練習問題 第2回 突破作戦の解答


 突破作戦は、兵力を分散させずに一点に集中し、迅速に敵の防衛線を破壊して通過するのが基本です。敵戦力の壊滅は目的ではないので、できるなら不要な接敵は避け、目的を達するために必要な攻撃だけを行うようにします。

 シナリオを分析してみましょう。
 シナリオの制限時間は120分間もあります。あまり急ぐ必要はないものの、立ち止まっているだけ、遠くにいる敵が応援に駆けつけるチャンスを増やすので、できるだけ早くに戦場を脱出する必要があります。勝利条件に敵部隊の何%を壊滅せよとは書かれていません。突破に必要なだけの敵を破壊すれば目的は達成できます。OPFORがどのような布陣をしているかは分かりません。敵とコンタクトして初めてそれが分かります。このために、少数のブラッドレー歩兵戦闘車を活用します。敵を視認でき、身を守れる場所にブラッドレーを進出させます。敵がブラッドレーを発見し、攻撃してくると、その位置が分かります。森はその最適地です。ブラッドレー部隊に視認したら発煙弾を発射して後退するよう命令しておくと、損害をより小さくできます。後退した後に、再び前進して視認を続けることができます。敵を視認したら、そこへ榴弾砲や迫撃砲を撃ち込んで、特に長射程の兵器(戦車や対戦車ミサイル)を優先的に破壊します。
 米軍に対してOPFORは薄く引き延ばされています。一カ所にいる部隊は多くないので、数回の砲撃で長射程兵器は壊滅できます。敵の歩兵部隊は近寄らない限り攻撃力を発揮しません。ただし、「視認」することで、敵の砲爆撃を誘導する役目をもたらすので軽視はできません。赤外線監視装置を持たない部隊は、榴弾砲部隊の発煙弾で視線を遮ることができます。
 こうして、小規模の偵察部隊で敵の視認を継続しながら、優勢な砲撃力で防衛線を破壊し、適当なタイミングで一気に通過するのが、このシナリオのポイントです。

 それぞれのルートの長所と短所を検討します。

 まず、最も時間がかかりそうな高地を通るB案は突破作戦の概念に反することが分かります。しかし、シナリオは120分間という長い時間を認めており、任務を達成する時間はあります。問題は、山の中でもたついている間に、敵部隊が集結したり、多連装ミサイルの砲撃を浴びることです。なんとか前山を抜けても、おそらく中央隘路の向こう側にはさらなる部隊が待ちかまえています。なにより、B案は敵戦線の真ん中を抜けていくため、多くのOPFORに視認される問題があります。敵に視認されると、すぐに砲弾と爆弾を搭載した戦闘機が飛んできます。このため、B案は最も攻撃を受けやすく、中央隘路に着く前に部隊の大半が破壊されてしまうこともあります。

 A案とC案は共に道路を利用できます。高速に移動できるのは重装備部隊にとって大変な利点です。では、いずれが有利なのか。それはそれぞれの地形の違いに関係します。

 C案はA案よりも開けた場所を通るルートです。南町から中央町までは次第に開墾地となっており、ちょうど中央町に向かって隘路の出口のような形になっています。実はこういうところは防御にとって向いた場所なのです。敵が散開し始める時は攻撃の好機です。特に、中央町に近いところでは、米陸軍は南北隘路から非常によく見えます。このため、中央町南西部の平地は米陸軍の墓場となりかねません。これを避けるために、できるだけ南側のルートを取り、高地と森で敵の視線を遮らせる手が考えられます。しかし、南端の道路を通って高地を抜けると、後山の手前が開墾地になっており、長射程の兵器にとって格好の防衛線となっています。ここで米軍が損害を出す可能性があります。

 A案は、C案よりも狭い場所を通るルートです。北町から南北隘路の北にある大きな森まで、比較的防御に適した場所はなく、短時間で移動できます。森を抜けた後も高地を使って場所を秘匿しながら移動でき、接敵を最小限に抑えられるという利点があります。

 結論として選択の余地があるのはA案とC案で、B案ではしばしば部隊が全滅します。A案とC案には、いずれも任務を成功させるチャンスがありますが、よりチャンスが大きいのはA案です。

 実際に、OPFORがどのように布陣するのかを見てみましょう。布陣のパターンは数種類あるようですが、下の図はその一例です。矢印は初期配置の位置から攻撃できる場所を示しています。このように、防御戦は姿を隠す場所があり、その前方に開墾地がある場所が選ばれます。そうした場所は敵に大損害を与えられるキルゾーンになるのです。
 すると、見るからにC案の方がキルゾーンの面積が広いことが分かります。突破作戦の場合、損害を抑えて走り去ることが大事なので、C案ほどの本格的な戦闘は必要がありません。それに、砲撃でC案のルートを視認できる部隊をすべて破壊するのは困難です。

地図は右クリックで拡大できます。赤丸は偵察隊が視認に利用できる森。

 A案のプロセスには三段階あります。
 第一段階は、まず足の速いブラッドレーの部隊を北部の森に展開します。戦車部隊でもよいのですが、足が遅いので時間がかかります。必要なら砲兵隊の発煙弾を使って敵の攻撃をやりにくくします(敵は熱線探知装置を持っているので、完全に視線を遮ることはできません)。戦車部隊はすぐに後を追わせない方が賢明です。視認された場所に多連装ミサイルが撃ち込まれる恐れがあるので、しばらく様子を見るのです。ブラッドレーは森の端まで前進して、身を隠したままOPFORがいる森を視認できるようにします。敵は見えないかもしれませんが、構いません。あらかじめ照準を続けていた砲兵隊の照準レベルがあがったら、実弾射撃に切り替えて森の前縁部分を集中的に砲撃します。これによって、敵の装甲車を破壊します。その後には歩兵部隊が残っていますが、これらは極力無視します。攻撃が進んできたら戦車部隊を前進させ、ブラッドレーの後方に待機させます。
 自走式の迫撃砲と榴弾砲の砲弾が尽きそうになったら砲撃を中止して、移動をはじめさせます。あとは、マップ外からの砲撃だけを続けます。これが第二段階です。
 このタイミングは長射程の兵器(装甲車)を無力化した時点で決めます。歩兵部隊は近寄ると対戦車兵器で攻撃してきます。これは突破作戦で攻撃作戦ではありません。余計な敵に構うべきではありません。つまり、歩兵部隊は近寄らない限り、ほっておくのです。この作戦では敵とのコンタクトは少なければ少ない方がよいのです。そこで、すべての部隊にすばやく森の北側の平地を抜けさせます。この頃、敵の戦車や装甲車が迎撃に出てくるかも知れませんし、森の向こうには若干の敵がいますが、いずれも砲撃の間接射撃と装甲部隊の直接射撃のコンビネーションで沈黙させます。また、熱線探知装置を持たない部隊から視認されることを防ぐために、状況によっては砲兵隊に発煙弾を発射してもらうのも一手です。ここまで来れば、あとは一気にマップ外へ走り抜けるだけです。
 これ以降が第三段階となります。自走式迫撃砲と榴弾砲を置き去りにしないように、全部隊が適当な間隔を維持するように注意します。

 A案が優れているのは、たとえOPFORが赤丸がついている森で守備をしたとしても、個別に撃破できる点です。その際、他の部隊に友軍が視認されるのなら危険ですが、こちらが上手く立ち回る限り、A案にはその危険がほとんどありません。

 コンピュータとの対戦では、A案が最も安定してよい成績を収めます。人間との対戦なら、敵はさらに裏をかいてくるので、もっと工夫が必要でしょう。たとえば、こちらの意図を誤認させるために、小分けした装甲部隊をあちこちに出没させたり、砲兵隊に砲撃させたりする必要があります。コンピュータは部隊をあまり移動させませんが、人間なら敵の意図を把握すると、思い切って部隊を集結してきます。そうなると戦いは一層複雑になります。しかし、勝利条件は部隊の20パーセントを脱出させることです。1パーセントでも多ければ勝ちと割り切って、粘り強い戦いをすべきなのです。

 TacOpsには詳細な戦闘レポートを表示する機能があり、成績を正確に記録できます。A案では最良の場合で、74%の部隊を脱出させられました。C案は、幸運に恵まれると63%の部隊を脱出させられる場合もありましたが、最悪の場合、26%ということもありました。A案でもやり方がまずいとこれに似た成績になることがありますが、成功率はC案よりはかなり高いのです。しかし、これが実戦であれば、人命がかかっていることもあり、迷わずにA案を選択するでしょう。


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