マケイン議員が拷問の支持者たちを批判

2011.5.14


 military.comによれば、北ベトナム軍の捕虜として5年半を過ごした経験を持つ共和党のジョン・マケイン上院議員(Sen. John McCain)が、上院で行った演説の中で、拷問がテロリズムとの戦いにおけるアメリカの成功だという意見を否定しました。

 オサマ・ビン・ラディンの住居を突き止めるのに、水責めによってアルカイダのナンバー3、ハーリド・シーク・モハメッド(Khalid Sheikh Mohammed)がビン・ラディンの住居へ通じる情報を提供したという、マイケル・ムケイジー前司法長官(Attorney General Michael Mukasey)やその他の意見は間違っていると言いました。

 彼は、CIA長官のレオン・パネッタ(Leon Panetta)に事実を質したところ、ビン・ラディンの追跡はモハメッドの新しい情報から始まっていなかったと言いました。実際、ビン・ラディンの連絡係、アブ・アーメド・アル・クゥエイティ(Abu Ahmed al-Kuwaiti)の名前は別の国に拘留されていた者から得られました。「ビン・ラディンの連絡係、アブ・アーメドにつながる鍵を我々に提供したのは、シーク・モハメッドへの拡張型尋問テクニックの使用だけではありませんでした。それは実際には本物ではない、誤りを導く情報でした」と、マケイン議員はムケイジーに誤りを正すよう求めました。

 ニューヨークの法律事務所のムケイジー前司法長官への問い合わせには直ちに返答がありませんでした。

 先週、下院国土安全保障委員会議長、ピーター・キング下院議員(Rep. Peter King)は、アメリカはビン・ラディンに直接つながる不可欠な情報を水責めから得たと言いました。マケイン上院議員は、溺死をシミュレーションする水責めとあらゆる形の拷問戦術に反対しました。彼は、それらがアメリカ人に対して使われかねず、それらの使用は国家の性格と評価を傷つけると言いました。

 「私は、それらのテクニックの提唱者が主張するように、テロリストとの戦争における我々の成功に必要だとは考えません」「究極的に、これはモラルの問題です。ここで危険にさらされているのは、その真義が世界に刺激を与えた、その国民の心に染み込まされた真実、どんなに我々が激しく戦うかや、どんなに我々の敵対者が危険かに関係なく、敵を打ち負かす過程の中で、我々は最も大事な真義を譲歩しないという、アメリカという概念そのものです」「我々はアメリカであり、我々は我々自身をより高い基準に保持します。これが本当に危険にさらされているものなのです」。

 マケイン上院議員は、米当局が過去に尋問戦術を用いたのを追求する考えは否定しました。


 私はマケイン議員の発言を褒めることは少ないのですが、今回は称賛します。

 ブッシュ政権の支持者たちから、ビン・ラディンの居場所を突き止めた後で、その手がかりが水責めから得られたという見解が示されたことは、3日に紹介しました。(記事はこちら

 水責めは国際人道法(ジュネーブ条約)に違反し、そのために米軍では拷問は許可されていません。米軍では捕虜に対する尋問についても規則があり、人権を尊重します。しかし、CIAは軍隊ではないので、拷問を行っても責任を追及されません。国際法のグレーゾーンを利用して、アメリカは拘束したテロリストに拷問を行ってきました。一時は民間軍事会社が拷問を行っていたことも分かっています。彼らは元CIAの工作員ですが、一切の責任を問われていません。

 第2次世界大戦中、日本軍の捕虜になった米兵は、大半は悲惨な体験をしました。有名なのはバターンの死の行軍ですが、米兵の体験談の中で、日本軍の手荒い捕虜の処遇はあまりにも多いのです。食事の量は少なく、捕虜たちは収容所の中で畑を作り、野菜を補っていました。極度のビタミン不足で目が見えなくなった者もいました。映画「戦場にかける橋」の中には、日本軍が赤十字社から送られた慰問品を捕虜に与えるシーンがありますが、実際には慰問品はすべて日本軍が取り上げていました。戦争があと1年続いていたら、捕虜の大半は死んでいたと書いている本すらあります。

 アメリカがテロリストに対する拷問を認めるのなら、こうした日本軍の犯罪行為をアメリカが批判することはできなくなりますよ、と私はアメリカ人に言いたいと思っています。

 また、拷問を行うと、相手が嘘を教えてやろうと考え、偽情報を聴取しがちといわれます。実際、アル・クゥエイティの名前は、通常の尋問の際に得られています。このことは報道記事を普通に読めば分かることですが、司法長官を務めるような人物でも読み違えるのです。拷問を行ったことで批判され続け、鬱積が溜まっていたので判断を誤ったのでしょう。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.