クロッカー大使がアフガン内戦を否定

2012.7.13
修正・追加 同日 17:20


 military.comによれば、健康問題で辞任するアフガニスタン駐留米大使、ライアン・クロッカー(Ryan Crocker)は、外国部隊が撤退した後でアフガンが内戦に突入する可能性は少ないという見解を示しました。

 クロッカー氏は国際社会は2014年以後のアフガン支援を誓約したと言いました。少数民族の政治指導者も内戦の準備をするよりは将来の政府の中で自分の地位を気にしているようです。彼は民族の一派が内戦に備えて再武装し、彼らは決して武装解除しないという報告を確認することは難しいと言いました。アフガンのアルカイダは大きく弱体化させられました。「彼らは打倒されません。彼らは危険なままですが、相当な圧力の下にいます」「私は彼らが生き延びることを心配するだけでほとんどの時間を費やすと思います。我々も圧力をかけ続けなければなりません」。

 外国部隊の撤退はハミド・カルザイ大統領(President Hamid Karzai)の任期切れと同じです。一部の政治アナリストはカルザイ大統領が、プーチンとメドベージェフのように合法的に権力に留まろうとすると推測しましたが、クロッカーはそう思わないと言いました。「彼は公的、私的な人物でいられることが明らかで、繰り返し権力に留まらないと言っています。私は彼を信じます」。2014年以降に何が起きるかと問われて、クロッカーは国際部隊と民間の援助が減速すれば、アフガンの経済は影響を受けますが、2014年以降も治安が堅固で経済支援を受けられるので、経済力崩壊にはならないと楽観視しました。「経済は下落しますが、私が聞いた最新の見積もりは、国内総生産の伸びは現在の11%から5%くらいになるということです。これはこういう国ではまだましな数字です」。

 クロッカーは不安定なアフガンで長期的な予測をするのは不可能だと言いました。しかし彼は、1989年のソ連撤退後のように、タリバンの台頭を招いた内乱には向かわないと言いました。

 しかし、北部アフガンに多くの武装勢力が根付いているとクロッカーは言いました。その一部は地方警察のメンバーに変装したり、内務省が監督する村レベルの戦闘部隊の制服を着たりします。「私は彼らの一番の関心は、私がありそうにないと思う内戦を準備することよりも犯罪活動だと思います」。

 クロッカーはタリバンの最高レベルは和平交渉をする意志があると言いました。タリバン評議会で最も力を持つ男のひとり、アグファ・ヤン・モタシム(Agha Jan Motasim)のような穏健な人物がいます。モタシムは5月にAP通信に、大多数のタリバンは和平を望み、強硬派は少数だと言いました。「彼のような、反応を示す者が他にもいます」

 こうした、一部がパキスタンにいるタリバン指導者が強硬派に殺される心配はないかと尋ねられると、彼は「その通り」と答えました。彼はアメリカは彼らを保護していないものの、パキスタンは安全な通行を提供しているはずだと言いました。「つまり、我々はタリバン高官が第三国への道を持っていることに気がついているものの、その正確な数は分からないのです。でも、私は彼らがパキスタンの干渉なしにやったと思いたいです」。

 クロッカーはアメリカはタリバンと去年の秋からは直接接触していないと言いました。「アフガンの進展でなければなりません」「和平が進展するなら、パキスタンは手を貸さなければなりません」と彼は言いました。


 モタシムのインタビューについては、こちらを読んでください。

 オバマ大統領の信頼が厚いクロッカー大使が退任するようです。残念ですが、2014年以降にアフガンが内戦に突入するという見解がアメリカに存在することは、さらに驚きです。メディアが人目を引く記事を書くために捻り出したテーマとしか思えません。

 私はタリバンが和平に応じる可能性は低いと思いますが、今より混乱が激化するとも思っていません。また、アフガンの問題をアフガン政府とタリバンの対立という分かりやすい枠組みで考えるのも間違っていると思います。実際には、各地に存在する軍閥の問題がアフガンの問題だと思います。タリバンが和平で解散しても、類似した組織が何かの不満を理由に生まれる危険を考えるべきです。

 さらに、パキスタンの干渉が心配です。タリバンの一部はパキスタンの支援を受けており、実際にはパキスタンな手先となってアフガンを不安定にすることに協力しています。昨日の記事で、タリバンはアルカイダに対して怒っているという放し飼いありましたが、タリバンを批判する前に自分たちが外国勢力の手先になっていることを自己反省すべきなのです。このパキスタンの存在こそ、タリバン和解の障害になるのです。

 外国部隊が撤退したあとは、経済支援でアフガンを支えていくしか方法はありません。タリバンが共存するのは不可避と私は考えます。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.