オスプレイ墜落は機種由来の欠点が原因か?

2016.12.20


 沖縄で起きた米海兵隊のオスプレイの墜落事故は、「不時着」か「墜落」か、事故原因がオスプレイの欠陥かどうかについて、様々な意見が出ました。ここでこれまでに入った情報から事件を考えてみます。

 military.comによれば、海兵隊司令官ジェリー・P・マルティネス中将(Lt. Gen. Jerry P. Martinez)は、事件は調査中ながらも、ローターブレードが補給ラインに接触したのが原因と述べました。報告書もこの線で書かれることになるでしょう。(記事はこちら

 プロペラやローターを用いる航空機が空中補給中に補給機と接触するのは潜在的に起こり得る問題です。だから、オスプレイ固有の問題ではないというのが、海兵隊とその支持者たちの主張です。

 しかし、事件の詳細はまだ明白ではありません。最も情報を持つ海兵隊は、常にオスプレイの事故を過小評価してきました。彼らの発表を鵜呑みにすべきではありません。

 昨年、ハワイで起きた墜落事故は、着陸を試みたオスプレイが砂塵を巻き上げ、それをエンジンが吸い込んだために起こりました。事件前まで、海兵隊はこういう環境にオスプレイをさらすのは、一飛行中に60秒までとしていましたが、事故後に35秒までに変更しました(記事はこちら)。この事故でパイロットは砂塵の中に45秒しかいなかったのに墜落しました。教範を守ったのに墜落したのです。墜落すると、教範に問題があってもパイロットの責任になるため、オスプレイのパイロットからは不満が出ています。海兵隊は慌てて教範を書き換えて知らん顔をします。こういう問題が、今回の事故でも起きていないかを検証するのは当然のことです。

 これまでに手に入った情報を元に、慎重に事故を分析してみます。

 NHKの報道によれば、事故が起きたのは13日21時30分頃です。琉球新報がまだ暗い内に撮影した映像では機体は海面から露出しています。

 ところが、NHKは翌朝の7時に撮影した映像では機体は水没しています。現場には潮の満ち引きがあったわけです。

 機体の状況について、海兵隊のローレンス・ニコルソン中将は、航空区が降りた時に機体がひどく損傷したこと。その後、波が機体を破壊したと述べています。(映像はこちら

 これについて「あべこべな世界で逆立ちすると何が見える?」に掲載された書き起こしから見てみます。

Nicholson: So about the “Osprey in the water,” as he came in trying to get closer to the shore… is it a 'crash'? Is it a ‘hard-landing'? Is it a 'controlled' … I think we're missing on words. The important point is that the pilot was trying to get to the shore. He saw the shore, he tried to get to the shore, and he 'brought the plane down' on shallow water, which was not very deep water, as close to the shore as possible, without going over the buildings. So I would say it was a 'controlled' landing,"but surely, there was absolute damage to the aircraft as he landed the airplane."

(ニコルソン:彼が航空機を着陸させた時に航空機にかなりの損傷がありました)

Nicholson: So I know the airplane today in the water was pounded everywhere by the waves. So… any more about that?

Maj.Gen. Sanborn: Yes, Sir.The wave action alone was causing the aircraft to break apart.Hence, that's why we put security around it while we wanted to quickly have salvage & rescue going on.
(サンボーン少将:波の活動だけで航空機が分離しました。)

Nicholson: So the [damage of the] airplane today is based on the waves. It certainly had it breaking apart into little bits. It was a hard-landing. It was not a good landing for the airplane.But it was enough that all five people can survive. And I think that's important.

(ニコルソン:だから、今日の航空機(の損傷)は波によるものです。)

 波が機体を破壊したのは嘘ではないものの、大半は墜落時に壊れたと考えるべきです。琉球新報が撮影した映像とNHKが午前7時に撮影した映像では、機体の状況は大差がありません。琉球新報の映像では、機首部分が破損していることも確認できます。これは海面にぶつかったというよりは海底に接触した時についたようです。かなりの浅瀬に着水したと考えられます。

 13日から14日にかけての干潮は次のとおりです。

 
時刻
潮位
満潮

13日

18:17
211cm
干潮
13日
0:58
-21cm
満潮
14日
7:29
196cm
13日
13日
13日

14日

14日
14日
14日
14日
14日
14日
14日
21
22
23
0
1
2
3
4
5
6
7
潮位
131
77
27
-9
-21
-7
29
79
130
171
193

 潮位は潮位計で測ったもので、現場の水位を必ずしも反映しません。しかし、事故後、潮はどんどん引いていきました。琉球新報の映像が撮影された時期が分かりませんが、事故から数時間内というところでしょう。その状態で現場は岩場が露出していました。これで、波よって機体が破壊されたとは考えられません。オスプレイの機首部分が損傷していることから、着水したときに海底の岩場に機種をぶつけているのです。水深は数メートル以内だったと推定されます。

 機体は左翼が根元からもぎ取られていて、右翼は胴体に着いたままでした。ここから、オスプレイは左翼が下がった状態で着水したと推定できます。また、給油機の給油ドローグに接触したのは左翼のローターだった可能性が高くなります。ローターの推進力が減ると翼の揚力も減り、左翼が下がるのが自然です。

 右翼のローターも著しく破損していることから、着水時に海底にローターを接触した可能性が高く、水深が非常に浅かったことを推測させます。NHKの午前7時の映像にみる水位は事故時よりも高く、これよりも浅い状態の海面に降りたはずです。

 また、機体がほとんど一ヶ所にあり、波によって運ばれた一部の部品が離れた場所にあることから、着水時に機体がバラバラになり、着水後はすぐに止まったことも予想されます。

 これほどひどく壊れたのは、墜落の衝撃が大きいか、オスプレイの機体が弱いことなどが考えられます。普通、水上への着水で、ここまで機体は壊れません。人的被害が少なかったことから、機体の耐久性が低い可能性が高いと思われます。

 以上が、墜落が起きた状況の推測です。次は空中給油で何が起きたかを考えます。

 空中給油時のミスは色々起きていますが、墜落につながるような事故はあまり聞いたことがありません。しかし、プロペラやローターを持つ航空機は潜在的に給油中に接触を起こす可能性があります。CH-53がローターで自機の給油プローブを切断した事故の映像があります。

 設計上、このような接触が起きるとは考えにくいかも知れませんが、こういう事故が現実に起きるのです。

 次の映像はエラーはないものの、タイトルが「プロップローターのブレードが危険なまでにホースに近い MV-22の空中給油はエラーの余地がない(Proprotor Blades Dangerously Close To Hose - MV-22 Air Refueling Leaves No Room For Error)」であり、もともと、危険は認識されてたものだと分かります。 投稿者は軍事専門チャンネル「AiirSource」です。

 オスプレイの夜間空中給油の映像もあります。夜間の作業は日中に比べて難易度がずっと高まります。パイロットは暗視ゴーグルの遠近感のない映像を見ながら操縦するからです。それがパイロットに目測を誤らせた可能性は否定できません。

 事故当夜、現場は悪天候ではありませんでした。そんな中で空中給油中に事故が起きたこと、事故現場から民家まで、さほどの距離がなかったことから、事故は慎重に分析されるべきです。

 

 まずは海兵隊が出す報告書をよく読む必要があります。その時に、海兵のオスプレイに対する考え方を考慮に入れる必要があります。先に述べたように、海兵隊にとって、オスプレイは他の軍隊にはない装備であることから、批判を避けたいものなのです。 そこに着目しながら、事故を評価する必要があります。

 現段階では断定できないものの、オスプレイの構造による宮中給油の難しさが、今回の事故を起こさせた可能性を、私は想定します。

 





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