八尾空港への訓練受け入れ提案は意味不明

2013.6.8


 連日、橋下徹大阪市長が提案した、大阪市の八尾空港(kmzファイルはこちら)をオスプレイの訓練に提供するという話が連日報道されています。

 率直に言って、馬鹿馬鹿しい限りです。なぜ、こんな無意味な提案が、これだけの時間を使って報道されるのか自体が理解できません。

 まず、八尾空港は周囲を市街地で囲まれ、普天間基地で問題になっている安全性は、一層条件が悪いことがあげられます。

 八尾空港から市街地が切れるところまでの距離が約13km、完全に大阪湾に出るまでが約18kmもあります。普天間基地の場合、最も短いところだと770m程度で、その半分は家屋がない農地ですが、ここは滑走路から垂直に曲がらないと通れない不自然なコースで、普通は使いません。しかし、滑走路にまっすぐに進入するように、那覇港方向から市街地へ進入する場合でも、遙かに短い7.5kmなのです。これだけ見ても、安全性の点で八尾空港が不適格であることが分かります。もしかすると、八尾空港の近くを流れる大和川の上を飛べば安全だとかいう意見が出るかも知れませんが、噴飯物でしかありません。安全問題の他、騒音問題も一層条件が悪く、住民の反発は極度に高まります。

 さらに、ここは民間航空会社や航空学校、整備会社が多数利用しており、陸上自衛隊、警察、消防の飛行隊、国土交通省も利用しています。ここに、さらにオスプレイを受け入れる余裕があるとは思えません。航空業務上も、施設の収容能力上の両面で無理でしょう。たとえば、オスプレイの訓練中に、警察のヘリコプターが離陸する必要が出ても、待ったがかかることになってしまいます。

 この話はすでに潰れていると私は考えています。

 米軍司令官に八尾空港の訓練受け入れの話をした時に、橋下市長は例の風俗利用提案をしています。要するに、米兵の下半身の世話は、こっちで面倒見るから、八尾空港を訓練に使えと持ちかけた訳です。こんな見え透いた営業トークを、米軍司令官はすぐに「引き受けるべきではない話」と見抜いたでしょう。最近、隣国韓国で、兵士の売春利用を黙認していた部隊があり、大問題となっているのです。橋下市長は風俗業の顧問弁護士だったことがあります。現在もそういうつながりがあって、彼は風俗業界のために営業活動をしているのかと勘ぐりたくなります。この話が従軍慰安婦問題に抵触し、話が違う方向へ流れそうになると、橋下市長は慌てて「マスコミの誤報」と言って、話を戻そうとしました。後で彼が発表した声明文を読むと、何とかして話を従軍慰安婦問題から切り離そうとしていることが読み取れます。(関連記事はこちら

 この程度の話なのに、防衛省には内閣から提案を検証するよう指示が出たようです。防衛省がよい回答をするはずはなく、仮に使用可能と回答しても、米軍は引き受けないでしょう。橋下市長が自分の足を踏み砕いたことに気がつかないのは理解できても、総理大臣までが分からないのは理解できません。以前から繰り返していますが、安倍内閣は民主党以上に危機管理がうまい政権ではないのです。

 日本の安全保障議論は、精々がこのレベルです。恥ずかしいから、これ以上続けないでください。


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