韓国軍の砲撃は外れたのか?

2010.12.2

 各メディアが韓国軍の砲撃の戦果について報じていますが、内容がかなり異なっているのが特徴的です。

 読売新聞は韓国軍が発射した80発の内、着弾点が確認されたのは45発で、残りの35発は海に落ちたというハンナラ党の金武星(キム・ムソン)院内代表の見解を伝えています。金院内代表は、砲台に命中したのは1発もなく、周辺の田畑に着弾し、田畑が少し乱れた様子しか確認できないと述べました。

 しかし、朝鮮日報によると、金院内代表を含むハンナラ党の出席者は、国家情報院の元世勲(ウォン・セフン)院長の説明を聞いて憤慨し、国会情報委員会を中途退席しています。説明をすべて聞いておらず、怒りにまかせて発表した可能性もあります。陸地に命中した45発について、元院長は「ケモリ基地側に30発、茂島基地側に15発が着弾」と説明し、残りの35発については確認中としました。会議に提出された商用の衛星写真では、14発が近くの田畑に命中しているのが確認されたとのことです。

 聯合ニュースは同じ日の会議で、韓国の偵察衛星「アリラン」が撮影した写真1枚、商用衛星が撮影した1枚の写真を公開されたと書いており、ハンナラ党の議員がすべての写真を見ていない可能性を示唆しています。同委員会の権寧世(クォン・ヨンセ)委員長によると、10発は茂島の基地内に着弾し、1発が幕舎のすそ部分に命中、100メートルほどの間隔で位置する2個軍幕舎の間、1個軍幕舎の横などに集中して落下しており、弾着地点と幕舎の距離は50メートル以内とのことです。

 以上から、読売新聞の記事は信用できないと判断できます。ハンナラ党議員はもう1枚の写真を見ておらず、理解が不十分です。また、榴弾砲の平均的な命中精度から考えても、聯合ニュースの記事が一番正しいと思われます。茂島に落下した砲弾は平均的な性能を示していると言えます。命中弾がどれだけの被害を生むかは運に左右されることです。

 Google Earthの衛星写真は残念ながら解像度が低く、不鮮明ですが、茂島とケモリの両基地の様子は大体分かります。気になるのは田畑に落ちたという14発です。茂島基地に軍が作っている田畑があり、そこに落ちたのなら分かりますが、ケモリ基地の田畑は付近の農家のもので、かなりの距離があるように見えます。そこまで着弾がずれたのなら、照準が間違っていたという気がするからです。先日指摘した「疑わしい砲撃地点2」の方はかなり近くまで農地があるように見えるので、こちらのことかも知れません(過去の記事はこちら)。

 しかし、目標を外したとしても、弾着が緊密ならば期待が持てます。照準が間違っていただけで命中精度は良好と言えるからです。ライフル射撃でも似たようなことがいわれます。照準がずれている精度の高い銃と、照準が合っている精度の低い銃では、前者の方が優れていると考えるのが常識です。前者は照準さえ合わせれば高性能銃になるからです。

 戦果に関する情報はまだ不十分です。さらに続報に注目していきます。



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