米原子力規制委員会の懸念

2011.3.21


 最悪の状況は一応は脱したので、今回はまだ未整理だった情報について書きます。

 19日付けの記事で、読売新聞の記事では、地震で共用使用済み燃料プールの水位と温度が計測できなくなっていると書かれていると書きました。この点について、IAEAの報告が食い違っている点を電子メールで質問しました。20日付けの更新で、これに対する回答と思える記事が載り、分かりやすいように太字にしておいてくれました(記事はこちら)。

日本の当局は、核燃料集合体が完全に水で覆われており、協定世界時3月20日00:00の時点で温度は摂氏57度であることを確認しています。

 読売新聞の記事は18日付けで、共用使用済み燃料プールの水位と温度が分からなくなったことが判明したのは17日だったと書いています。以下にそのまま転載します。

東京電力福島第一原発には、6基ある原子炉建屋の使用済み燃料プールとは別に、約6400本もの使用済み燃料を貯蔵した共用プールがあり、津波で冷却装置が故障したまま、水温や水位の変化を把握できなくなっていることが、17日わかった。

 読売新聞の記事について、地震以降にデータが計測できていないとしかIAEAに説明しなかったので、上のような説明になったようです。

 20日付けの記事で紹介した、米原子力規制委員会での米原子力規制委員会(NRC)のグレゴリー・ヤズコ委員長(Gregory Jaczko)と議員たちとの討議を読んでみました(pdfファイルはこちら)。

 基本的にこの討議は、日本での事故を受けて、アメリカの原子力発電所が安全化ということに焦点が絞られています。最初にヤズコ委員長が声明文を読み上げ、その後で議員との討議が行われています。まずはヤズコ委員長の声明から福島第1原発の事故に関する部分を抽出しました。

私は、できるなら、我々が日本の原子炉の現状と信じるものの最新の概要を皆さんに差し上げたいと思います。基本的に、我々が現在できる限りモニターしている4基の原子炉があります。それらはすべて福島第1発電所にあります。これらの原子炉の3基は地震当時運転中であり、彼らの通常の手順により停止されました。

我々はこれらの3基の原子炉全般は、津波の後で稼働を成功させる施設外の電力の喪失と施設内のディーゼル発電機の不能から結果として生じた不十分な冷却から、ある程度の炉心損傷を被ったと考えます。

我々は、これら3基の原子炉について、注入されている海水が冷却を安定させていると報告されています。主要な格納容器は機能していると評価されます。

現在、私はこの発電所の2号機について、我々は……我々は炉心冷却が安定していないと考えていることに注意しています。それでも、この発電所については、我々は現時点で主要な格納容器は機能し続けていると考えています。私は2号機について、我々が使用済み燃料プールの水位が減少していると考えていることに注意しています。

3号機は、我々は使用済み燃料プールの完全性が信頼できなくなっており、ジルコニウム合金と水の相互作用があると考えています。

現在、事件当時に運転していたこれら3基の原子炉に加え、4号機についても現在、懸念されています。この原子炉は地震当時に停止されました。現時点で我々が考えるのは、このユニットでの水素爆発は燃料プール内の燃料の露出が原因だということです。

我々は第二の格納容器が破壊され、使用済み燃料プールの水が空になっていると考えています。さらに、我々は放射線レベルは極めて高く、是正措置を取る能力に影響を与えかねないと考えています。

この発電所の残る2基の原子炉について、我々はその上に、この使用済み燃料プールの水位が少し下がったというIAEAの報告書を持っています。最後の原子炉については、我々は現時点でいかなる重要な情報も持っていません。

最近NRCは、我々が得る入手できる情報、米国内での類似する状況に基いて勧告を行い、我々は現在日本で提供されているよりもずっと大きな半径で避難することを勧告しました。この勧告の結果として、駐日大使は米国市民に、我々は最大約50マイルまでのより長距離で避難するのが適切だという声明を出しました。

 「第二の格納容器」は国内報道でいう「建屋」のことでしょう。

 こうした判断をどのような根拠で行ったのかについて、フレッド・アプトン下院議員(Representative Fred Upton)との質疑が明らかにしています。まずは、ヤズコ委員長がどんな情報を持っているかを示す問答があります。

アプトン あなたは4基の異なる原子炉容器と4号機の状態について述べました。あなたは水素爆発が原子炉4号機のどこで起きたかを知っていますか?

ヤズコ 現時点で、我々は特別な情報は持ちませんが、その原子炉の使用済み燃料が冷却を失い、ある時点から後は、ある程度の水素を生み出していたとみられるので、我々は水素爆発がある時点で起きたと考えています。そして、それが結果として蓄積し、爆発を導きました。

アプトン その爆発は今日ですか? 米国時間で今日ですか?

ヤズコ いいえ。数日前に起こりました。我々はそれを知れば、すぐに正確な日時をお教えできます。

 この程度の情報なら、国内報道を見ていれば分かります。彼らもそれほど多くの情報は持っていないようです。

 ヘンリー・ワックスマン下院議員(Representative Henry Waxman)との問答は、50マイルという批判半径の根拠について、やはりヤズコ氏は我々が知らないようなデータは持っていないことを明らかにしています。

ワックスマン さて、あなたは50マイル以内の米国市民に避難を勧告しました。あなたにこの勧告をさせたリスクは何ですか?

ヤズコ それはこの発電所の現状の評価に基づいています。使用済み燃料プールの損害から、我々は非常に高い放射線レベルが発電所周辺にあると考えています。

 そしてもし原子炉が、3基の原子炉が運転中が、それらがバックアップに次ぐバックアップ以上のもので運転しているとすれば、冷却システムが安全でも、何か問題が起きても、緊急作業員が発電所の中に入り、冷却を管理するのを助ける緊急行動を取ろうとするのは非常に難しいのです。

 だから、冷却機能が失われるかもしれず、もし失われたとすれば、それらを交換するのは難しく、それは燃料にさらなる重大な損害を与え、潜在的に何らかの形で放出されることがありそうなのです。そこで、ここ米国内での類似するシステムの状況と良識を持って比較して、より長い距離での避難を考えられるのです。

ワックスマン それでは、水が燃料棒を覆っている4号機の使用済み燃料の問題が現時点で最大の懸念なのですね?

ヤズコ 私はそれは本当は、要素全体のすべてと考えます。それはコンビネーションなのです。御存知のように、これはさらに発展する可能性があります。私が述べたとおり、我が国では、我々は恐らくより長距離での避難を発表するには良識的な手順をとるでしょう。

ワックスマン 高レベルの放射線がプールから放出されているのは間違いありませんか?

ヤズコ 我々は発電所周辺に、高レベルの放射線と考えています。繰り返しますが、我々は非常に限られたデータしかなく、私は憶測をしたくありま……。

ワックスマン その重大さはなんですか?

ヤズコ 重大さは……なによりも、緊急作業員が原子炉の近くに行くことを非常に難しくするということです。彼らが経験する放射線量は非常な短時間で潜在的に致死の放射線量です。だから、それは非常に重大な展開であり、主に、委員会が行った声明を出させたものです。

ワックスマン そして、彼らができなければ、もし緊急作業員が彼ら自身の危険のために中に入れなかったら、その後に使用済み燃料の問題に対処することに何があり得ますか?

ヤズコ 繰り返しますが、私はまたあまり推測をしたくありません。我々は現地の状態について直接の情報を持っていません。しかし、それは非常に難しい状況であり、対処される必要のあるものです。

ワックスマン あなたはこれらの施設に深刻なリスクを表明しています。あなたが考える最大のリスクと理由を表明できますか?

ヤズコ 日本の発電所のですか?

ワックスマン そうです。私はいま最初から状況を、原子炉を……地震の時点で運転中だった3基の原子炉を冷却し続ける努力を考えます。そして、それは今、異なる様々なシステムでなされています。そしてまた、それらが多くの電力と施設外の電源能力を失ったために、より非伝統的な手法で。

 加えて、別のリスクが本当に、最大で発電所の6基の原子炉の使用済み燃料プールの中にあるかも知れない使用済み燃料にあります。だから、それらのプールを水で満たし続け、燃料も冷えたままにすることも、主要な懸念です。

 そのうえ、他の危険は、本当に、サイトにおそらく原子炉のうちの最高6台のために使用済燃料プールであるかもしれない使用済燃料にあります。

 さらに、それらのプールを水で満たしておいて、その燃料を涼しくしておくことも、結局は主要な懸念です。

ワックスマン ユニット自体の中、収容容器の中……格納容器の中の亀裂の報告の重要性は何ですか?

ヤズコ 明確にします。確実に、私が言及した兆候は亀裂でした。恐らく、別のユニットの中の1つの使用済み燃料プールです。そして、その重要性は、もし亀裂があるのなら、それからプールから水が抜ける可能性があり、おそらくプールの適切な水位を維持することができなくなり、それはプールの中の燃料を損傷させるかも知れません。

ワックスマン いま、日本にとって最善のケースは何で、最悪のケースは何だと考えますか?

ヤズコ、私は……間違いなく、努力は原子炉の冷却を提供し続けることと使用済み燃料プールに冷却を提供するためにできることはすべてやることだと考えます。繰り返しますが、私は何が起こるかについて推測をしたくありません。御存知のように、それは非常に劇的な状況であり、ご承知の通り、特に米政府の努力と共になされた確実に多くの努力があります。

 私は本当に米政府の対応だと強調したいのです。NRCは小さな役割を果たしていますが、別の資産が米政府の別の部分から配置され、この冷却を提供するのを助けており、我々にできることをやっています。

 ロイス・キャップス下院議員(Representative Lois Capps)との問答の中でも、ヤズコ委員長はデータ不足を口にしています。

キャップス (前略)あなたは日本の4号機は、そこの事件の中で、使用済み燃料を取り囲む4号機の水がなく、3号機は水源を失う危険にあると言いましたか?

ヤズコ 我々は、現時点で4号機は重要な資産を失い、すべての水を失ったかも知れないと考えています。

キャップス そして3号機は危険なのですか?

ヤズコ はい。我々が3号機について知っていることは……繰り返しますが我々の情報は限られており、だから我々は……はい、我々は3号機の使用済み燃料プールにも同様に亀裂があり、それはプールの水を失わせるかも知れないと考えています。

 考えていると混乱してきますが、ヤズコ委員長らNRCが持っている情報は我々ともそれほど変わるものではないようです。

 ここまで書いていたら、IAEAから非常に詳しい返事が電子メールで届きました。とりあえず、それを読んでみたいので、今日はここまでにします。



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