金正恩が視察した肥料工場

2020.5.4



  NK PROの2019年12月13日付の記事が、今回、金正恩が視察した順天リン酸肥料工場の建設について分析して います。

 いくつかの北朝鮮の最優先建設計画の矢継ぎ早の開場式典に引き続き、それはもう一つの巨大な肥料工場も完成間近という形で 現れると、最近の衛星写真の「NK Pro」の分析は示します。

 平壌市の北にある順川に位置する順川リン酸肥料工場(The Sunchon Phosphate Fertilizer Factory 순천린비료공장)は、この国の「農業生産の工場」という公の目的で建設されていますが、その他の化学物質の 生産拠点としても役立てます。

 工場は4月の国家余点に関する最高人民会議(Supreme People’s Assembly: SPA)で、一握りの「重要建設計画」にあげられるものの一つで、宣伝と金正恩」の新年の演説でよく表れる国内の「C1」化学産業を強化するための長年の国家計画のより広 範な部分です。

 計画は、Google Earthの衛星写真によると2016年後半から2017年中期に解体された、テドン川(Taedong)沿いの旧順川石灰窒素肥料工場(the Sunchon Nitro-Lime Fertilizer Factory 순천석회질소비료공장)の場所に建てられています。

 幹部の朴奉珠(Pak Pong Ju)が指導した起工式が2017年7月に行われました。彼は再建が始まる前の数年前からこの場所を何度も訪問していることから、計画の責任者とみられます。

 しかし、新しい工場施設の建設は今年春までほとんど進展しなかったことを、「Planet Lab」が提供する中解像度の衛星写真は示します。

 党の日刊紙、労働新聞に10月に公表された報告が労働者が建設現場の必要量よりも少ないという課題を最終的に克服したと述 べたように、遅れは資材不足や初期計画を実行する上での問題のためかもしれません。

 現在建っている建物の多くは2019年4月から6月の間に急速に建てられました。より多くの進展は昨年夏の数ヶ月と11月 20日、12月12日に撮影された最新映像で明らかです。

 先月、より多くの建物に屋根が設置され、施設内の道路がより舗装されたようですが、開場の前にさらに構造物が追加されるか は不明です。

 しかし、報道は施設が「黄燐製造所」とブリケット肥料乾燥所と石灰乳製造のための施設を含めた約10棟の異なる構成要素を 含むと説明しています。

 国営メディアでの報道によると、降仙産業建設企業(The Kangson Industrial Construction Company)は順川計画の主要な生産工程に責任を負っていますが、主に国立科学アカデミーの咸興支院(Hamhung)の下で運営されているようです。

 SASのこのオフィスは合成衣類から肥料、国の核兵器とICBM計画まで広い範囲の化学生産を監督することが分かっていま す。

 順川リン酸肥料工場が北朝鮮の切迫した食糧危機に対処するための肥料を生産する以外の目的に使われる兆候はありませんが、 アナリストたちはC1傘下の工場が長距離ミサイルの燃料を生産する拠点を兼ねる可能性を調査しています。

 これこれは非対称ジメチル・ヒドラジン(unsymmetrical di-methyl-hydrazine)で、2017年後半に「Arms Control Wonk」の創始者のジェフリー・ルイス(Jeffrey Lewis)と38 Northのアナリストたちが、SASと提携する工場で生産されかねないと指摘したものです。

 しかし、肥料生産の強化を通じた農業産出物の増産は、表明された計画の目標であり、少なくとも新しい順川工場の主要機能の 一つであることに変わりはありません。

 国内生産の問題に対処するための中国からの肥料輸入は2018年に急増し、手続きと生産過程のその他の面の制限のために、 制裁は肥料事態は制裁項目でないにも関わらず、生産に影響したようです。

 C1プロセス(端的には、単純な炭素化合物を燃料と工業用化学物のような有益な製品に転換すること)を通じる肥料増産は、 国の主体思想を強化し、制裁を回避するためのもう一つの手段となるでしょう。

 計画完了の期限は国営メディアで発表されておらず、指導者金正恩は現地での指導を明らかにしていません。



 記事には衛星写真も掲載されているので、リンク先をクリックして確認してください。

 記事はとても有益ですが、さらに検討してみます。

 工場の位置はGoogle Earthで確認できます。kmlファイルを開くと、工場の場所が表示されます。(kmlファイルはこ ちら

 記事は工場の建設は2019年に急速に進んだとしていますが、GoogleEarthの写真によると、2018年9月1日 の写真では新しい建物の基礎が造られていて、少なくとも、これまでには順川リン酸肥料工場の建設が始まったことになります。 2019年11月29日の写真ではかなりの建物が、少なくとも外装は完成していました。

 むしろ気になるのは、前の工場の解体工事の遅れです。2015年10月27日の写真までは石灰窒素肥料工場の建物はそのま まですが、2016年8月28日の写真ではごく一部の建物が取り壊されているのが分かります。解体はどんどん進み、少なくと も2018年4月16日の写真ではさらに作業が進んでいるのが分かります。2016年の夏に始まった解体工事が2018年の 夏までに続いたことになります。解体工事に約2年とは、工場が大きいことを考えても長すぎる気がします。基礎の建設が始まっ てから建物の建築が確認されるまで半年近いのも気になります。

 リン酸肥料の生産方法は複数ありますが、多くの方法で水を使うため、川の近くに建てられています。原料のリン酸鉱石の搬入 や製品出荷のために鉄道の近くにあることは容易に想像できますが、実際、工場は順川駅の裏手にあり、線路が工場内に引き込ま れていて、テドン川に面しています。川の水を浄化するために使われると思われる貯水池もあります。


写真は右クリックで拡大できます。赤い屋根の施設全体が肥料工場。

 こういう工場の完成祝賀行事に金正恩が参加するのは当然のことであり、公表された彼の健在を示す映像への信憑性を加えるも のです。

 非対称ジメチル・ヒドラジンはミサイルの燃料になります。テポドン2号はこれを 赤煙硝酸を混合して燃焼していました。この工場で生産される化学製品がこうした用途に使われることは、日本にとっても脅威で す。

 化学肥料の不足は慢性的のようです。2017年11月に北朝鮮軍の兵士、呉青成(オ・チョンソン)が板門店で韓国側へ脱走 を図り、被弾しながらも成功した事件がありました。彼の手当をした医師たちは、腸の中に大量の回虫がいるのを見て驚きまし た。化学肥料が少ないために人糞を使わざるを得ず、回虫の卵が体内に入るのです。ミサイルの燃料を作るために肥料工場に偽装 しているという考え方は行き過ぎですが、両面からとらえておく必要があります。


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