戦史研究家もM4小銃の欠陥を指摘

2009.10.13
追加 2009.10.14

 military.comがまた米軍の武器の問題を報じました。依然としてM4小銃がやり玉にあげられています。この問題はここで何度も繰り返して紹介してきました。

 2008年7月13日、アフガニスタンのワナット(Wanat)にあった米軍前哨基地で、小隊規模の米軍部隊と2ダースのアフガン部隊が数で勝る200人の武装勢力に侵略される危険にさらされ、9人が死亡し、27人が負傷しました。戦史研究家は、これが繰り返した武器の故障によることを見出しました。エリック・フィップス二等軍曹のM4小銃は、武装勢力が基地を包囲する前に沈黙し、それを捨てて機関銃をつかんだところ、それも動作しませんでした。今年10月3日には、ワナットに近いカムデッシュ(Kamdesh)で8人の米兵が殺されました。この戦いでは武器が故障した証拠はありませんが、気味が悪いほどワナットの事例と似ていました。米軍はカムデッシュの戦いの評価は進行中だと述べています。しかし、陸軍戦闘研究所(the Army Combat Studies Institute)のダグラス・カバイソン(Douglas Cubbison)がまとめた非公開のレポートのコピーがマスコミに漏れ、インターネット上に公開されました。レポートは、兵士が使った武器は慎重にメンテナンスされ、定期的に指揮官による点検を受けていました。しかし、銃は特にフルオート射撃の時に故障しました。カバイソンは高い発射速度が問題を起こした可能性を指摘します。兵士たちは銃身が白熱化するほど激しく反撃し、これが故障を引き起こしたとみられます。ジョナサン・エイヤーズ伍長(Cpl. Jonathan Ayers)とクリス・マッケイグ技術兵(Spc. Chris McKaig)は、隠れていた場所から立ち上がって半ダースを発砲し、また隠れようとしました。エイヤーズ伍長は敵弾に倒れ、マッケイグ技術兵の30発弾倉を取り付けたM4は問題を起こしました。戦いが始まって30分間で、12個の弾倉を撃ち尽くしたマッケイグ技術兵のM4小銃はオーバーヒートし、弾を装填できなくなりました。ジェイソン・ボガー伍長(Cpl. Jason Bogar)のM249機関銃も約600発を発砲したところで、装填不良を起こしました。ボガー伍長は戦死しましたが、誰も彼が死ぬところを見ていませんでした。陸軍はM4小銃は適切に掃除して、メンテナンスをすれば、最初の故障を起こすまでに3,000発以上を撃てると言います。特殊作戦部隊は自らの予算と、他の軍隊の武器を買う自由を認められており、M4小銃を新しい銃へ交換しています。

 カバイソン・レポートはまだネット上で見つけられておらず、全体像は分かりません。しかし、従来言われていた問題が繰り返し起きているのは間違いがないようです。ちゃんと掃除をしても、M4小銃は動作不良を起こすのです。どんな銃も装弾不良を起こすものですが、それができるだけ少ないのが望ましいのは当然です。また、あまり手入れをしなくても、常に正常に動くことが望ましいのです。多数の弾を短時間に発射した場合、加熱によって起きる部品の膨張により、装弾機構が動かなくなります。加熱の問題はあらゆる銃で起こります。まず、銃身の上に陽炎が立って照準ができなくなります。しかし、M4小銃は照準器が銃身よりもかなり高い位置につけられており、この問題は起こりにくいと想像できます。それ故に、兵士は連射を続け、装弾不良を起こしている可能性もあります。あるいは、従来言われるように、いくら掃除をしても、M4小銃はわずかな汚れで装弾不良を起こすのかも知れません。マッケイグ技術兵の状況を見ると、30発入り弾倉12個を30分間で撃ったわけですから、平均すると1分間に12発撃ったことになります。単発ならば5秒に1発撃つことになりますが、実際にはフルオートで12発を撃ったか、3発連射で4回のようにバースト射撃で発砲したと考えられます。この程度のバースト射撃なら焼き付きは考えにくいと思います。やはり、フルオートで12発くらいになると加熱が激しくなるのかも知れません。米軍は昨年、銃砲業界に新しい小銃の提案を求めています(過去の記事はこちら)。新しい制式小銃が決まるまで、この問題は決してなくならないでしょう。

追記

 知らせてくれた方がいて、カバイソン・レポートが見つかりました(pdfファイルはこちら)。別に陸軍の調査報告書もあり、サマリーがアップロードされています(調査結果のサマリー勧告のサマリー)。


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