英人医師がシリアで釈放直前に死亡

2013.12.18


 BBCによると、イギリスの医師、アッバス・カーン(Abbas Khan)がシリア政府によって、釈放の数日前に殺されました。

 イギリスのヒュー・ロバートソン政務次官(Foreign Office Minister Hugh Robertson)は、サウス・ロンドン出身の32歳の整形外科医の死は極めて疑わしいと言いました。カーン医師は昨年、彼が民間人を支援していたアレッポで逮捕されていました。

 シリアのファイサル・メクダッド外務副大臣(Deputy Foreign Minister Faisal Mekdad)は、カーン医師はパジャマを使って首をつり、自殺を図ったと言いました。彼は検死結果がこれを証明すると言い、彼の死体は調査できるように彼の家族に引き渡されると言いました。

 彼の親類は、アサド大統領の命令に引き続いて、金曜日に彼が釈放されるはずだったと言いました。ロバートソン外務大臣は、イギリス政府はカーン医師に何が起きたのかについて、緊急の説明を求めていると言いました。


 記事は一部を紹介しました。

 記事はこの4倍くらいの分量ですが、カーン医師の背景や自殺するわけがないという関係者の意見が書かれていて、大半が状況証拠なので省略しました。

 重要なのは、この事件がイギリス政府の態度を大きく還る可能性があるということです。本当にカーン医師が殺害されたのなら、明白な戦争犯罪です。

 これまでも、ロシア海軍がソマリアの海賊を捕らえ、ボートに乗せて釈放した後で、そのボートが洋上で不可解な沈没するという事件がありました(関連記事はこちら)。これは面倒な海賊裁判を避けるために、釈放した後でボートを攻撃した可能性があります。

 今回も、アサド大統領による釈放命令が出された後で、本人が自殺するという形で、シリアがイギリスに教訓を与えようとした恐れがあります。

 しかし、首つり自殺か絞殺かは、法医学により判別方法が確立されています。死体が遺族に返還されるのなら、その検証ができるでしょう。絞殺の場合、ロープでできた鬱血の跡が首に水平につきますが、首つり自殺では斜め上向きにつくのです。この検証ができれば、自殺か他殺かは判断ができます。

 他殺と判断された場合、イギリス政府はシリア政府の責任を追及することになります。これがシリア内戦への対応に変化を生む可能性があります。

 シリア人多数が難民になっても動かないのに、自国民一人が殺されただけで、大きく態度を変えるのは変に見えますが、これが現在の国際社会の現状なのです。


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