リビア反政府派に人権侵害が横行

2011.7.14


 BBCがリビアの反政府派による人権侵害を主張しました。

 ニューヨークに拠点を置く「ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights Watch)」のオブザーバーは、彼ら自身が事件を目撃し、最近、反政府派が獲得した地域で目撃者と面談したと言います。ブリュッセルで記者と話した反政府派広報官はこの主張を否定しました。

 2月に反政府派の反乱が始まった時から、両者による不正行為の告発が広まってきました。最新の告発は先月、国土の西で反政府派が獲得した、アル・アワニヤ(al-Awaniya・kmzファイルはこちら)、レイヤニヤ(Rayayinah・kmzファイルはこちら)、ザウィヤト・アル・バグル(Zawiyat al-Bagul・kmzファイルはこちら)、アル・グアリシュ(al-Qawalish・kmzファイルはこちら)の4つの町に集中します。

 ヒューマン・ライツ・ウオッチの調査監督、フレッド・アブラハム(Fred Abrahams)は「反政府派の行為は気がかりでした」と言いました。「我々は住宅と店舗での広範な略奪、カダフィ支持者と疑われる者の家への放火、最も気がかりな、医療設備の盗みを含む、3つの診療所と小さな地元の病院からの窃盗を公正に記録しました」。彼はリビア政府はもっと深刻な犯罪を犯したけども、それは反政府派の行為を正当化しないと言いました。「我々の狙いは、すべての戦闘員、すべての軍隊を、彼らが組織化されているかどうか、州、政府、反政府グループかに関係なく、同じ基準の状態にすることです。それは彼らが接近している他の地域のために、船首に向けて撃つ警告射撃でもあります。我々はこれらの地域で彼らが民間人にどう振る舞い、扱うかについて強く懸念しています」。

 反政府派の指導者はヒューマン・ライツ・ウオッチの主張に反論しました。「これは社会的制約から解放された地域での事件ではありません」と反政府派広報官、マハムード・ジブリール(Mahmud Jibril)はブリュッセルで記者に言いました。


 こうした不正行為は戦争ではつきものです。反政府派がカダフィ派を拷問しているという疑惑は先に紹介しました(関連記事はこちら)。カダフィ派は兵士にバイアグラとコンドームを与えて、反政府派の女性を強姦しているとされます(関連記事はこちら )。

 特に、アフリカのような地域で、略奪を完全に防ぐことは不可能と言えます。アメリカのニューヨーク市ですら、半世紀以上前の警察は似たような状況にあり、空き巣の被害に遭って警官を呼ぶと、さらに物がなくなると言われたほどでした。警官自身が盗みをやっていたのです。それ以外にも様々な犯罪に警官が関わっていたとされます。現代でも米軍兵士の中には、お土産を持ち帰る気分で略奪を行っている者がいます。

 反政府派が前進するにつれて略奪を行うことは予想できることでした。私は現実的に考えて、こうしたモラルの向上のためには、まず民主的な政権の樹立が欠かせないと考えます。エジプトと共に、穏健派の国の軍隊が国際法を学び、遵守する習慣を身につけるしか、この地域で戦争犯罪を防ぐ方法はないと考えます。もちろん、ヒューマン・ライツ・ウオッチが間違っているという訳ではなく、彼らが戦地に調査員を派遣して活動していることには敬意を表したいと思っています。日本のマスコミは、こうした海外の紛争を取材しようという熱意に欠けています。読者や視聴者が、こういう問題に興味を示さないからです。それを考えると、人権団体は戦地での状況を世界に知らせる有力な情報源となっています。



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