米国内と日本での基地問題への対応が違いすぎる

2015.9.16


 military.comによれば、月曜日、米海軍は環境保護団体と、ハワイ州とカルフォルニア州で、クジラ、イルカ、その他の海洋哺乳類を傷つけるソナーやその他の訓練を制限することに合意しました。

 ホノルルで連邦判事が署名した合意の目玉は、ハワイ諸島と南カルフォルニアの特定の地域で中周波のアクティブソナーと爆発物に対する制限や禁止を含むと、環境団体「Earthjustice」の弁護士デイビッド・ヘンキン(David Henkin)は言いました。

 長距離のソナー音は海洋哺乳類の摂食とコミュニケーションを中断させ、近距離では難聴や死を起こしかねないとヘンキンは言いました。一部のケースでは、演習は殺害しかねません。2011年、イルカ4匹がサンディエゴで爆破演習に接近しすぎて死にました。

 海軍はクジラとイルカ155匹をハワイと南カルフォルニアで不注意によって殺したと見積もりました。東海岸では少なくとも11,000匹を、ハワイと南カルフォルニアでは2,000匹を重傷にしたと見積もりました。

 米太平洋艦隊広報官、マット・ナイト海軍少佐(Lt. Cmdr. Matt Knight)は、合意は試験と訓練を維持すると言いました。「我々の環境への責任を認識し、海軍は国家安全保障を支援する任務を準備、実行する時、よき環境の世話役であり、そうあり続けるでしょう」。

 合意の下で、海軍は南カルフォルニアでサンタカタリーナ島とサン・ニコラス島の間でオオギハクジラの生息域ではソナーを使用しません。環境グループによると、サンディエゴの近くではシロナガスクジラの摂食区域でもソナーを使用できません。ハワイでは、取り決めがハワイ島の東部とモロカイ島、マウイ島の北部でソナーと爆破演習を禁止します。保護グループは取り決めがハワイのモンクアザラシ、絶滅が危ぶまれるオキゴンドウを含めた少数のハクジラを保護するといいました。海軍はマウイ島とハワイ島の間の水道とハワイ島の西側で一定数の大規模な演習も行えません。「若干の避難所を設けることで、負傷と死亡の数を減らすと見込んでいます」とヘンキンは言いました。

 合意は負傷や死亡があれば、海軍の計画を承認したアメリカ海洋漁業局(the National Marine Fisheries Service)が素早くチェックするとも言います。

 military.comによれば、沖縄県知事は月曜日に、米軍の空軍基地を移転するための作業の承認を取り消す準備をしていると言いました。

 ワシントンでは国務省広報官、ジョン・カービー(John Kirby)が、アメリカは両政府が基地移転を約束し、米日安保同盟の健全性のために重要とみていると確信するままであると言いました。


 記事は一部を紹介しました。最初の記事は前半を、次の記事は関係する部分のみを紹介しました。

 ソナーによる海洋動物への被害は当サイトでも繰り返し紹介してきました(過去の記事はこちら )。

 日本ではほとんど報じられないのですが、米軍の基地問題は米国内と日本国内では米軍や米政府の態度が明らかに違います。国会でもこの違いについて、もっと野党が取り上げるべきと思っています。

 米国内の海では、海洋哺乳類について、環境保護団体の要請を米軍や米政府が積極的に受け入れています。沖縄の海にはジュゴンがいます。ジュゴンは水産庁、日本哺乳類学会で絶滅危惧種に指定され、国際自然保護連合 (IUCN)でも総会で保護が採択されています。 その生息域を破壊しかねない辺野古沖での基地建設について、米軍も米政府も何の頓着もしていません。

 2012年、米国内のキャノン空軍基地(kmzファイルはこちら)に近い町から、オスプレイの安全性への疑問の声があがり、米空軍が基地西側での夜間低空飛行訓練を半年程度延期すると決めたことがあります(関連記事はこちら)。 下の写真を見れば分かるように、滑走路から町の一番近いところまでは3.8kmもあります。訓練は農地しかない基地の西側でやるわけですから、十分に安全な距離が保たれているように思われます。事故があっても物損だけで済みます。基地の周りがすべて住宅地の普天間とは条件が違いすぎます。

図は右クリックで拡大できます。

 共和党の大統領候補の一人、ドナルド・トランプは日米安保条約は不平等条約で日本だけが得をしていると言います。それなら米国内と同じように対処してもらわなければ話が合いません。

 米軍の行動が国内と国外で大きく異なることは歴史的な事実です。

 太平洋戦争が終結した時、日本政府は慌てて日本国内に米軍用の慰安所を造りました。日本政府は慰安所を造って日本軍兵士が地元女性へ乱暴することを防いできたと考えており、米軍が来るのなら米兵の犯罪を防ぐために慰安所が必要だと考えたのです。米軍はキリスト教の影響が強いために、淫行を認めません。軍法で配偶者以外とのセックスを禁じているほどです。ところが、この時は米軍は慰安所を使うことを兵士に許しました。最終的に米国内で批判が高まって、慰安所は閉鎖されることになりました。

 2003年にイラク侵攻した後、米軍は基地の近くに掘った巨大な穴に基地から出たあらゆる廃棄物を棄て、石油をかけて燃やしました。その結果、煤煙によって焼却を担当した者や基地内にいた者へ健康被害が起こりました。なにより、分別せずに土中に何でも埋めるような処理方法は米国内では違法のはずです。

 アメリカ人は高い政治意識を持ち、国内で起こる問題に目を光らせています。監視団体は多く、それぞれが有益な提言をしています。そういう国が国外に出ると、「旅の恥はかきすて」のごとく、途端にだらしなくなるのです。我々は米国内にいるアメリカ人と国外のアメリカ人は別人だと考えなければならないのです。

 米軍には海洋動物も平等に対処して欲しい。人間に対しても同様です。アメリカ人が考えるような平等な方法で対処することをアメリカに求めていく必要があります。

 現在のような、アメリカに従うだけの政治家と官僚の世界から抜け出す必要があります。官僚は選べませんが、政治家は選ぶことができます。理想的な政治家を増やすことで、官僚を指導できる体制を作ることは可能です。

 はっきり言えば、自民党はすでに歴史的な役割を負えたのです。もともと、自民党は共産主義に対抗するために保守的な党が合体して結成されましたが、いまや共産主義の脅威はありません。ソ連は崩壊して自由経済のロシアへと変化し、中国も共産主義は形だけで、実態は自由経済そのものです。自民党がなくても、日本が共産化することはあり得ないのです。それどころか、当初の志を忘れ、アメリカに従う戦後体制の中でうま味を吸い取ることだけ上手になった自民党が、日本を守る保守政党と信じることはできなくなりました。「傀儡政党」と呼んでも差し支えがないほどです。

 本当の意味でアメリカと平等の関係を築く社会を作らなければなりません。

 


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