東電が1号機の炉心溶融を認める

2011.5.13


 いまや日本の専門家の中で一番信用がないのは原子力の分野の人たちだと言われても仕方がない状態になっています。

 福島第1原発の調査が進につれ、状況がさらに悪く、謎も増えたことが分かってきました。

 9日に4号機の爆発が水素爆発ではない可能性を東京電力が認めました。昨日は1号機の燃料棒が全部融け、圧力容器の底に穴を開けたことをやっと認めました。

 この可能性は、事故直後から懸念されていました。私は12日の段階で、圧力容器に注水しても水位が下がってる点から炉心溶融の可能性を指摘しました(記事はこちら)。しかし、公式にはその可能性はないとされてきました。

 おまけに、実は水位計は正しい値を示しておらず、水は圧力容器の底の方にしかなく、燃料棒は完全に露出していたとみられます。このために、高熱で燃料棒が融け、圧力容器下部に落下したのです。格納容器に穴が開いている可能性もあるということです。

 専門家の皆さんは「チェルノブイリとは違います」「制御棒は挿入済みです」「炉心は止まっています」「圧力容器は丈夫で壊れません」と言っていましたが、全部間違っていたのです。「5重の壁」があるとされる原発の防護態勢の全部が壊れたのです。

 1号機の燃料棒が融けたのなら、制御棒は燃料棒に正常な形で挿入されておらず、再臨界の可能性があります。燃料棒と制御が今どうなっていると考えられるのか、直ちに明らかにすべきです。圧力容器の穴は数センチといわれていますが、私はもっと大きいのではないかと思っています。

 なお驚くのは、この状況が明らかになったいま、次に考えるべきは3号機のことなのに、話が1号機で止まっていることです。

 3号機は1号機よりも出力が大きく、そのために水素爆発の規模も大きかったとされます。私は3号機の爆発は建屋内での水素爆発ではなく、格納容器の中で起きたのではないかと疑っています。1号機で圧力容器の溶融が起きたのなら、3号機でも起きていると考えるべきです。

 それから、4号機の使用済み燃料プールの爆発が水素爆発でないという見解も理解できません。4号機は建屋の比較的上の方が壊れており、建屋内の上部に充満した水素が爆発したと考えて差し支えないと思っていました。水素爆発でなければ何なのでしょうか?。他に爆発するものが、建屋の中にあったと言うのでしょうか?。

 東京電力の言うことは、私が考えることとかなり違います。おそらく、多くの方が東京電力の発表に首をかしげているものと想像します。

 政府の関連部署もそうですが、状況が完全に確認されるまで認めないという方針が、放射線という危険なものを扱う分野で常識となっているのはおかしいことです。これでは後手に回るのは当然です。

 放射線は測定しないと被曝の度合いが分かりません。だからこそ、神経質に状況を認識・対処しなければならないのに、確認できるまでは事実がまったく存在しないと考えるべきではありません。これは飛行機が墜落しない限り、異常に無頓着というのと同じです。パイロットが他の航空機と衝突するまでは、レーダーを確認しないというのと同じ方針が正しいと考える人はいません。医療機関でも、患者に誤って投薬しないように、患者にバーコードを印刷したリストバンドをつけさせ、投薬ミスを事前に防いでいます。原子力の専門家たちは、状況認識において少しでも想像をまじえることを恥と考えるのでしょうか?。3号機も炉心溶融を確認するまでは、それが起きていないと考えるのでしょうか?。「フェイルセーフ」哲学は、なぜ原子力の分野では無視されるのでしょうか。

 この調子では、日本国民は気がついたら「すでに被曝してました」ということになりかねません。専門家と言われる人たちが危機管理をまったく考えないのは、もはや犯罪です。

 それから、最近、準禁治産者といえる人が福島第1原発で働くことになったという話を耳にしました。本人がそう言ったのを伝聞で聞いたので、採用の事実について確認はしていません。当然、原発での勤務は未経験の人です。北海道のハローワークを経由しての採用です。現場はどうなっているのでしょうか?。経験者が次々と被曝して、現場に行けなくなっているのでしょうか?。


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