トルコ軍機が領空侵犯のロシア軍機を撃墜

2015.11.25


 トルコ軍機がトルコとシリアの国境付近で領空を侵犯したロシア軍機を撃墜しました。それに関連した記事を2つ紹介します。

 military.comによれば、火曜日にトルコ軍のF-16戦闘機がロシア軍のSu-24攻撃機を撃墜したことは、シリア上空でさらなる空中戦が起きる危険をもたらし、イスラム国と戦うためにアメリカとロシアの大連立を作るフランスの希望を打ち砕きました。

 ウラジミール・プーチン大統領(President Vladimir Putin)は直ちにトルコ東部・シリア国境での事件は裏切り行為で、深刻な結果をもたらすと警告しました。

 ホワイトハウスでのフランソワ・オランド大統領(President Francois Hollande)との合同記者会見で、バラク・オバマ大統領(President Barack Obama)は「私の最優先事項はこれがロシアとNATO同盟国トルコを含むアメリカ主導の同盟との間でさらなる対立へと拡大しないことを確実にすることです」と言いました。しかし、彼は「トルコは他の国と同じく、その領域と空域を守る権利があります」とも言いました。木曜日にプーチン大統領と会談するためにモスクワへ行くオランド大統領は、プーチンがアサド大統領の支持を止めて、イスラム国と戦うことに集中するならロシアが同盟に加わることを歓迎すると、オバマ大統領の言葉を繰り返しました。

 米当局者は撃墜されたジェット機は、地中海沿岸に沿うシリア国境に接するトルコのハタイ州(Hatay)上空でトルコ軍のF-16戦闘機2機に迎撃されたSu-24「スホイ」2機の1機だったと言いました。トルコ当局はSu-24はトルコ空域を侵害したと言いました。F-16は少なくとも10回の退去警告が無視された後攻撃しました。ロシア当局はSu-24はシリア上空で警告なしに攻撃されたと頑なに主張しました。トルコの「Haberturk TV」が報じた映像は、Su-24が煙を出して、森林地帯へ落ちていくのを示しました。米当局はトルコ軍機が少なくとも10回警告するのを確認しました。「我々は無線通信で言われたことのすべてを聞くことができました」そして「ロシア軍機は応じませんでした」とスティーブン・ウォーレン陸軍大佐(Army Col. Steve Warren)は言いました。彼はロシア軍機から緊急信号は送信されなかったとも言いました。Su-24の乗員2人の生死は不明です。書記の報告では、両乗員は安全に脱出したものの、パラシュートが地面に近づいた時にトルクメン人によって射殺されました。他の報告は乗員1人が生き残ったと言いました。シリアの活動家グループも、ロシア人たちはロシア軍の救助ヘリコプターが乗員2人に到達しようとする活動の中でさらに犠牲を被ったかもしれないと報告しました。

 アサド大統領に反対し、アメリカから支援を受ける自由シリア軍は、反政府軍が米製のTOW対戦車誘導ミサイルでロシア軍ヘリコプターを地上から破壊する映像を公表しました。ビデオのナレーションはミサイルがヘリコプターを撃墜した時に「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びました。ロシア海兵隊員が攻撃で死んだかもしれないと活動家は言いました。

 ロシア軍参謀セルゲイ・ロズコイ中将(Lt. Gen. Sergey Rudskoy)は、ロシア海兵隊員1人がMi-8ヘリコプター2機がSu-24乗員を捜索救出任務中に殺されたと言いました。ヘリコプター1機は小火器で損害を受け、海兵隊員が死亡した緊急着陸を行ったと言いました。「ヘリコプターは違法な、武装したグループが支配する地域からの迫撃砲によって破壊されました」とロズコイ中将は言いました。

 米国防総省報道官ピーター・クック(Peter Cook)は、9月下旬にロシア軍の航空機、戦車、隊員がアサド大統領を支援するためにシリア北部に到来してから、ロシア軍機が先に2回トルコ領空を侵犯したと言いました。プーチン大統領はロシアの航空機がトルコ領域を侵害したとの訴えを否定しました。「1機はトルコのF-16からの空対空ミサイルでシリア領空で撃墜されました」とロシアの「RT」は報じました。「航空機はトルコ国境から4km離れたシリア領域に墜落しました」とプーチンは言いました。「攻撃された時、航空機は1kmトルコ国境から離れて飛んでいました。なんにせよ、我々のパイロットも、ジェット機も、トルコにいかなる脅威も与えていませんでした。それは明らかです。彼らはラタキア(Latakia)北部でISILと戦う作戦を実行中でした」。

 ロズコイ中将は攻撃を国際法の著しい違反だと非難しました。対応として、トルコとの軍事的交流は停止され、ロシア攻撃機すべては現在、戦闘機を随伴しているとロズコイは言いました。さらに、ロシアの巡航ミサイル巡洋艦「モスクワ(Moskva)」が、危険をもたらしかねないすべての攻撃目標を破壊する目的で、シリアでのロシア軍プレゼンスのため、さらに航空援護を提供するために地中海東部へ派遣されたと、ロズコイは言いました。

 ブリュッセルではNATO軍の統治機構、北大西洋条約機構理事会がロシア軍機撃墜に関して緊急会合を持ちました。NATO事務総長イエンス・ストルテンベルグ(Secretary General Jens Stoltenberg)は後に、トルコ・ロシア紛争を解決するために「冷静さと非拡大」を主張し、ロシア軍がNATO同盟国の国境へ脅威を与えながら繰り返し接近したと指摘しました。「私は以前に、ロシア連邦がNATOの国境近辺で軍事行動を行う意味に対する懸念を表明しました」「これは将来においてそうした事件を避けるために合意し、尊重することの重要性を強調します」。

 alarabiya.netによれば、トルコは火曜日に国連安保理に対して、トルコ空域を侵犯した未確認航空機を撃墜したと言いました。潘基文国連事務総長(U.N. Secretary-General Ban Ki-moon)がトルコとロシアが緊張を緩和するよう訴えた時、トルコはそうする権利を擁護しました。

 15ヶ国のメンバーと潘事務総長への書簡で、トルコの国連大使ハリト・セヴィク(U.N. Ambassador Halit Cevik)は、2機は火曜日朝にトルコ空域へ接近し、5分間に10回、進路を変えるよう警告を受けたと言いました。セヴィク大使は両機はそれからトルコ域内を1マイル以上、17秒間飛んだと言いました。彼は航空機の国籍は不明だと言いました。「侵害に続いて、1機はトルコ空域から出ました。2機目はトルコの空域内で、この地域を戦闘偵察中のトルコ軍のF-16に攻撃されました」とセヴィクは書簡で言いました。「2機目はトルコ・シリア国境のシリア側に墜落しました」。


 記事は一部を紹介しました。

 トルコ軍の措置はまったく問題のない、正当な行為です。米軍もトルコ軍機の無線を傍受しており、レーダーの記録もとっていることでしょう。飛行機は墜落するまでにかなりの距離を飛行しても不思議はありません。墜落地点がシリア領内でも4kmは妥当な線です。

 それでもロシアが国際法違反だと言ってくることに、現在の国連体制の問題が露見しています。中国も含めて、自国の国益ばかり優先する国が常任理事国の一部を占めているのです。これでどうやって国際平和を守るというのでしょうか。

 TOW対戦車誘導ミサイルで撃墜した映像があるのなら、これは間違いのない事実でしょう。ロズコイ中将がこれを「迫撃砲」だったと言ったのは、単なる翻訳上の問題か、アメリカに遠慮したのかが気になります。後者なら、ロシアはアメリカを刺激したがっていないことを示します。その場合、アメリカを仲介として和解が実現する可能性があります。

 安倍政権が望むプーチン大統領の訪日はずっと難しくなったといえます。トルコは保守勢力が繰り返し主張するように、1985年3月、イラクがイランを飛行する航空機を撃墜すると宣言した時、トルコが旅客機を出してくれたためにイランにいた日本人が帰国できたという事件がありました。これは1890年9月、オスマン帝国(今のトルコ)の親善船が難破した際、日本人がトルコ人を救出したことへのお礼だとされていて、現在、これらの事件を描いた「海難1890」が公開中です。今度は日本はどうするのでしょう?。北方領土問題のためにロシアとの交渉を優先するのか、イラン事件への返礼を優先するのか?。この映画のプレミア上映を観賞した安倍首相はどう判断するつもりなのでしょう?。

 しかし、日本の問題はごく軽い意味しかありません。問題は、世界がいよいよ第3次世界大戦へ向けて腐敗しながら落ちていく徴候が見えるということです。すでにイスラム国などのテロ組織だけでなく、ロシアは完全な戦争体制で、NATO軍も戦時体制へ移行しようとしています。対テロ戦がはじまってから、大国のモラルが低下しており、国際法を尊重する雰囲気が失われています。流れは負のスパイラルへと落ち始めています。最終的にイスラム国とアルカイダを掃討するための大連合軍が結成され、彼らがシリアとイラクで大規模な戦争をする可能性も考えなければなりません。そこに日本がどう関係するかを我々は考える必要があります。シリアとイラクからテロ組織を排除しても、次は北アフリカに舞台を移すだけです。先日のパリ事件のように、先進国の首都での散発的テロ攻撃も継続されることでしょう。こうして、21世紀は植民地自体の不公正の後始末をする百年となるのでしょう。

 ちなみに、第3次世界大戦の着想は在日のイスラム教団体のフェイスブック「Islam Ispeace」が国会で安保法案が成立した翌日(9月20日)に出した声明に書いたことからヒントをもらいました(該当ページはこちら)。私はこの声明に強く惹かれ、大戦の可能性を真剣に考えるようになりました。下にメッセージを転載します。

日本の平和=世界平和

第三次世界大戦の兆候さえも、水平線上に見えようとしています。日本の皆さんは、第二次世界大戦によって、多大な被害をこうむられた方々です。ですから、第三次世界大戦の恐ろしさが充分に知り尽くされていらっしゃるでしょう。従って、私はあなた方が第三次世界大戦の勃発を未然に防ぐために、あなた方に大きな期待をよせています。
アッラーはその防止の手助けをしてくれるでしょう。しかしながら、我々が出来ることはアッラーが、この美しい世界を守り、そして破壊へのステップから我々を遠ざけ、そして、彼の英知によって我々が、平和をもう一度築けるようにする。そのような世界が来ることを、祈るだけです。
皆様にアッラーのご加護がありますようにアーミン

 


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