詳細な応戦方針は必要か?

2010.12.1

 朝鮮日報によると韓国軍は「同じ武器での対応にはこだわらない」という新しい交戦規定を検討しています。

 現行の交戦規則や各部隊の作戦例規は、敵の攻撃に対応する際、同種・同量の武器を用い、2〜3倍の応射を行うことになっています。

 国防部は「現行の交戦規則の比例原則を積極的に解釈し、敵を懲らしめる条件を保障するよう補完する計画」という意向を示しめし、また、民間人に対する攻撃と軍に対する攻撃を区分し、対応レベルを差別化する方針です。

 延坪島での実弾射撃演習は近日中に行う予定で、今月6〜12日にかけては、韓国各地の海上29カ所で射撃演習が予定されています。

 それから、中央日報が次のようなタイトルの記事を掲載しました。「北朝鮮の1次砲撃、なぜ150発?…韓国軍の動向を徹底分析」。記事の一部に気になるところがあったので引用します。

北朝鮮軍の射撃時点は、延坪島海兵部隊の射撃訓練を把握していたという傍証と解釈されている。北朝鮮は韓国軍が砲身を南西側に向けていたスキを狙って、延坪島に無差別砲撃を加えてきた。


 韓国軍の方針の中に「懲らしめる」という表現があるのが気になります。単なる翻訳上の問題で、「思い知らせる」という意味ならよいのですが、「報復」を意味するのなら好ましくありません。

 先月25日にも少し書いたのですが、韓国軍の戦術は戦場を最大限に局地的にすること(25日の記事はこちら)。戦力の集中を最大限にすることの2点だと思われます。

 攻撃した敵部隊を攻撃するのは当然ですが、その部隊を支援する部隊が使うルートも攻撃し、援軍の来援を不可能にするまでの応戦とすべきです。一定時間、該当部隊を孤立化し、全滅させるほどの火力を集中します。韓国を攻撃すれば、関連する部隊は徹底的に壊滅されることを「思い知らせる」のです。

 この際、攻撃に並行し、戦場がどこかを北朝鮮政府、その他の外国に通知し、さらに該当地域にビラを撒き、どこが戦場になるかを民間人に告知します。攻撃においては、民間人に逃げ場がないような方法は避け、国際法を遵守します。侵攻作戦ではないということは、韓国軍内部にも徹底する必要があります。

 韓国が検討しているように、被害のレベルに応じて攻撃のレベルを決める必要はなく、攻撃を行ったら部隊を壊滅するまで続けるのがよいと考えます。国際的通念として、攻撃は相手と同じレベルで行うとはいわれますが、民間人を無差別に爆撃するとか、虐殺するわけではなく、攻撃を行った相手を壊滅するくらいなら問題はありません。それは加害行為を不可能ならしめるためだからです。

 今回の事件なら、茂島とケムドの基地を砲座、地下通路、建物を全部破壊するくらいの砲撃を行いケムド基地につながる道路や橋に砲爆撃を行う程度の攻撃となります。

 この戦術の目的は、北朝鮮軍に攻撃を行えば大打撃があることを教え、中国に武力介入の余地を与えないことにあります。これで万事解決ではないのですが、当面はこういう対応が必要と考えています。

 中央日報の記事は考えすぎと思われます。また、この事実をもって、島内にスパイがいたと考えることはできません。

 自走砲は砲を車両に載せているため、 短時間で砲の向きを変えられます。たとえ砲撃を受けても、すぐに反撃できるのです。2個中隊があるのなら、1個中隊を訓練にあて、もう1個中隊を待機させていればよいだけの話で、隙があったとすれば、それは韓国軍の問題です。

 実弾射撃の場所は安全保持の関係で、常に同じだったのではないでしょうか?。この他に、発砲しては移動する訓練が必要ですが、この場合は実弾は発砲せず、発射の手順を訓練するだけです。北朝鮮軍が何度も繰り返される訓練の様子を知っていたとしても、まったく疑問はありません。

 なお、両方の記事も数日中に読めなくなるはずなので、記事にはリンクを張っていません。



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