イスラム国とアル・ヌスラ戦線がシリアで共闘へ

2014.11.15


 military.comによれば、イスラム国とアルカイダが先週、シリア北部の農家に集まり、互いに戦うことを止め、敵に対して共に動く計画に合意したと、シリア反政府派高官と指揮官が言いました。

 イスラム国とアル・ヌスラ戦線(the Nusra Front)として知られるアルカイダ参加グループは1年以上、アサド大統領に対する反乱を支配しようとして激しく戦いました。

 しかし、協力はライバルのグループを統一するまではいかず、どんな両者間の協定も簡単に崩れるかも知れないと考えられています。米情報当局者はグループを密接に観測し、完全な統合はすぐには考えられないと言います。シリアに関する情報にアクセスできる米当局者は、米情報機関は2つのグループの戦略シフトの徴候を得ていないといいましたが、戦場での戦術的な取り決めは否定しませんでした。

 トルコで話したシリア反政府派によれば、会合は11月2日にアレッポ(Aleppo)西方のアタレブ(Atareb)で行われ、真夜中頃に始まり、午前4時まで続き、彼は合意が得られたことを確信しています。当局は民兵指揮官7人が参加したと言いました。

 アブ・ムサフア(Abu Musafer)という名前で知られる自由シリア軍参加の旅団指揮官である2番目の情報源も、アル・ヌスラ戦線とイスラム国の高官が11月2日に会合を持ったことを知ったと言いました。彼は正確な場所を明らかにしませんでしたが、それは第三者によって組織され、自由シリア軍が活動する地域で起こったと言いました。

 ムサフアによれば、アル・ヌスラ戦線とイスラム国間の戦闘を停止すること、シリア北部の新しい2つの地域でクルド軍に対する共同戦線を開くことの2つの決定がなされました。

 反政府当局者によれば、会合はイスラム国の代表1人、アル・ヌスラ戦線の特使2人を含み、コルーゾン・グループ(the Khorasan Group)が参加しました。コルーゾンは小規模ながら、アルカイダのベテラン集団です。イスラム国に忠誠を誓う強硬派のフンド・アル・アクサ(Jund al-Aqsa)、保守派の反政府派のアンサル・アル・ジャム(Ahrar al-Sham)も参加したと報じられています。

 当局者はイスラム国とアル・ヌスラ戦線は、アメリカが武装、訓練し、ジャマル・マーロウフ(Jamal Maarouf)が指揮するシリア革命戦線(the Syrian Revolutionaries Front)を殲滅するために共同行動することに合意したと言いました。彼らは10,000〜12,000人とされる全軍を殲滅するまで戦い続けると決めました。

 会合で、イスラム国は、シリア北部カーン・アル・サンブル(Khan al-Sunbul)で、西欧が支援するハズム運動(the Hazm Movement)の反政府派への攻勢のためにアル・ヌスラ戦線に追加の戦闘員を送ると提示しました。イスラム国は戦闘員約100人をピックアップトラック22台で送りましたが、ハズム運動が戦闘をしないと決めたので、アル・ヌスラ戦線は支援を必要としませんでした。

 ウェブサイト「the Long War」のためにテログループを追跡しているアナリスト、トム・ジョセリン(Tom Joscelyn)は、2つのグループが公式に共闘することを確認できるメッセージは見ていないと言いました。しかし、彼は11月2日の会合の報道前に浮上した、それらに合致した情報があり、この同盟にはアルカイダ側に大きな利益があると言いました。

 彼らが共闘すれば、イスラム過激派はシリアで一層効果を発揮すると、彼は言いました。「互いに対して流される血がより少なければ、彼らはその心配をせず、それは彼らがアサド大統領や西欧が支援する軍隊の後を追うのを簡単にします」。

 BBCによれば、イラクの精油所があるバイジ(Baiji・kmzファイルはこちら)をイラク軍がイスラム国から奪還しました。イスラム国は8月からバイジを占領していました。


 記事は一部を紹介しました。

 この共闘の話は先月出ていて、当サイトでも紹介しました(関連記事はこちら)。それが実現したということです。

 気になるのは、会合を企画したのが第三者と書いてあることです。誰かがアル・ヌスラ戦線とイスラム国を仲介したようですが、誰かは書いてありません。現地に彼らの共闘を望む声があるのは間違いないでしょう。

 コルーゾン・グループの存在を反政府組織が認めたのは、多分、これが初めてと思います。当初は、そんなグループはないという現地筋の情報が出ましたが、いまや間違いなく存在するということです。

 この同盟が永続的に続くかは疑問です。同盟しても、互いに主導権争いをして、最終的には決別する可能性が高いと考えます。イスラム国の方がアルカイダよりも優勢なので、イスラム国がアルカイダに対してとる態度が、事態を変える可能性があります。最近、イスラム国は通貨を発行すると発表し、国家志向を一層強めています。それどころではないアルカイダにとっては面白くない展開です。この通貨がどんな動きをするかも気になります。他の通貨との交換は行われるのでしょうか?。イスラム国勢力圏内だけで通用するのなら、領域が不安定なことから、流通しにくいと思われます。外貨交換で儲けようとする者が出てくるかどうかも気になります。

 しかし、共闘があまりにもうまく行けば、他の地域でもやろうという話になるかも知れません。どちらに転ぶかが問題です。

 イラク軍がイラク領域内でイスラム国を追い出すのに成功すれば、一部がシリアに入って、イスラム国を追撃するというシナリオも考えられます。これはシリアのアサド政権にも強い圧力を加えるのに役立ちます。もちろん、領土的野心とは無縁の分野で行うべきです。それが成功すれば、イラクは国際貢献を果たしたとして、各国から称賛を受けることになるでしょう。

 この共闘は、そんな動きも促進するかも知れません。

 

 


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