シリア反政府派の間に広がる空爆への反感

2014.10.2


 military.comによれば、シリアのイスラム国に対する米軍主導の空爆への反対がシリアの反政府グループとその支持者の間に広がっているようです。

 先週、攻撃が始まってから、反政府派活動家はアメリカの空爆を見当違いであり、イスラム教への攻撃だと抗議し、非難してきました。批評家は爆撃は反政府派ではなく、アサド大統領の軍隊を狙うべきだと言います。「同盟はディアシュ(Daesh・アラビア語でイスラム国を表す言葉)を口実に聖なるシリア革命に対抗しています」と自由シリア軍の旅団指揮官、アブ・カセイ(Abu Qusay)は言いました。「私は個人的に、イスラム教徒の戦いで西欧と同盟したくはありません」。

 米当局者はイスラム国に対抗する空爆計画に参加する穏健派のシリア反政府派を得ようとします。批評家は爆撃はアメリカが支援するグループを含めた反政府派の中に、イスラム国とアル・ヌスラ戦線へのシンパシーを増やす意図しない効果を生みかねないと言います。空爆作戦はこの二つのグループが和解するという予想外の結末も生みかねません。ワシントンはイスラム国を他の反政府派から孤立させようとしています。

 一週間前の空爆初日に、アレッポ郊外のアル・ヌスラ戦線の少なくとも一カ所の基地が攻撃されたという事実は、多くの怒りを引き起こしました。爆弾職人、有名な狙撃手を含めたアル・ヌスラ戦線の高位の工作員数名が殺されました。

 アル・ヌスラ戦線は反政府活動家と武装した反政府派の間で広範に支持されています。アルカイダ傘下とはいえ、アル・ヌスラ戦線はイスラム国よりも地元初の運動とみられています。

 米当局者は初期の空爆は、西欧を標的とするアルカイダ熟練工作員の謎のネットワーク、コルーゾン・グループ(Khorasan Group)を狙ったと言いました。しかし、多くの活動家はコルーゾンという名前を聞いたことがなく、爆撃はアル・ヌスラ戦線の陣地を狙っているようだと言いました。

 日曜日、アル・ヌスラ戦線の指導者、アブ・モハメッド・ジョラニ(Abu Mohammed Jolani)が珍しく公開スピーチを行い、空爆がアメリカと空爆に参加するアラブ国に対する火山が噴火する原因になると予測しました。

 アル・ヌスラ戦線とイスラム国は2013年中期に分裂し、ライバルになりました。しかし、「彼らの間で和解のための手続きがすでに始まっています」と、アーメド・ハスカウィ(Ahmad Haskawi)という仮名の活動家は言いました。彼は、ラッカ(Raqqah)でイスラム国が刑務所からアル・ヌスラ戦線の囚人を釈放したことを指摘しました。ラッカは頻繁にアメリカ主導の空爆の目標となってきました。「我々は大勢の人々が(イスラム国に)忠誠を誓うのを見ました」「爆撃作戦が始まってすぐに、すべての軍閥がそうしたのは言うまでもありません」。


 記事は一部を紹介しました。主に記事の後半を省略しました。

 イラクでも、アフガニスタンでも、米軍は現地の協力を得られていません。たとえば、イラクでは、現地の業者に兵舎の電気工事をやらせると、漏電が多発したことがありました。プールやシャワー室で感電による死亡事故が起こっています。私はこれらの事件は単なる事故ではなく、イラク人の意図的なサボタージュと考えています。

 自由シリア軍はアル・ヌスラ戦線は敵だと公式には主張しますが、自由シリア軍の結束は弱く、指導部と末端の意志疎通は、ままなりません。その結果、アル・ヌスラ戦線を味方と思う者たちが出てくるのでしょう。

 こういう状態なので、地上軍をシリアに投入すれば、もっと大きな反発が出るはずです。

 アル・ヌスラ戦線とイスラム国の和解は最悪ですが、そうなると、自由シリア軍はアル・ヌスラ戦線を支持しなくなります。このように、イスラム教徒同士の絆は流動的であり、空爆の悪影響は時間をかけた見極めが必要です。

 自由シリア軍の領域を奪還するための空爆を増やせば、自由シリア軍の考えも変わります。工夫しながら空爆を続ける以外に、アメリカに道はありません。


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