シリア反政府派は食糧よりも武器弾薬を望む

2013.3.4


 military.comによれば、シリアの反政府派は、アメリカが提供する予定の生活必需品と医薬品よりも武器弾薬が欲しいと嘆いています。

 シリア反政府派最高軍事評議会参謀長、サリム・イドリス准将(Gen. Salim Idris)は、食料供給と医薬品の支援物資のパッケージは優勢な空軍力を持つ政府軍に勝つ手助けにならないと言いました。「我々は食料、飲料水を望んでいませんし、医薬品を望んでいません。負傷したら、死ぬことを望みます。望むのは武器だけです」「アサドの犯罪的、殺人者の政権がシリア国民を殲滅するのを止めるために、対戦車、対空ミサイルが欲しいのです」。

 自由シリア軍は12月に、最高軍事評議会と呼ばれる、西欧が支援する、統合された反政府司令部に再編成されました。

 シリア軍を離反し、非宗教的な穏健派とみられるイドリス准将は、最近、反政府派が武器を受け取ったという報道を否定しました。反政府当局も地元メディアとニューヨークタイムズ紙の、1990年代のバルカン戦争で使われた、機関銃、ライフル銃、対戦車グレネードを含む武器が反政府派に送られたという報道を否定しました。「これらの報道は真実ではありません。我々の戦士たちは武器弾薬の大幅な不足で苦しんでいます」とイドリス大将は言いました。「我々が持つ唯一の武器は、シリア国内で手に入れたのと、シリア軍から奪ったものだけです」。イドリス准将は激戦が続くアレッポから話しました。

 捕獲した戦車で支援された反政府派は、先週始まった新しい攻勢以来、警察学校を襲撃しようとしています。人権活動家は、ここが主要な戦線となり、反政府派が支配する地域を砲撃する軍基地に転じたと言います。シリア国営通信社は金曜日に、学校を守る政府軍は、反政府軍兵士多数を殺し、車両5台を破壊したと言いました。人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights」は、金曜日に学校周辺で激戦があり、正確な数字は不明ながら、数名の犠牲が出たと報告しました。

 この団体は、世界遺産の旧市街のウマイヤ・モスク周辺でも激戦があったと言いました。このモスクは昨年10月に大きな損害を受けていました。反政府軍が政府軍をモスクに寄せ付けず、完全な支配を握っているかについては、矛盾する報告があります。アレッポ・メディア・センターのモハメッド・アル・カティブ(Mohammed al-Khatib)は、激戦が続いているものの、モスクは反政府軍の手にあると言いました。人権団体のラミ・アブドル・ラーマン(Rami Abdul-Rahman)は、反政府軍は数日間、少なくともモスクの半分を支配していたとしながらも、現在完全に支配しているかは確認できないと言いました。

 金曜日、シリア北部のクルド人グループの広報は、シリア国家評議会と、トルコ国境沿いのハサカ州(al-Hasaka province)で、反政府軍との戦いを終わらせるという取り決めに合意したと言いました。

 政府軍を追い出した後、反政府派はこの地域の支配をつかみましたが、数週間のクルド人との戦いで、その大半を失いました。取り決めは争いを止め、アサドを権力から追放するという共通の目標の下で団結するために、木曜日遅くに結ばれました。合意によれば、反政府派はクルド人の地域から撤退します。見返りに、クルド人戦士はクルド人の支配地域で、反政府軍と共に犯人と一緒に戦います。

 alarabiya.netによれば、ラッカ州の州都、ラッカの郊外で戦闘があり、土曜日に反政府軍26人が殺されました。

 「政府軍は市街地、郊外の数ヶ所を砲撃し、戦いでは政府軍、反政府軍両方に多数の死者が出ました」と人権団体は言いました。「爆発音が市内で聞こえ、煙が空に立ち上るのが見えました」。政府軍は市内にいる反政府軍を掃射するためにヘリコプターを使っています。この州都で暴力が急増するのは稀なことです。ラッカはトルコ国境の近く、戦略的に重要な場所にあります。

 政府軍は金曜日に、前日にアル・ヌスラ戦線が占領した、北東部国旗の検問所を奪還しました。

 反政府軍は激戦の後で、木曜日に石油が豊富なハサカ州(Hassakeh province)のヤールビア(Yaarubiyeh)の検問所を占領しました。「政府軍は、アル・ヌスラ戦線が占領してから24時間以内にヤールビア検問所を奪還しました」「政府軍はヤールビアの半分も占領しました」と人権団体は言いました。

 戦闘の後、政府軍の負傷兵4人がイラクのニナーワー州(Nineveh province)のラビタ病院(Rabia Hospital)で治療を受けたとイラク国防省は言いました。

 アル・ヌスラ戦線は2月中旬にシャダディア(Shaddadeh)と周辺の村を占領しました。

 国境検問所は、政府軍が取り戻すまで、昨年は反政府軍が支配していました。

 聖戦グループは主にシリア東部の、石油、ガス施設を含む戦略的拠点を狙い、給料を払って地元民から新兵を集めます。

 彼らはシリアにイスラム国家を建設することを熱望します。

 BBCによれば、上記のアレッポにある警察学校の大半は、結局、反政府派の手に落ちました。


 記事の一部は省略しました。場所を示すkmzファイルは時間の都合で作成できていません。あとで調べたいと思います。

 やはり、アメリカの対処はシリアの反政府派を満足させないようです。ケリー国務長官の煮え切らない態度は反政府派をイライラさせるだけと、私は考えます。

 まだアレッポの警察学校が制圧できず、そこから砲撃が放たれていたことからも、反政府派の戦力不足が知れます。政府軍と反政府軍の正確な戦力状況は分からないものの、依然としてラッカやヤールビアなどの東部で政府軍が戦果をあげられるのは、反政府軍に基本的な武器しかないからです。

 対空ミサイルはハイテク兵器であり、民間航空機の攻撃に使われることから供給は困難です。特に、テロで航空機を狙われたアメリカにとっては、提供を頼むのは無理というものです。でも、対戦車ミサイルなら自由シリア軍の一部に限り、提供できる可能性はあります。アメリカだけが批判されていますが、サウジやカタールも提供する武器は小火器だけに限定しています(関連記事はこちら)。

 ハイテク兵器が駄目なら、迫撃砲のような支援火器はどうなのでしょう。迫撃砲は大口径なら榴弾砲に匹敵する威力をもち、射程は榴弾砲ほど長くはありません。自走式のタイプでも、アメリカの直接的な驚異にはなりません。

 アラブ連盟が適当な段階で、重火器の提供を決断するしかないのかもしれません。

 アル・ヌスラ戦線が東部で勢力を固めている点は意外でした。これまでアレッポ周辺での活動が目立っていたからです。イラク政府が国境の戦力を増員したのは、アル・ヌスラ戦線の勢力拡大を認識したためだと考えられます。人口の少ない東部に彼らがはびこると、これはイラクにとってもやっかいなことになります。シリア人の関心はトルコからヨルダンに至る幹線道路付近に集中していて、閑散とした東部には、あまり手をかけたがらないからです。シリアの大都市は南北に続く幹線道路周辺に集まっています。しかも、東部には油田、ガス田、水力発電ダムがあります。イスラム過激派がこれらを手に入れると、新生シリア政府はそれらを活用できず、痛手になります。

 これは、イラクが防衛のために、シリア国内に越境攻撃を行う可能性がありますね。シリア国家評議会はそれをどう処理するのでしょうか。トルコ政府が、しばしばクルド人のテロ組織をイラク国内で越境攻撃することがあります。こうした越境攻撃は国際法的にも認められています。イラク政府が、アル・ヌスラ戦線がイラク国内に侵入しているのに対応する限りは、国家評議会は黙認することになるでしょう。自由シリア軍とアル・ヌスラ戦線がどんな関係にあるのかは明確ではありませんが、別々に行動していると想像しています。だから、国家評議会はイラク政府の行動が対テロ活動と判断できる範囲では、容認するのではないかと思われるのです。


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