白リン弾についての正しい解説

2009.1.16
修正 2009.1.18



 以下は、先日紹介したglobal-security.orgの白リン弾の解説の全訳です。白リン弾に関する情報の整理にご活用ください。訳文は最初に掲載した後で、もう一度修正しました。私の白リン弾に関する見解と共にお読みください。なお、読みの難しい漢字には読みがなをつけてあります。


白リン弾(WP)


 イスラエルは2009年1月、キャストレッド作戦の最中に、ガザ地区にあるハマスの標的に対して白リン弾を使用しました。これは国際法や条約に違反していません。

 白リン弾(WP)は、ウィリー・ピートとして知られ、信号、煙幕、焼夷の用途に使われます。白リン弾は敵の装備品を破壊したり、その視界を制限するために使えます。それは車両、石油、オイル、潤滑油(POL)、弾薬貯蔵地域、敵の観測員に対して用います。白リン弾は標的の位置特定やナビゲーションの補助として使えます。通常、白リン弾は爆薬によって散布されます。空中で爆発させたければ時限信管で起爆できます。白リンは第2時世界大戦中に、発煙弾、着弾マーカー、焼夷弾、手榴弾、発煙マーカー、有色の発煙筒、曳光弾(えいこうだん)のために軍用の定番手段として、最も頻繁に使われました。

 ファルージャの戦いは、2004年11月8〜20日まで行われ、最後の砲撃ミッションは11月17日でした。この戦いは陸軍と海兵隊、第1海兵遠征隊(IMEF)指揮下のイラク軍約15,000人によって遂行されました。米軍はファルージャの戦いにおいて、白リン弾が有益なことを見出しました。「白リン弾は効果的で多用途な弾薬であることが証明されました。我々はそれを2カ所の突破口訳注1において、発煙弾のミッションで使い、戦闘のもっと後で、塹壕線や地下トンネルにいる武装勢力に対して、HE弾訳注2が有効でなかった時、有効な心理的兵器として用いました。我々は武装勢力に対して、白リン弾で奴らを追い出し、HE弾で奴らをやっつける…「シェーク・アンド・ベーク」訳注3ミッションを行いました。我々は HC発煙弾訳注4がより効果的と思われる時は改良型白リン弾を発煙弾のミッションに使い、殺害目的のミッションのために白リン弾を節約しました」。

 白リン弾は合衆国が署名するどの条約でも禁止されていません。発煙弾と煙幕はそのまま化学兵器として軍用に用いられない素材のカテゴリーを構成します。合衆国は危険度の高い軍事目標に対して、現行の法律の下ですべての兵器の使用を律する均衡性原則訳注5と調和するやり方で、焼夷弾を使用する能力を保有します。白リン弾と燃料気化爆弾の使用は、「過度に傷害を与え、又は無差別に効果を及ぼすことがあると認められる特定の通常兵器の使用を禁止または制限する条約」、いわゆる「特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCWC)」第三議定書訳注6によって禁止または制限されていません。

白リン弾 − 焼夷弾

 白リン弾は、刺激性のニンニク臭を持つ、無職から黄色の半透明なワックスに似た物質です。軍隊で使われる形態は極めてエネルギッシュ(活動的)で、酸素に曝されると着火します。白リン弾は自然発火性の素材、つまり、自然に火がつきやすいのです。

 空気にさらされると、それは自然に着火し、すぐに五酸化リンへと酸化します。黄色の炎になり、濃く白い煙を発生する反応によって、熱が生み出されます。リンはまた暗闇では発光し、この特性は「曳光弾」に伝達されています。この化学反応は素材のすべてがなくなるか、酸素がなくなるまで続きます。白リンの15%以上は焦げたウェッジ訳注7に残り、フェルトが押しつぶされて、燃えなかった白リンが大気に曝されると再着火します。

 白リンは痛みのある化学火傷をもたらします。その結果生じる火傷は、典型的な黄色がかった壊死した部分、独特のニンニク臭として現れます。白リンは脂溶性訳注8が高く、粒子が皮膚の下に入り込むと、素早く真皮を貫通すると考えられています。その強化された脂溶性のために、こうした怪我は治りが遅いと多くの人が考えています。これについては十分に研究されていないため、白リンの火傷は小さく分裂した化学火傷を示し、そのすべては典型的に治りが遅いというのが、言えることのすべてです。

 白熱した白リンの粒子は大きな火傷を引き起こすかも知れません。皮膚上の白リンの火傷は深く、苦痛を伴い、固い焼痂(しょうか)訳注9を生じ、その周囲を小水疱が囲みます。この火傷は通常、数が多く、深く、サイズは様々です。目の中に入った固形物は重症を引き起こします。大気中の酸素がなくならないと、粒子は燃え続けます。こうした粒子に接触すると、部分的な火傷を負います。これらの兵器は、白リンがなくなるまで燃え続けるために、とりわけ厄介です。兵士が白リンの粒子に当たったら、それは骨に至るまで燃えるでしょう。火傷は通常、皮膚が露出した部分(上肢、顔)に限られます。白リンの素早い着火と高い脂溶性の特質のため、火傷は2度または3度になるのが普通です。

 白リンの燃える粒子が当たり、衣類にくっついたら、白リンが皮膚を貫いて燃える前に、素早く汚染された衣類を脱いでください。リンが皮膚を通って燃えるのを防ぐために、素早くリンがついたすべての衣類を脱いでください。もしこれが無理ならば、皮膚やリンがついた衣類を冷水の中に突っ込むか、火を消したり防ぐために、たっぷりと湿らせます。それから、すぐに付着した衣類を脱ぎ、皮膚の付着した部分を冷たい重炭酸ナトリウム溶液か、冷水ですすぎます。皮膚を湿らせ、(なるべく水の中で)目に見えるリンを角のある物(ナイフの背など)か毛抜きで取り去ります。指でリンを触らないでください!。除去したリンやリンが付着した衣類は水の中に捨てるか、適切な場所に置いてください。火傷は湿らせた包帯で包み、再び燃えるのを防ぐために湿らせ続けてください。もし必要なら、リンが大気に触れることで再着火するのを防ぐために、白リンで負傷した患者を生理食塩水をしみこませた包帯で包んでください。

 一部の国は、皮膚を0.5〜2.0%の硫酸銅液か、硫酸銅をしみこませたパッドで洗浄することを勧めています。利用できるなら、傷を0.1〜0.2%の硫酸銅液で洗浄してもかまいません。黒っぽい沈着物は鉗子で除去してもかまいません。銅中毒の明らかな危険があるので、硫酸銅剤が少しでも組織に長期間接触するのは避け、大量の水か生理食塩水で洗い流してください。すべてのリンを完全に除去するために、応急処置の方法を繰り返す必要があるでしょう。

白リン弾 − 発煙弾

 白リン弾は燃える時に煙幕を生成します。白リンの煙は様々な弾薬によって生成されます。M825(155mm砲弾)のような、こうした弾薬のいくつかは、爆発時に、不完全に酸化した白リンの粒子をまき散らすかも知れません。

 煙幕は視界をぼんやりさせ、兵士、装備、地域を探知から隠すために使われます。煙幕は市街戦の移動で欠くことができません。1994年12月、チェチェン共和国グロズヌイの戦いでは、ロシアの砲兵、迫撃砲の砲弾4、5発中1発は発煙弾か白リン弾でした。

 白リンと赤リンはリン酸を含む吸湿性の煙を生成して燃えます。赤リン(RP)は白リンほど反応しません。それは大気中の水分とゆっくりと反応し、煙幕は熱傷を生じず、そのために煙幕はそれほど有毒ではありません。こうした煙幕による吸光は、主に視界の散乱と赤外線(IR)の吸収を起こします。こうした煙幕は、周囲の相対湿度によって決まる周囲の湿気を吸収して、相対湿度に伴って平衡するサイズへ成長する球状の液体粒子で構成されます。大量の吸光は相対湿度によって著しく変化します。

 白リンの炎は熱、湿気を含む空気によりリン酸へ転換された五酸化リンの粒子から成る濃い白煙を生み出します。この酸は、濃度と被爆の期間により、局所的な炎症を起こすかも知れません。

 ほとんどの煙幕は隠蔽の目的に実用的な濃度では危険ではありません。しかし。濃度が十分だったり、被爆が十分に長ければ、どんな煙幕も危険になり得ます。医療要員は、こうした煙幕が戦場に放出されたら、軍用の煙幕に対する起こり得る対応に備えるべきです。濃密な煙幕に長期間曝されれば(特に放出物の源に近ければ)、病気を生じたり、死ぬことすらあります。

 戦闘活動において、白リン弾の煙幕で死者が出たことはありません。室温では、白リンはいくぶん揮発性があり、中毒性の吸入による負傷を引き起こすかも知れません。湿った空気の中では五酸化リンはリン酸を生成します。この酸は、濃度と被爆の期間により、局所的な炎症を起こすかも知れません。目の炎症と粘膜の炎症は最も一般的な負傷です。こうした症状は兵士が被爆している場所から移動することで自然に回復します。ひどく被爆すると、激しい咳が出て、ガスマスクの調整を難しくするかも知れません。白リンの煙幕に曝されたことによる死亡は報告されていません。一般的に、白リン弾の煙幕による炎症の治療は必要がありません。自然治癒は迅速です。

 白リンの炎は、眼瞼痙攣(がんけんけいれん)、羞明(しゅうめい)、流涙(りゅうるい)を含む重い目の炎症を引き起こし得ます。目の炎症と粘膜の炎症は最も多い負傷です。こうした症状は兵士が被爆している場所から移動することで自然に回復します。白リン弾の煙幕は中程度の濃度で目と鼻を刺激します。ひどく被爆すると、激しい咳が出て、ガスマスクの調整を難しくするかも知れません。白リンの煙幕に曝された結果の死亡は報告されていません。

白リン - 非軍事用途

 白リンが、ソフトドリンクから練り歯磨きまで、ほとんどすべての製品で使われているのは驚異的です。白リンは、肥料や食品添加物、洗剤で使うリン酸やその他の化学薬品を生産するために工業で使われています。少量の白リンが過去に殺虫剤や花火で使われました。

 近年、70〜75%の五酸化二リンを含有する濃度の高いリン酸が農業と農業生産に極めて重要になりました。世界的な肥料への要求は、記録的なリン製品を生みました。リンは特殊なガラスの生産に使われ、そうしたものはナトリウム灯で使われています。

 骨灰、リン酸カルシウムは質の高い陶磁器を創ったり、ベーキングパウダーで使われるリン酸一水素カルシウムを生産するために使われています。リンは鋼鉄やリン青銅、その他の製品を生産するのにも重要です。リン酸三ナトリウムは洗浄剤、硬水軟化剤としてや、湯アカの予防、パイプやボイラー管の腐食を防ぐのに重要です。

 米国法務省麻薬取締局(DEA)と全米の多数の連邦・地方法執行当局は、違法な塩酸メタンフェタミン製品に関する憂慮すべき風潮を指摘してきました。塩酸メタンフェタミン(別名、スピード、クランクまたはメス)は米国の主要な麻薬問題です。赤リンと白リン、次亜リン酸製品の販売に関係するすべての企業は、秘密のメタンフェタミン工場の運営者がこれらの製品を使っていることを承知すべきです。

白リン - 背景

 リンは元素で、その名前はギリシャ語の「phosphoros」、すなわち「光を運ぶ者」、明けの明星の古代名に由来します。ブラント訳注10は1669年にリンを尿から作り出して発見しました。リンには4種かそれ以上の同素形、白(または黄色)、赤、黒(または紫色)が存在します。普通のリンはワックス状の白い固体で、純粋な時、それは無色透明です。白リンは、転移温度-3.8oCにおいて、アルファとベータの2つに変化します。それは水に対しては不溶性ですが、二酸化炭素には溶解します。

 自然界では単独で存在せず、リンは広く鉱物と結合して分布しています。アパタイト鉱物や三燐酸カルシウムを含むリン鉱石は、この元素の重要な源です。巨大な鉱床がロシア、モロッコ、フロリダ州、テネシー州、ユタ州、アイダホ州、その他の場所に見出せます。

 白リンはいくつもの方法で製造できます。あるプロセスでは、リン鉱石の基本的な原料である三燐酸カルシウムを電気炉や燃料炉の中で炭素とケイ土と共に加熱します。元素のリンが蒸気になって解放され、強力なリン酸肥料を作る重要な化合物、リン酸として固まるでしょう。

白リン(WP) - その他の健康被害

 治療が管理されていないと全身毒性が起こるかも知れません。治療はリン酸を中和するために重炭酸塩溶液を局所的に用いたり、粒子の機械的な除去と創傷清拭から成ります。暗い室内でのウッド灯訳注11は、残っている発光性の粒子を特定するのに役立つかも知れません。リンによる全身性の中毒の初期兆候は、腹痛、黄疸、呼気のニンニク臭で、長期の吸入は貧血、悪液質、典型的には上顎と下顎骨の壊死(燐顎)を引き起こすかも知れません。リンの長期吸収は骨の壊死を引き起こします。それは肝臓毒です。

 過度に被爆した労働者の主な症状は歯痛と唾液分泌過剰かも知れません。口腔粘膜に暗赤色が現れるかも知れません。1本かそれ以上の歯が抜け、続いて痛みと顎の腫れが起こり、治癒は抜歯のような歯科的処置に従って遅れ、骨の壊死が起こり、腐骨は洞管の形に拡がるかも知れません。一連の10例において、骨の壊死をもたらしたリン煙への最短の被爆期間(濃度は未測定)は10ヶ月(2例)で、最長の被爆期間は18年間でした。

 兆候と症状は、目と呼吸管の炎症、腹痛、吐き気、黄疸、貧血、悪液質、痛み、歯の抜け落ち、唾液分泌過剰、顎の痛みと腫れ、皮膚と目の火傷を含みます。燐顎は骨髄炎とは区別されなければなりません。燐顎になると、骨の中に腐骨ができて、数週間から数ヶ月後に現れます。腐骨は軽量で、色は黄色から茶色、骨粗しょう症になってカルシウムが溶け出します。一方、深刻なブドウ球菌性骨髄炎による腐骨は、骨が鋭くて白い、密集した非常に固い針状体です。深刻なブドウ球菌性骨髄炎のX線写真は急速に変化し、厳密に臨床経過を辿りますが、燐顎では診断は多くの場合でX線写真の変化が認識できるようになる前から臨床的に明らかです。定期的に顎のX線写真を撮るのは適切な歯科診療ですが、経験は壊死がX線写真上に病理がまったく認識されずに起こり得ることを示しています。

以上

役註1 「突破口」について原文の引用部分に「breeches」(「砲尾」などの意味)と書かれています。これは出典の著者が「breaches」(軍事分野では「突破」を意味する場合が多い)と書くべきところを間違えたもので、原文通りに訳すると意味が通りません。このため訳者の一存で修正しました。
役註2 「HE」は「high-explosive(高性能爆薬)」。命中すると爆発する、最も一般的・汎用の砲弾。
役註3 原文では「shake and bake」。つまり、白リン弾で震撼させ、おびき出してHE弾で殺害するという意味。
役註4 ヘキサクロロエタンを使う発煙弾のこと。
役註5 ウェブスター・フォーミュラで主張された法概念。自衛戦争の攻撃の強度は、敵の攻撃に見合っていなければならず、行きすぎではいけないとする考え方。
役註6 原文には「Protocol II of the Certain Conventional Weapons Convention」と書かれており、特定兵器禁止条約の第2議定書を指していますが、本来、第二議定書はブービーとラップに関する規定です。明らかに「I」を1個タイプし忘れたものと考えられるので、訳者の一存で、焼夷兵器に関する規定である「第三議定書」へ修正しました。global-security.orgには、この件を通知済みです。
役註7 ウェッジはくさび形の物体のこと。白リンはフェルト製のくさび形のウェッジに染み込ませて砲弾に充填されています。
役註8 白リンが脂肪に溶ける性質。
役註9 熱傷皮膚。
役註10 ヘニング・ブラント。ドイツ人。錬金術師。1630年〜1710年。
役註11 長波長の紫外線ランプ。


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