病院船マーシーも母港へ帰る

2020.5.16



 military.comに よれば、サンディエゴに拠点を置く病院船マーシー(Mercy)は、コロナウィルスのパンデミックの間に患者を支援したロサ ンゼルスでの7週間の後、金曜日に母港に戻ると、米北方軍はいいました。

 マーシーは午前7時にロサンゼルス港を離れ、金曜日の午後のうちにはサンディエゴ海軍基地にあるだろうと、声明はいいまし た。

 新型コロナウィルスがコミュニティで拡散し、州当局者が病院に患者が押し寄せかねないと懸念したため、艦は3月23日にサ ンディエゴを離れました。マーシーは安全弁として機能し、非コロナウィルスの患者を引き受け、ロサンゼルスの病院のスペース を空けました。

 艦は約6週間で77人の患者を診ました。5月5日に最後の患者を退院させました。

 ロサンゼルス港にいる間に、マーシーの医療スタッフは艦で最初のペースメーカー交換を含めた数回の手術を行いました。

 彼らは車両衝突の被害者ひとりを治療し、患者に8回の手術を行い、皮膚を移植し、脊椎整形手術も行ったと、海軍はいいまし た。すべての治療は患者に無償で行いました。

 COVID-19の患者の波がロサンゼルスの病院を圧倒することはなかったものの、艦は艦上でそれ自体のコロナウィルスの 流行と戦いました。数人の隊員が陽性と判定され、移動させられました。第3艦隊の報道官、ジョン・ファージ(John Fage)は電子メールで、これらの隊員のほとんどは回復し、任務に戻っているといいました。

 特殊な看護施設を支援するため、数人の医療要員はロサンゼルスとオレンジ郡(Orange County)にいます。約1ヶ月前、こうした施設の一つで、隊員40人が艦外活動を始めました。海軍ら20人以上がその他を支援するために残るだろうといいます。

 カリフォルニア州の非常時緊急対策局長(the California Office of Emergency Services)、マーク・ガラドッチ(Mark Ghilarducci)は木曜日、マーシーは州のウイルス対応に不可欠だったといいました。彼は海軍、FEMA 、連邦当局に謝意を表しました。



 記事中で、もう一隻の病院船コンフォートに関する部分はすでに紹介済みだから省略しました。

 マーシーも活動を終えたので、その紹介をして病院船に関するまとめをしたいと思います。

 千人を治療できる能力がありながら、77人しか治療できず、大量の医療従事者を艦に貼り付けたのは、やはり非効率でした。 大規模災害でも同じくです。病院船にできて、陸上の病院にできないことはありません。

 病院船は、港に停泊できない場合、波の影響を受け、重要な治療が行えない可能性もあります。

 陸上の病院のネットワークを充実させれば、病院船より安価で効果的な大規模災害対策ができます。通常は近隣市町村で患者を 搬送しているのを、さらに広い範囲で行えるようにして、迅速に治療を始められるようにするのです。被災地の中に前進基地のよ うな臨時病院を建設する努力も必要です。地域の病院が機能停止していたら、自衛隊の野戦病院が役に立ちます。

 これらの工夫で病院船を造るよりも効果的な治療体制が整います。

 過去に日本軍が「橘丸」の偽装病院船事件など、病院船でジュネーヴ条約に違反したことがまったく無視されたままに議論が進 んでいることも不気味です。現在の議論が戦争とまったく関係がないと思っている人は、河野防衛大臣が「インド太平洋構想にも 使える」と公言していることから、中東から日本へのシーレーン防衛のため、つまり戦争のために使うつもりなのです。戦争のた めに使うのなら、ジュネーブ条約は遵守しなければならず、過去の違反を無視することはできません。

 


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