チュニジア軍がカダフィ軍を拘束

2011.4.30


 気になっていたチュニジア国境の様子をBBCが報じました。

 反政府派とカダフィ軍は、反政府派が1週間前に奪取した、ダヒバ(Dahiba・kmzファイルはこちら)とワジン(Wazin・kmzファイルはこちら)の間の国境検問所を支配するために戦っています。カダフィ軍が撃った砲弾がチュニジア領内に着弾しました。短時間国境を越えたあとで、カダフィ軍はチュニジアに謝罪しました。しかし、チュニジア当局は、危険な軍事的激化だと警告しました。「チュニジア領域の人口集中地域への砲撃はチュニジアの領土保全の侵犯で、この地域の住民の安全の侵犯です」とチュニジア外務省の声明は言いました。

 南部のクフラ(Kufra)はカダフィ軍が再占領しました。トリポリでは、NATO軍機が通過した時に、爆発音が2回聞こえました。ミスラタでは、カダフィ軍の砲撃と包囲が続いています。カダフィ軍は市の中心部から撤退しましたが、郊外から住宅地を砲撃しています。

 別のBBCの記事はこう書いています。

 チュニジアTVが、チュニジア兵に拘束される前、リビア軍の約15台の車両がダヒバに侵入しました。アナリストは、ダヒバとワジンの間を前後する戦いは2月中旬に起きた流動的で複雑な紛争の典型だと言いました。チュニジアTVは、ダヒバは金曜日早朝の侵略の後、平静になったと報じました。記事は「カダフィの旅団による(チュニジア)領域の侵犯は、反政府派に対する激しい戦闘の間に、今朝起こりました」と言いました。「これはダヒバの中心部を含めてひどい混乱を引き起こしました」。

 チュニジア軍と国境警備隊が旅団を支配し、武器を取り上げる間、ダヒバと周辺地域の住民は、町への侵入に抗議するために旅団の車両に石を投げました。ダヒバのある住民は、カダフィ軍が町を砲撃し、建物に損害を与え、少なくとも住民1人を負傷させました。カダフィ軍は反政府派を追いかけて町へトラックで入ったと、彼は言いました。「チュニジア軍は町を徹底的に捜索しています」。「チュニジア軍が町へ入るゲートを閉じ、誰も入れないので、カダフィ軍がどうなったかは分かりません」。ある報道は、チュニジア軍がカダフィ軍を分散させるために発砲したと言いました。

 反政府派の広報官は、彼らが支配するジンタン(Zintan)を攻撃するカダフィ軍をNATO軍の航空機が攻撃したと言いました。ベンガジの医師は、木曜日にミスラタがカダフィ軍に砲撃され、12人が殺されたと言いました。主張は独自に確認できませんでした。

 military.comによれば、国連安保理でリビアへの攻撃について議論が対立しています。その中でアメリカの国連大使が、カダフィ政権が女性を強姦するために兵士にバイアグラとコンドームを与えていると主張しました。

 ロシアとその他の国は、フランス、イギリス、アメリカ、彼らの同盟国がリビア上空の飛行禁止区域をパトロールしているのは、国連安保理決議が与えた命令を越えていると主張しました。アメリカは同盟国の行動は決議の範囲内だと主張しました。

 スーザン・ライス米大使(U.S. Ambassador Susan Rice)は、非公開会議での議論が激化すると、バイアグラの使用を強調しました。出席した外交官によれば、スーザン大使はカダフィ軍が強姦を行うためにバイアグラを支給されていると言いました。スーザン大使は情報源を与えませんでしたが、別の出席した外交官は、彼女が別の公使が「同盟国は非難されるべきことをしている敵と戦っている」ことを強調した議論の一部としてコメントしたと言いました。カダフィ軍にバイアグラが与えられているという主張は、イギリスのタブロイド版新聞で公表されました。アダビヤ(Ajdabiya)の医師は先月、カダフィ軍が性的暴行の作戦の一環として、バイアグラとコンドームを与えられていると言いました。

 ロシアのウィタリー・チュルキン大使(Vitaly Churkin)は、リビアでの軍事活動を許した国連決議1970と1973は厳密かつ正確に実行されなければならないと言いました。「我々はより民間人の犠牲をもたらしつつある軍事紛争が増す傾向について懸念しています」。


 チュニジア国境の話は急に起きたのではなく、内乱が起きてから続いていたようです。カダフィ軍が南部でNATO軍に攻撃されたこともありますから、この方面でも鎮圧作戦を展開中であることは分かっていました。

 チュニジアとの問題がどんな内容かが、今回分かりました。これが大きな問題へと発展する恐れはありませんが、カダフィ軍が見境なく行動していることを教えてくれました。デヒバとワジンの間は直線距離で8.5km程度で、国境線からデヒバまでは4km程度です。カダフィ軍がチュニジア領内に入るには、チュニジア政府の了承が必要でした。犯罪者などの追跡のために、一時的に越境することは認められていますが、侵入距離と部隊規模が大きすぎます。

 バイアグラの話は、今後、事実が証明されていくかどうかが疑問です。すでにリビアの女性から強姦の件は出ていますが、現段階では十分に確認されていません。常識的には、軍がバイアグラを配布して、強姦を奨励することは考えられません。軍事的には何の意味もないからです。普通、戦地での強姦は一部の兵士が行う犯罪行為に過ぎません。反政府派に懲罰の意味を込めて行ったとしても、それは反政府派の怒りを増すだけです。また、国際法上の処罰対象になり、カダフィ大佐の安全な亡命も可能性がなくなります。しかし、アフリカに関しては、常識を越えた話をしばしば耳にしますから、完全に否定する気はありません。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.