米軍が子ども兵、多数を収容所に拘束中

2008.5.20



 military.comによれば、米軍は、2008年4月の時点で、イラクにおいて約500人の子どもを、約10人をアフガニスタンのバグラム基地に「非合法な敵戦闘員」として拘束していることを認めました。

 2002年以来、総計で2,500人の18歳未満の若者が、100人を除いてはイラクで拘束され、1年かそれ以上の期間、拘留されてきました。グアンタナモ基地に8人の子どもが拘束されていましたが、2004年から2006年の間に解放されました。これは国連の子どもの権利委員会に対してアメリカが報告したものです。

 米軍は、拘束された子どもは、IEDを埋設したり、武装勢力のために見張り役を務めたり、米軍と連合軍に対して積極的な戦闘行為を行った者たちだとしています。多くは16歳か17歳と信じられています(中東では年齢がはっきりしない場合が多い)。

 この話を聞いて憤慨している市民グループがいると記事は書いています。18歳に満たない少年少女は、国連で制定された国際法「子どもの権利条約」によって守られることになっています。イラクやアフガニスタンはこの条約を批准しています。アメリカはこの条約を1995年に署名したものの、批准はしていません。署名は条約の内容を確認し、将来拘束される意志を示すものですが、議会の承諾を得て条約を締結した段階までは行っていません。記事には興味深いことが書かれています。署名はクリントン大統領時代に行われましたが、ヒラリー・クリントンとバラック・オバマも、この条約を強く支持しているというのです。次の大統領選挙で民主党候補が当選する可能性が非常に高いことから、子どもを拘束したことは、次期大統領が就任後に問題視されることになる可能性があります。

 拘束した子どもの年齢がはっきりしないことも問題です。記事には、軍の医師が16歳に満たない子どもが3人いたと考えていると書かれています。子どもの権利条約は、15歳未満の子どもが戦争に参加させることを禁じています。第38条には次のように書かれています。

第38条

  1. 締約国は、武力紛争において自国に適用される国際人道法の規定で児童に関係を有するものを尊重し及びこれらの規定の尊重を確保することを約束する。
  2. 締約国は、15歳未満の者が敵対行為に直接参加しないことを確保するためのすべての実行可能な措置をとる。
  3. 締約国は、15歳未満の者を自国の軍隊に採用することを差し控えるものとし、また、15歳以上18歳未満の者の中から採用するに当たっては、最年長者を優先させるよう努める。
  4. 締約国は、武力紛争において文民を保護するための国際人道法に基づく自国の義務に従い、武力紛争の影響を受ける児童の保護及び養護を確保するためのすべての実行可能な措置をとる。

 子どもを兵士にしたのは武装勢力であり、米軍でもイラク政府でもありません。アメリカはこの条約を守る義務はありませんが、子どもが軍に志願する場合、17歳に達していて、両親の許可がある者という条件を設けています。アメリカも子どもが無制限に軍人になることは禁じているわけですが、拘束した子ども兵を大人の武装勢力と同じに扱うことは、子どもの権利条約に明確に違反します。第39条に抵触するのです。

第39条
 締約国は、あらゆる形態の放置、搾取若しくは虐待、拷問若しくは他のあらゆる形態の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰又は武力紛争による被害者である児童の身体的及び心理的な回復及び社会復帰を促進するためのすべての適当な措置をとる。このような回復及び復帰は、児童の健康、自尊心及び尊厳を育成する環境において行われる。

 子どもの権利条約は戦闘が可能な年齢の若者を、捕虜として扱うのではなく、教育により構成させることを狙っています。アブグレイブ刑務所やグアンタナモ基地に武装勢力を拘束した時、当初、アメリカは彼らを捕虜として扱うという明確な決意を持っていませんでした。各方面から批判を受けて、あとからラムズフェルド国防長官が捕虜として扱うことを明言したのです。しかし、そこで抑留者がまるで人間扱いされていなかったことが暴露され、アメリカは内外から激しい批判を受けました。そうした場所に子どもを拘留していたことが明らかになった以上、彼らの待遇は大人の武装勢力と同じだったのではないかという疑問が生じます。情報を得るために厳しい尋問を行ったり、拷問を加えた可能性が考えられます。同じ年齢の子どもが米軍にいるわけですから、拘束した若者たちを兵士として扱い、大人と同じ尋問・拷問を行った可能性は否定できません。また、年齢がはっきりしないのを幸いに、15歳未満の子供を抑留した可能性も考えずにはいられません。

 現状では、アメリカに子どもの権利条約を遵守する義務はありませんが、それ以前に、こうした事態はアメリカ人のプライドを傷つけるでしょう。それはアメリカ人が子どもの教育に対して非常に意識が高いからです。こうした社会では、今回のような事態は許されざることです。

 今月22日に、子どもの権利委員会は米政府にこの件について質問を行う予定です。そこで、どのような扱いをしていたのかが明らかになるでしょう。

 子ども兵は人手が足りない時に徴用されるものですが、なぜか足手まといとされて、悲惨な結末を辿ることがあります。それは白虎隊や1945年のベルリンなどに実例が見られます。大した戦力にならないのなら徴用しなければよいのですが、実例は後を絶ちません。

 下記に、子供兵についての著書を紹介しておきます。

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