別荘近くの駅に金正恩専用列車

2020.4.26



 38north.orgが、 商用衛星の写真に基づくと、金正恩(Kim Jong Un)が所有するとみられる列車が4月21日から、彼の元山(Wonsan)の屋敷につながる指導者駅(the Leadership Railway Station)に停車していると報じました。列車の存在は北朝鮮の指導者の居場所を証明したり、彼の健康に関するものを何も示しませんが、金正恩が国の東階段の上流階級 向けのエリアに滞在しているという報道に重みを与えます。

 部分的に駅の屋根に覆われているものの、約250メートル長の列車が、金正恩一家が使うために用意された鉄道駅にみえま す。列車は4月15日にはなく、4月21日と23日には存在しました。

 映像は列車が4月21日より前のある時点に到着し、出発のために再配置されたとみられる4月23日にはまだ存在したことを 示します。しかし、出発しそうな兆候はありませんでした。

 元山の屋敷は9棟の巨大なゲストハウスとリクリエーションセンターを含みます。土地の中心には、2014年に金正恩が権力 を握った直後に建てられた巨大な建物があります。屋敷は防護された港、射撃場、リクリエーション用のビルと彼の大型ヨットの ためと考えられる覆われたドックも含みます。鉄道駅に接するのは、もともとは軽飛行機用の小さな滑走路で、金正恩の最新の趣 味に合わせて2019年後期に転換された乗馬用のトラックです。

 金正恩が最後に公に姿を見せたのは、北朝鮮西部の無名の飛行場での航空団の視察でした。写真と衛生写真は、それが平壌 (Pyongyang)の北東約50kmの順川(Sunchon)だったことを示しました。その後の報道は、健康の程度の差 はありますが、彼が回復のために北西部の屋敷で元山の周辺を歩いているのを目撃されたとか、北西部の平安北道 (Hyangsan)の屋敷で回復しているなどと主張する様々な情報源を引用しています。

  金正恩が重篤だとか死亡したといった情報が流れている中、唯一の客観的な証拠が出てきたので紹介しました。元記 事には衛星写真が掲載されていますので、クリックして御覧ください。

 この報道は人的な情報(ヒューミント・HUMINT)に基づいています。北朝鮮にいる内通者による情報ですので、その人の 話を信じられるかどうかがポイントです。それに対して、衛星写真などの物的な証拠は人的な情報とは性質が違い、証拠の真偽は 問題とならず、その解釈に焦点があてられます。

 元山には空軍基地もあって、そこには上流階級用の施設が併設されています。元山空軍基地は2017年5月に弾道ミサイルの 発射実験にも使われています。その時は貴賓施設がある場所で打ち上げていて、金正恩の目の前で成功させることに意味があった ようにみえました。(過去の記事はこちら

 そのため、今回もその貴賓施設にいるのかと思いましたが、今回の屋敷はそことは違いました。空軍基地は元山市の東側にあり ますが、この屋敷は西側です。

 記事が言うように、列車の存在は金正恩の無事を証明するものではありません。

 CNNによれば、4月15日に金正恩は祖父、金日成の生誕記念日に姿を現しませんでした。その4日前の会議には出席してい ます。別のメディア、デイリーNKは、金正恩が4月12日に心血管系手術を受けたと報じています。金日成の死因は公式には心 筋梗塞ですが、長らく心臓病でもあったとされます。その息子の金正日は心臓や脳血管の病気を患い、死因は心筋梗塞だったとさ れます。彼らの子孫である金正恩が同種の病気を受け継ぐ可能性は大きいといえますから、この報道は無視はできません。すでに 金正恩は死んでいると報じる記事もあります。

 12日に大きな外科手術をして、21日頃に静養のために元山へ移動したとは考えにくいものがあります。普通は手術後には移 動しないものです。デイリーNKの報道にはまず疑問を投げかけるべきでしょう。しかし、列車を偽装のために元山に配置して、 そこに金正恩がいるようにみせかける可能性もあります。こうした偽装は国を問わずに過去に限りなく行われてきました。

 北朝鮮軍が国境警備を強化するとか、中国政府に特別な動きがみられないことから、北朝鮮政府内に大きな動きがない可能性も 十分にあります。

 私が当初考えたのは、新型コロナウイルスに感染するのを防ぐために、一種の自己隔離を行っているとの予測でした。

 果たして、どれが事実なのかは分かりませんが、そんなときに重要なのは、明らかになる情報を慎重に分析していくことです。

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.