延坪島砲撃事件:不確実な情報に困惑

2010.11.25

 今日の午後に報じられた続報を見て、頭を抱えてしまいました。韓国軍の情報分析は真相と大幅に異なる場合もあり、信じすぎない方がよいと思っていますが、それにしても初期の発表と違いすぎます。いくつかの事実は白紙に戻して考え直す必要があります。

 韓国軍合同参謀本部は延坪島に配備した自走砲の6門が作動しなかったことを明らかにしました。先に破壊されたと報じられた2門の他に、午前中の射撃訓練で1門は砲身に不発弾が詰まり、動かせませんでした。修理に成功した1門があとで攻撃に加わったのは間違いがありません。

 当初、北朝鮮が使ったのは海岸砲と自走砲と推定されましたが、延坪島から122mmロケット弾の残骸が発見されたことにより、これは否定されました。ロケット弾の直径から122mmロケット弾であることは間違いがありません。すると、「BM-11」か「M-1985」が使われたことになります。BM-11はロケットの発射筒を15本持っていて、15秒間で30発を発射できます。これを何台かで同時に発射したので、海に多数が落下し、同時弾着射撃のように見えたのです。これは恥ずべき誤認と言うべきです。これでは北朝鮮の砲撃能力が低いとは言えず、韓国軍の情報分析能力が低いのは間違いがないとなってしまいます。

 先日来、ケモリとされる発砲地点として、私が疑っている場所が2ヶ所あります(kmzファイル)。使用した兵器が多連装ロケットランチャーだとすると、この推定に筋が通ります。この2ヶ所はglobalsecurityの240mmの「M-1985」の解説に載っている砲兵陣地の写真とまるで同じです。ページの下の方に掲載されているモノクロ写真とGoogle Earthの衛星写真を比較してください。

 また、使用したロケット弾がサーモバリック(高衝撃熱圧力)爆弾に似た特殊爆弾で、コンクリートを貫通して火災を起こすと韓国軍が説明しているとのことですが、これについてはもっと調査が必要だと考えます。すでに間違いがいくつも出てきているので、先走りせず確認を優先すべきです。韓国軍の自走砲に不発弾が直撃したといいますから、これは確実に調査できるはずです。

 北朝鮮が曲射砲ではなく、多連装ロケットランチャーを使ったことで、民間人を巻き込んでも構わないという意識をより強く持っていたことが明らかになりました。曲射砲は地図上の一点を基準砲が照準し、周囲に配置された他の砲が同じ設定で発砲することで、比較的緊密な弾着パターンを期待するよう設計されています。多連装ロケットランチャーは、より広い面を狙って広範囲に撃ち込むものです。韓国軍の砲兵隊や海兵隊の施設を多連装ロケットランチャーで狙っても、周辺の住宅にも落ちると考えるのが常識です。


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