ロシアは撃墜機の飛行計画をアメリカに通告せず

2015.11.30


 alarabiya.netによれば、ウラジーミル・プーチン大統領(President Vladimir Putin)の言と違い、ロシアはトルコ軍機がロシア軍機を撃墜する前に米軍に飛行計画を知らせていなかったと、匿名の米当局者2人は言いました。

 プーチン大統領は事件の余波の中でアメリカに幾分の過失があると言い、アメリカがロシアの作戦計画を事前にトルコに与えたかもしれないとすらほのめかしました。木曜日にモスクワで記者に対して、プーチンはロシアの航空機がいつどこで活動するかについて「我々はアメリカのパートナーに情報を与えました」と言いました。それからトルコ空軍機がロシア軍機を撃墜したことは明らかだとプーチンは言いました。「疑問が湧きます。なぜ我々はアメリカ人に情報を伝えたのかです」。

 米国防総省はプーチンの意見に直ちに答えませんでしたが、過去にロシアが11月17日の巡航ミサイル発射のようないくつかの作戦の前に米主導の同盟国に基本的な通知を与えたと認めました。シリア国内で平行して爆撃作戦を行っているため、こうした連絡は冷戦の元敵同士での偶発的な衝突を避けることを狙っています。

 しかし、匿名を希望した米当局者2人はロシアはプーチンが公言した作戦の概要を伝えなかったと言いました。事件前後の米ロ間の連絡の範囲は明確ではありません。

 BBCによれば、撃墜された爆撃機の搭乗員オレグ・ペシュコフ中佐(Lt Col Oleg Peshkov)の棺は首都からトルコ南部へ空輸されました。

 遺体がいつロシアへ送られるかは不明です。パラシュートでシリア政府支配地域へ脱出しようとした時、トルクメン人の反政府派がペシュコフ中佐と副操縦士に発砲しました。反政府派は彼は地面に到達する前に死んだといいました。

 日曜日早く、ペシュコフ中佐の遺体はトルコ当局がシリア国境のハタイ空港(Hatay)で受け取りました。トルコの儀仗隊が棺を首都アンカラへ飛ぶ空軍機へ運びました。アフメト・ダウトオール首相(Prime Minister Ahmet Davutoglu)はパイロットの遺体はキリスト教正教徒の伝統に従って扱われたと付け加えました。ロシア通信社は遺体がハタイからアンカラへロシアの大使館付き武官に付き添われ、アンカラでアンドレイ・カルロフ大使(Ambassador Andrei Karlov)に出迎えられると言いました。


 記事は一部を紹介しました。

 10月にロシア軍機とシリア軍機がトルコ空域を侵犯し、トルコから講義を受けていました(過去の記事はこちら)。この記事を読んだときはまずいと思いました。ロシアはこういう場合、領空侵犯をあまり気にしません。このまま同じことを繰り返すかもしれないと思いました。そして、それは現実化し、トルコ軍機がロシア軍機を撃墜したのです過去の記事はこちら)。その少し前、米国防当局の報道官が米露間の連絡は最小限度でしかないと発言していました(過去の記事はこちら)。

 10月の領空侵犯の後、ロシアは再び起きないように措置を取ると言っており、プーチン大統領もその書類を見たはずで、承認もしたでしょうから、その線で記者に話したものと思われますが、実態とはずれていたということでしょう。どちらにしても、飛行計画はシリア領内を飛ぶように書かれるはずで、パイロットはあまりそれを気にせずに飛び回ったことでしょう。いずれにしても事件は起きたかもしれません。しかし、互いに飛行計画を提示し、その通りに飛べば、この種の事故が起きないことは間違いがありません。ここに解決策がありそうです。互いに相手を非難するのではなく、さならる事件を防ぐための手段を講じるのです。それは日本のような第三国から提案するのがよいでしょうが、安倍政権にそんなアイデアはあるのでしょうか?。

 ペシュコフ中佐の遺体について、トルコが最大限の注意を払っている点に注意してください。敵国であっても、このように礼儀を払い、丁寧に運びます。イスラム教の儀式ではロシアが納得しないので、ロシアにもあるキリスト教の儀礼を用いています。このことで分かるように、軍事問題は結構宗教がからんできます。科学技術だけでないことに注意してください。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.