十年以内にアフガン警察の自立は無理?

2010.4.2


 military.comがアフガニスタン警察が資材不足にあえいでいる様を報じています。

 カブールで警察が犯罪を捜査するとき、警察官は私物の携帯電話で現場の写真を撮影し、それを首都の市場でプリントしています。警察署にはカメラもコピー機もありません。長いこと、彼らの給料はタリバン戦士よりも安く、彼らを守る装備も十分ではありませんでした。ドイツによるアフガン警察を進歩させる計画は失敗に終わりました。「アフガンにおけるヨーロッパ連合の警察任務(EUPOL)」の教官アンドレアス・ラドウィグ(Andreas Ladwig)は、2〜3年で警察の状況はよくなったものの、まだ問題だらけだと言います。十分な装備、十分な警察署、十分な武器がなく、ほとんどすべてが不足しているといいます。ラドウィグが検問所を回ると、警察官から約束された防弾ベストが届いていないと不満をぶつけられます。こうした話は割り引いて聞かなければならない、とラドウィグは言います。ほとんどの装備は届けられているのですが、誰かが売ってしまうために姿を消すのです。EUPOLによると、武器についてもこれは真実です。いつになったら、アフガン警察が外国の援助なしに治安を守れるようになるのかについて、ラドウィグは10年以内には無理と答えました。2014年までに、アフガン警察は134,000人になるはずですが、現在は96,000〜98,000人の間です。アフガン内務省は本当に任務を行っている警察官の人数を調査しています。何度も繰り返し、警察官は脱走し、武器を持ち去っています。警察官の16%が薬物検査で陽性反応を示し、半数は読み書きができません。汚職は最大の問題で、12月にはタリバンの給料に張り合えるだけの給料を出すようになり、80ドルの月給を200ドルへ、危険な任務には40ドルのボーナスをつけることになりました。過去に、こうした給料は受け取るべき人に届かないことがありました。現在、警察官はコード番号付きのテキストメッセージを電話で受け取り、電話ショップでコード番号を使って給料を受け取れます。このシステムにも不具合がありました。ある警察幹部が部下の携帯電話を53個集め、自分で金を受け取りに行ったのです。ショップの店主がこれを拒絶すると、幹部は店に放火すると脅しました。EUPOLの汚職対策部隊が彼を逮捕しようとしましたが、今のところ成功していません。人員不足のため、彼に交替する者もいません。カルザイ大統領の安全保障補佐官ランギン・ダファル・スパンタ(Rangin Dafar Spanta)は「過去8年間、軽視されたのはアフガンの機構を強化・建設することでした。我々は彼らが十分な教官を派遣するのを、2年以上あてもなく待ちました。彼らは約束したものを送りませんでした」と言いました。EUPOLは3年前にドイツから警察を再建する任務を引き受けましたが、今でも計画では400人いる警察官と教官は290人しかいません。ドイツ独自とNATOの警察訓練計画、アメリカが最大の2,000人を派遣したもまた、計画よりも小さい人員で実行されました。アメリカは独自の訓練計画をNATO外部でも行っています。一部のヨーロッパ諸国がEUPOLに貢献していないという批判がある一方で、EUPOLが担う前にドイツが任務に失敗したと批判されました。EUPOL広報官のハラルド・ヘンデル(Harald Haendel)は、ドイツが重要な基礎工事をしたけども、年間1,600万ドルの予算と40人以下の教官では任務に不適切だったと言います。

 この記事には呆れました。アフガン警察の実態は以前から分かっていたはずです。かつてイギリスはアフガンでロシアと派遣を競いました。ソ連はアフガンに侵攻し、そうした過程で、アフガンに関する様々な情報がヨーロッパに流れたはずです。いまさら、こんな問題があるからアフガン警察を強化できないと言われても、許容するわけにはいきません。そもそも、そんな自信や見通しもなく、アフガンに武力侵攻する方がおかしいのです。派遣できる教官がいませんと言う前に、アフガン警察の訓練計画を立てたときに、それが可能かどうかを考えなかったのでしょうか?。こんなのがヨーロッパの実力なのです。対テロ戦は何もかもが場当たり的です。自分たちは文化レベルが高いから、文化レベルが低い国で簡単に成功できると自惚れているから、このような失態を繰り返すのです。アフガン警察の費用は日本も負担しているのです。これでは、金を出し続けても意味がありません。なぜ、こういうことが議論の中心にならないのかが疑問です。対テロ戦は各国がテロ対策をやっていることを証明するという「見栄」のためにだけ実行され、本当に有効な手はほとんど打たれていないのです。そして、その狭間に民間軍事会社という奇妙な営利団体が介在しています。このだらしのなさこそが、対テロ戦の本質かも知れません。


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