テロ容疑者の拷問が裁判で不利に?

2008.5.22



 military.comによると、アフガニスタンとグアンタナモで行われた抑留者に対する厳しい尋問が、これから行われる裁判を危険にさらすかも知れないのに、政府高官がほとんど問題を取り上げようとしないことを、FBIは懸念しています。この記事を簡単に紹介します。

 司法省の監察長官グレン・ファイン(Inspector General Glenn Fine)は2003年に、グアンタナモで行われている尋問のやり方についての懸念を国家安全保障会議へ提出しました。コンドリーザ・ライスが議長を務め、ブッシュ大統領とディック・チェイニー副大統領は何の反応も示しませんでした。

 グアンタナモにはFBIとほかの政府機関の捜査官がおり、FBIの捜査官はほかの政府機関の捜査官が、通常は認められない方法で尋問を行っていたことに気がついていました。2002年後半に、軍は抑留者に覆いを被せ、ストレス下に置いて尋問する方法を用いるようになりました。抑留者に睡眠を取らせない。抑留者の手を長時間足に近い位置で手かせをかけたままにする。抑留者を極度に低温または高温の部屋に放置する。抑留者の親指をねじる。女性の尋問官が抑留者に性的なタッチをする。ダクトテープを抑留者の頭に巻くといった行為が目撃されました。CIAはアルカイダのトップメンバー、アブ・ズベイヤ(Abu Zubaydah)を水責めにしたことを認めています。911テロの容疑者のひとり、モハメッド・アル・カフタニ(Mohammed al Qahtani)は20時間眠らせず、犬を使って脅迫する方法が使われたといいます。FBIは事態を懸念しながらも傍観していたのです。水責めのような拷問方法は、のちに禁止されました。

 いずれもハリウッド映画が、ナチスの拷問方法として描写してきたテクニックばかりですが、2002年以降、アメリカ人が自分でやっていたという皮肉な話です。先日の子ども兵が今でも抑留されているという報道がなぜ問題なのかということが、この記事で説明されています。このような待遇を子どもに対してまで行ったとすれば、それはアメリカの根本的な理念に反するのです。さらに問題は深刻です。感情に走って行き過ぎた方法を使った結果、今後、行われる裁判で調書が証拠採用されない可能性があります。ほかの証拠で容疑者を有罪にできたとしても、その過程で、拷問の詳細が明らかにされ、アメリカは赤恥をかくことになります。

 日本はこうしたことを対岸の火事とみるべきではありません。テポドン1号、2号が発射された時の在日朝鮮人に対するヘイト・クライムが増加したことを思い出してください。映画「スターウォーズ」のヨーダが言う「恐怖は怒りに、怒りは憎しみに、憎しみは苦痛へとつながる」は単なる映画のセリフではなく、間違いなく真実なのです。

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