の報道は、マシャルの救出は単に国連の活動であり、スーダンは無関係だったと言いました。

 報道によれば、マシャルの救出任務は潘基文国連事務総長(Ban Ki Moon)により個人的に承認されました。

 マシャルが場所を変えたのがコンゴのどこかはまだ正確に分かっていませんが、アジスアベバ(Addis Ababa)の反対勢力当局者は、彼をIGADが依然として彼を南スーダンの正当な第一副大統領と認めるエチオピアへ移動させることを望んでいると言いました。


 記事は一部を紹介しました。

 この記事は多分、南スーダンとの元の紛争当事者であるスーダンをからめることで、停戦違反の疑いを巻き起こして、マシャルの立場を悪くする目的で流布された噂をそのまま報じたものと考えられます。

 イシロには、北部郊外に2,600m級の舗装された滑走路がありますから、アントノフが着陸することは可能ですが、この飛行機はマシャルを含めて数十名の一行を運ぶには大きすぎます。着陸したということは、マシャルらを乗せてどこかで離陸したはずですが、それはどこなのかという問題があります。コンゴ国境へ向けて逃げたのに、国境沿いでロシア製大型輸送機に乗り込んで、陸路でも行ける距離なのに、イシロまで飛んだことになります。

 スーダンに一度出国してから、アントノフでコンゴに入ったとすれば、移動距離はずっと増え、さらなる長距離を徒歩で移動したことになります。

 南スーダンの紛争は、かつてはスーダンとの間で争われました。すでに停戦の手続きが完了して久しいのに、いまさら、スーダン政府が南スーダンの反対勢力を支援すれば、停戦決議に違反する恐れがあります。いま、国連は新たに発生しているキール派とマシャル派の紛争に集中しています。そこにスーダンをからめれば、前の紛争へ話を逆戻りさせ、現在進行中の紛争から目を逸らせさせることができます。多分、そんな理由で噂が流されているのでしょう。

 国連がマシャルと接触しているのなら、スーダンが関与した可能性は低いということです。スーダンの関与は国連がいい顔をしないことですから。詳細までは何が事実かは断言できないものの、国連とコンゴが共同でマシャルを保護したと考えて差し支えないでしょう。

 マシャルが健康だという主張は、同じ反対勢力内でも矛盾する証言が出ていて、病気だと主張する人もいます。この程度の情報の混乱はあり得ることです。(関連記事はこちら

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.