BBCがサウジの武器をアレッポで確認

2012.10.9


 BBCによれば、サウジアラビア軍の武器がシリアの反政府派に転用されている明白な証拠があります。

 サウジに宛てた武器製造工場からの3つの木箱がアレッポ(Aleppo)の反政府派が使っている基地にあります。

 どれだけの木箱がアレッポに到着したかは分かりませんし、BBCはそれらの中身を撮影する許可が得られませんでした。サウジはコメントを拒否しました。

 ダマスカス(Damascus)郊外で、大きな爆発がありました。人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights」は、この攻撃はハラスタ(Harasta)の空軍情報部の施設を狙っていたと言いました。今のところ、死傷者の報告はありません。この地域で戦闘が続いています。

 トルコは6日連続の越境攻撃の後、シリアに対する国際的な行動を要請しました。月曜日に、トルコは国境を守るためのあらゆることを続けていると、アブドラ・ギュル大統領(President Abdullah Gul)は言い、最悪のシナリオがシリアで起きているとつけ付け加えました。

 ホムス(Homs)では、激戦が続いています。政府軍はホムスへ進撃をはじめ、4日間の砲爆撃の後で、反政府派の地区へ前進しました。「軍はホムスの反政府派最後の地区を掃討する最中です」と、政府軍指揮官は言いました。

 木箱のラベルはウクライナ東部のルハンスク(Luhansk)にあるルハンスク弾薬工業(Luhansk Cartridge Works)を示す、LCWと記載されます。この会社は1985年のソ連時代に創設され、主に軍用弾を製造しますが、スポーツ、狩猟分野へも多角化を図っています。この会社の主要な輸出品はAK-47小銃に使われる7.62mm弾で、その改良品はシリア軍と反政府派の両方で使われています。

 アレッポのモスクで見つかった弾薬の木箱はウクライナのダスタン社(Dastan)製でした。これは海軍の兵器とミサイル施設に特化しています。木箱が何かは、それらがどうやってそこに来たかと同じく不明だと、アレッポにいるBBCのイアン・パネル(Ian Pannell)は言いました。しかし、それらの存在は明らかに湾岸のどこかの国が積極的にアサド大統領を打倒するために反政府軍の戦闘を支援している証拠だとパネル記者は言います。

 BBCの安全保障担当記者、フランク・ガードナー(Frank Gardner)は、サウジは一般的に控えめで密かな決断で外交問題を実施するのを好むと言います。

 ニューヨークタイムズ紙は、サウジとカタール当局が小火器を反政府派に送っていることを認めましたが、肩に担いで発射するミサイルのような重装備は見合わせていると報じます。これは重火器をテロリストアが入手することを恐れるアメリカに、反政府派が落胆したことが一因です。

 月曜日の外交政策に関する演説で、ミット・ロムニー大統領候補者(Mitt Romney)は、当選したら、シリアの反政府派の中の親西欧の一派を支援すると言いました。「私は、我々の価値を共有する反体制派のメンバーを特定して組織化するために、我々のパートナーたちと一緒に働き、彼らが彼らがアサドの戦車、ヘリコプター、ジェット戦闘機を打ち負かすのに必要な武器を得られるようにします」

 国連は緊張が増すことを警告し、両者に武器を供給する人たちに、そうすることを止めるように要請しました。潘基文国連事務総長(UN Secretary General Ban Ki-moon)は、この地域の緊張は増加しており、国際的に通商が停止されているのに、両者に武器が流れ続けることを強く憂慮すると言いました。「私は再び、武器を供給する国々にそれを止めるよう求めます。軍事化は状況を悪化させるだけです」と、彼はフランスのストラスブール市で行われた「the World Forum for Democracy」で言いました。

 NATO事務総長アンダース・フォー・ラスムッセン(Secretary General Anders Fogh Rasmussen)は、シリアは今週のNATO外務大臣会議の議題ではありませんが、NATO加盟国のトルコは結束を期待できると言いました。NATO軍はシリアに軍事介入するつもりはありませんが、必要ならトルコを保護、防衛する計画があると言いました。


 記事の一部は省略しました。

 記事には映像がつけられています。リンクをクリックして映像を見てください。ウクライナから発送され、サウジに着いたことを示すラベルが見られます。

 湾岸諸国がシリアの反政府派を支援していることは、すでに知られていますが、マスコミが直接確認したのは、これが初めてです。ダスタン社のウェブサイトを見ると、携帯型対空ミサイルも扱っていることが分かります。これが政府軍の航空機を撃ち落としているミサイルだとは断定できないものの、可能性が出てきました。

  こうした取材は重要です。日本の戦場ジャーナリストにも、こういう視点が欲しいですね。軍事的な見地を現地に持ち込んで取材することです。それは軍事マニア向けの報道ではなく、戦争全体の推移を判断するためのものです。現在の戦場ジャーナリストの話を聞くと、戦地での民間人にだけ目が向いているという気がします。それも大事な情報ですが、そこだけ見ていると戦争全体を見逃すことになり、少しでも早く戦争を終結させる努力へと結びついていきません。単に、戦地の人びとに同情して終わりです。欧米のマスコミも決して百点満点はつけられないのですが、日本のマスコミよりは軍事を知っています。 こうした情報を集めて公開することで、戦争を防止することができたら、これ以上のことはありません。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.