アフガン軍の給与横領事件で有罪判決

2011.5.30


 military.comがアフガニスタン軍の給与横領事件について報じました。横領は脱走した兵士がいることにしたり、ボーナスを流用することで行われました。

 アフガン北部の基地で、14人の兵士が22,000ドルの給料を横領した件で起訴されました。4月に裁判で10人が有罪になり3人が2〜3年の禁固刑を受けました。3人とも控訴する予定です。

 アブドル・ワキル大尉(Lt.AbdulWakil)は、2010年の終わりに、情報提供者がマザリシャリフ(Mazar-i-Sharif)の第5コマンド大隊基地で給料がいくらか盗まれていると警告したときに疑いを持ち始めました。ワキル大尉は基地司令モハマッド・バジル中佐(Lt.Col.MohammadBasir)に話しました。「彼は聞くのを拒否しました。彼は何も問題はないと言いました」と彼は述べました。

 ワキル大尉は独自に調査し、基地の給与書類を調べ、おかしなことが浮かび上がりました。脱走はアフガン軍では珍しくなく、兵士は3年契約をして、満足するといなくなります。しばしば彼らは数ヶ月間脱走します。通常、部隊の給与はこうした変動を反映します。しかし、第5コマンド大隊は脱走がなく、誰も逃げたり、戻ったりしていませんでした。ワキル大尉は銀行に電子メールで送られたスプレッドシートと公文書のコピーを比較しました。脱走兵の銀行口座は現役兵のに変えられていました。

 ワキル大尉は証拠を上官に示し、6月末に調査を開始しました。彼が金の行方を追跡し、金を受け取った者と金額を解明するのに数ヶ月かかりました。その間、彼は上官から責められました。バジル中佐は申し立てはあり得ないことだと言いました。

 コンピュータ化された直接入金システムは、詐欺を防ぐために設置されました。以前、上官は部下の給与を密かに盗んでいましたが、いまは給料は兵士の銀行口座に直接入金されます。「誰も銀行のシステムを知らないから、問題が分からないのです」とワキル大尉は言いました。

 ある夜、ワキル大尉は電話で起こされました。電話をかけた者は調査を知っており、「軍事法廷から出てきた時にお前を殺す」と警告しました。ワキル大尉はその週に3件以上の死の脅迫を受けました。それから、彼は文章での脅迫を受けるようになりました。ある送り主は、20人のタリバン兵に彼を追い詰めるように協力を求めたと言いました。「この手のことはアフガンで起こります」「私は自分の仕事をしなければなりません」とワキル大尉は言いました。

 この事件の犯人は、大隊の主計将校シャムスディン中佐(Lt.Col.Shamsudin)と、彼の指揮下の若い軍曹、アーマド・ジャウェド(Sgt.AhmadJawed)とヘムラン(Sgt.Hemran)でした。シャムスディンは禁固3年。ジャウェドとヘムランは禁固2年とされました。他に、職務怠慢で有罪のバジル中佐を含む7人が有罪となり、6ヶ月から1年間、基地に立ち入り禁止と減俸を命じられました。シャムスディン、ジャウェド、ヘムランは、彼らが盗んだ金の2倍の4,000ドル、19,000ドル、7,400ドルの罰金を科されました。


 事件に直接関係あるところだけ紹介しました。関係者のコメントなどは省略しています。

 この事件は問題ですが、以前に比べたらよくなったのかも知れません。イスラム国では、装備品を部下に売って上官が商売をしたり、部下が給料の一部を上納するのが当たり前です。以前にも給料の着服を防ぐために携帯電話を使うシステムが使われましたが、それでも事件が起きました(記事はこちら)。それに比べたら、いまはスプレッドシートや電子メールを使い、隊員に銀行口座を持たせ、不正を防ごうという動きがあります。でも、横領を働いて停職で済むのは、我々の常識を越えています。その点がむしろ問題なのかも知れません。


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