安保理がソマリアの海賊への攻撃を承認

2008.12.18



 military.comによれば、国連安保理は、アフリカの角諸国沿岸に拠点を置く海賊に対して、地上戦闘と空襲を許可する決議を可決しました。同じ日、ソマリアの海賊が2隻の船(フランスの石油会社トータル社のタグボートとトルコの輸送船)を奪取しました。

 コンドリーザ・ライス国務長官(Secretary of State Condoleezza Rice)がこの会議に出席していました。この決議がブッシュ政権の後押しによるものであることを強調するためでしょう。インドネシア代表が反対したため、決議はソマリアの空域使用について直接的な言及を避けました。ソマリアの外務大臣アリ・アメード・ジャマ(Foreign Minister Ali Ahmed Jama)は、理事会の決定に勇気づけられたと述べました。記事は、この決議が映画「ブラックホーク・ダウン」が描いた惨劇を再び起こす可能性と、先日、ビル・ガートニー海軍中将が述べた地上攻撃の問題点を指摘しています。現在、14隻の船と250人の乗組員が海賊の手中にあります。ケニアの最高指揮官ジェレミア・キアンガ大将(Gen. Jeremiah Kianga)は、海賊がケニアの主要港でビジネスを行っているため、自国沿岸でのパトロールを強化すると述べました。しかし、ソマリアの領海・領空には入らない方針です。

 この決議を根拠に、ブッシュ政権がいわば「駆け込み」で海賊に対する軍事行動を行うかも知れません。それは第二の「ブラックホーク・ダウン」になる危険を避けた上で、アメリカ国民に強い印象を残すものが選ばれることになります。ロシア海軍と共同作戦を行って、むしろ外交的な成果を狙うこともできます。でも、問題の本質的な解決につながる可能性はほとんどありません。第5艦隊はバーレーンのマナーマに拠点があります(kmzファイルはこちら)。地上作戦を行うには少々遠いので、できればケニアなどの隣国に、国連軍の拠点を作り、警戒を強化したいところですが、そうしたことは記事には書かれていません。決議はなされたけども、具体的な行動はまだ決まっていないのが本当のところでしょう。そんな中で米軍が形ばかりの行動を行うのは、止めて欲しいところです。


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