バイデン支持の元軍高官はトランプの2倍

2020.9.26

 

 military.comに よれば、トランプ(Trump)とペンス(Pence)の選挙キャンペーンが235人の退役軍人が署名した推薦状を公表した 数日後、約500人の現役・退役の国家安全保障の指導者の連合が、ジョー・バイデン(Joe Biden)を大統領に支持する書簡を公表しました。(トランプの選挙陣営が公表した署名の記事はこ ちら

  木曜日の朝に出された、バイデンを支持する国家安全保障指導者による公開書簡は、22人の陸軍大将と海軍大 将、5人の元国防長官と、マデライン・オルブライト国務長官(Madeleine Albright)とチャールズ・ボールデン元NASA長官(Charles Bolden)らその他の著名な指導者を含めて、489人の名前を含みます。

 「我らが仲間の市民」へ宛てた書簡は、共和党、民主党と無党派層はこの国の未来への共通の恐怖心で結ばれるといいます。

  「次期大統領は混乱状態の国と世界を受け継ぎます」と書簡は述べます。「現大統領はとてつもなく大きい大統領 府の責任には見合いません。彼は大小に関係なく困難に立ち向かう能力がありません。彼の高慢な態度と失敗のおかげで、我々の 同盟国はもはや我々を信頼も尊敬もせず、敵対者らはもはや我々を恐れません」。

 次の4年間に米大統領が直面する問題として書簡は、COVID-19のパンデミック、経済不況、悪意あるロシアの影響と核 兵器をもつ北朝鮮からの脅威を引き合いに出し、かつて副大統領を務めたバイデンはそれらの責任を引き受ける能力があると続け ます。

  長いリストの中のその他の著名な名前は、バイデンが国防長官にすると広く信じられている元国防次官補ミシェ ル・フルールノア(Michele Flournoy)と元国家安全保障担当補佐官で国連大使のスーザン・ライス(Susan Rice)を含みます。署名した元国防長官には、アシュトン・カーター(Ash Carter)、ウィリアム・コーエン(William Cohen)、チャック・へゲール(Chuck Hagel)、レオン・パネッタ(Leon Panetta)とウィリアム・ペリー(William Perry)を含みます。  

 「我々の多くはジョー・バイデンに国家安全保障問題を説明し、我々はどの大統領もすべきと同じく、彼が決断をくだす前に徹 底的な理解を望むのを知っています」と署名者たちは書きました。 「ジョー・バイデンは個人の責任を信じています。彼の長いキャリアにわたり、彼は厳しい教訓を学び、わが国を統一して、癒す ために積極的な行動をとれる指導者に成長しています。彼が『自分にはなんの責任もない』という言葉をいうとは考えられませ ん」。

  海軍大将として2000年に海軍を退役し、後にジョージ・W・ブッシュ大統領の下で国土安全保障副顧問を務め たスティーブ・アボット(Steve Abbot)は、米歴史の中において現在は異常で衝撃的だとみているとMilitary.comにいいました。

 「それは、まさにいかなる政治活動にも特定されていなかったけども、この国の歴史において問題が多いときであり、手中にあ る危機に対処するために手をつなぐ必要があると信じる人びとを含めるグループです。「だから、これは一つの党の活動ではあり ません。交差した党派です」。

 退役した陸軍将官と海軍将官が候補者のために遊説するのは選挙シーズンのお馴染みとなっていますが、元軍高官が一方を支持 するのを避けるべきだと信じる人も大勢います。  水曜日、M・L・キャバノー陸軍中佐(Lt. Col. M. L. Cavanaugh)は、L・Aタイムズ紙の論説で、それらは無党派の軍隊にアメリカ人が寄せる信頼を奪うよう機能するといい、こうした公の支持を批判しました。

 アボットは、彼は退役軍人は自制すべきだとの議論が有効だとは考えないとつけ加え、国の政治活動に関与するという市民の義 務を保ち続けたのだと信じるといいました。彼は、国防総省の高官は国防請負業者を幸せにし続けるために戦争をすることを望ん でいると、つい最近非難したような声明で、ドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)はさらに国を分断し、軍隊を損ねているといいました。

  「トランプ大統領は、御存知のように、国にとって極度に重大なこの組織を利用して、更なる彼の利益を促進する ための道具として軍隊を使ってきました」と彼はいいました。「言い替えれば、彼はまさに適切な民間と軍隊の関係にとって脅威 です」。

 アボットは彼の個人的な呼びかけは今年の復活祭の頃に来たもので、トランプのパンデミックの対応への失望と大統領が危機を 緩和するのではなく一因となっていたとの信念から生じたといいました。  しかし、故ジョン・マケイン(John McCain)と共に飛んだ海軍の飛行士として、アボットはトランプを支持できないのは去年に明らかになっていたといいました。ベトナムで5年以上拘束され、拷問されたマ ケインは、31年間米上院議員を務めました。

 トランプは2015年に、マケインは戦争の英雄ではなかったといい、議論を生みました。

 「私は捕虜にならなかった人びとが好きだ」と、彼は当時いいました。コメントはトランプが戦死したアメリカ人を「負け犬」 と「間抜け」と呼んだと報じる「The Atlantic」の記事の結果で再び注意をひきました。ホワイトハウスはこの記事に反論しました。

 「この大統領は過去のサイクルに戻って、ジョン・マケインは英雄ではない。彼は負け犬だったといいました」とアボットはい いました。「そして、彼がそれをいう時、彼は私の考え方の波長の上にいません。なぜなら、ジョン・マケインは、私の考えで は、国の英雄だからです」。



 米軍と選挙の関係がよく分かる記事です。

 米軍は隊員が政治的意見を公表することを認めていません。その軍法は隊員の「表現の自由」を制限しています。しかし、退役 したあとは民間人の立場で政治的意見をいうことができます。そこで、大統領選挙ともなると、元軍人たちが選挙に顔を出すので す。しかし、軍は無党派の集団でなければならないという信念は、退役後にも続けるべきだと考える人たちもいます。

 こうした軍人たちの信念の違いは、日本人には理解しにくいでしょう。日本人は「軍人は政治に口を出さない」のはマナーみた いなものだと考えていますが、米軍では軍司法に規定されているのです。旧日本軍の軍人たちは、当たり前に政治に対して口を出 していましたし、彼らに影響され、政治家を暗殺した者たちもいました。これは現在の自衛隊でも変わっていません。自衛官の表 現の自由は一般国民と同じだと、すべての自衛官が信じていて、政府の見解に一致しているなら、政治的意見を述べても構わない と確信しています。自民党に従っていれば間違いないと考える自衛官は大勢いて、隊内での政治活動も行われています。しかし、 民主主義国の軍人は表現の自由を制限されるのが当たり前なのです。軍人に表現の自由が完全に保証されるのは「軍事独裁国家」 だけです。

 法律で規定しても、実際にはあまく運用されていると考える人がいるかも知れませんが、米軍では階級に関係なく、政治的意見 を公表した者は処罰しています。

 さらに、強硬な姿勢を売り物にするトランプは、米軍からの支持を受けているように見えて、実は、いまや険悪な関係になって いることも、日本では認識が低い。彼の公約のメキシコ国境の密入国対策では、トランプは米軍を動員しようとしましたが、元軍 人の閣僚に反対されています。民警団法が連邦軍が国内での法執行を行うことを禁じているからです。トランスジェンダーの隊員 を公認するかどうかも、軍が公認する方向で動いていたのをトランプが止めさせ、軍は混乱しました。トランプはイランの革命防 衛隊司令官スレイマニを暗殺するよう命令し、イランの報復攻撃を招きました。戦争犯罪で有罪になった米軍隊員に恩赦を出し、 軍司法を混乱させました。

 もはや、トランプを好ましく思う軍人はいないと考えていましたが、この公開書簡の署名人数をみても、それは明らかだといえ ます。もちろん、無党派の軍人や署名公開に反対する軍人もいますから、この数字が全体像を反映しているとはいえません。

 それでも、この数字が来る大統領選挙でも反映されてほしいものです。精神が不安定な人物はアメリカの大統領にふさわしくあ りませんから。

 


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