イランへのサイバー攻撃は闇の中

2019.6.28


 military.comによれば、ホワイトハウスが命じた報復のサイバー攻撃がイランのミサイル発射システムを活動不能にしたという米当局の主張は立証するのが不可能なままだと、専門家はいいます。

 匿名の情報筋を引用し、米メディアは先週、米サイバー軍が6月20日にホルムズ海峡上空でアメリカの偵察用無人機を撃墜したことへ対応してはじめた攻撃はイラン革命防衛隊のコンピュータを無力化したと報じました。

 しかし、テヘランは「イスラム共和国に対してアメリカが行っていた攻撃は失敗したといい、報道を否定しました。

すべてがハッタリ

 フランス国際問題研究所(the French Institute of International Relations)のジュリアン・ノセッティ(Julien Nocetti)は、こうした場合、すべての側がハッタリを行うと言いました。

 「動きを明らかにしてはいけないのです」と彼はAFPに言いました。「ネコとネズミの極度に狡猾なゲームなんです」。

 「(サイバー攻撃が)失敗したとイランが主張する。そして我々はいずれかの側の声明を確認する方法がないということは、驚くべきではありません」と彼はつけ加えました。

 サイバー戦争となると、軍事理論家のカール・フォン・クラウゼヴィッツ(Carl von Clausewitz)がいう「戦場の霧」はいつもながらに厚いのです。

 戦いの戦線や観測者、証拠とヒントは、戦いがコンピューターサーバーの中で行われるとき、簡単に操作され得ます。

 米当局がサイバー攻撃とされるものについてすばやくニュースをリークするために選択したか、指示を受けたという事実は、テヘランへの軍事攻撃を中止したあとですら、ドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)の政権が何かをしたことを証明したいという願望を指し示します。

 サイバー・セキュリティの専門家、ニコラス・アペジアン(Nicolas Arpagian)によれば、攻撃の現実性とその正確な目標と有効性は謎のままでしょう。

 「今回の場合、イラン軍の目標が選択されました。民間の目標だった場合、それは違っていたでしょう」と彼はAFPに言いました。

 「発電所が狙われたら、その後に電気が切れるでしょう。水道会社なら、その後に人々が飲料水の瓶を手に入れるために列を作るでしょう」。

 アペジアンは、イラン人だけがサイバー攻撃の損害の範囲を知る一方、ミサイルによる破壊はより簡単に測定されると言いました。

 「デジタル兵器はトランプ大統領に、(イランに)対応したことを世界に、特に彼の支持者たちに示すことを許しました」と彼は言いました。

 「しかし、目標が軍隊だった事実は、何らかの損害を被ったなら、イラン人だけがいえることを意味し、それは彼らが当然やらないでしょう」。

 月曜日、イランの通信大臣モハメッド・ジャバド・アザリ・ジャロミ(Mohammad Javad Azari Jahromi)は、テヘランは「スタックスネット(Stuxnet)」のような、一方的外交で、制裁のようなサイバーテロを受けたことを認めました。

 しかし、彼は「彼らが行った攻撃は、彼らが多くの努力をしたにも関わらず失敗しました」と言いました。

 スタックネット・ウィルスは2010年に発見され、イランの核施設に損害を耐えるためにイスラエルとアメリカが製作したと考えられています。

 当時、イランはアメリカとイスラエルを、ウラン濃縮のために使う遠心分離機を標的とするためにウィルスを用いたと非難しました。

 
赤の広場でのパレード

 フランス情報安全クラブ(the French Information Security Club)のロイス・グーゾ(Loic Guezo)は、そうしたサイバー攻撃はアメリカが「敵のシステムを無力化するために資源を技術的能力を持つ」ことを示すと言いました。

 「それは力のバランスの確立であり、未来の戦争における数百の核弾頭を伴う(ロシアの)赤の広場でのパレードのと同じです」と彼はAFPに言いました。

 イランとアメリカの間の緊張は昨年、テヘランと大国との間で署名された2015年核協定からトランプが一方的に撤退してから高まりました。

 協定は制裁の軽減と引き換えにイランの核の野望を抑制する方法を模索しました。

 しかし、それらはここ数週間でワシントンがテヘランを、慎重に扱うべき湾岸の水域で一連のタンカーに対する攻撃の背後にいると非難してから急騰しました。

 ノセッティにとって、サイバー攻撃はイラン人へだけでなく、同様にその他の国々へのメッセージです。

 「それは世界の他の国々へのメッセージです。モスクワと北京はしっかりと見ているでしょう」と彼は言いました。


 この記事が書いているように、サイバー攻撃がどれだけ効果があるかはほとんどの場合で確認がとれません。効果があったのかどうかは不明です。

 私はサイバー攻撃は生物・化学兵器と似ていて、効果よりも心理的な効果の方が大きいと考えています。化学兵器は虐殺に用いられたことがありますが、生物兵器が実際に効果を生んだのは現実の世界よりも小説などの中でです。

 日本の評論家の中には、アメリカがイランをサイバー空間で徹底的に攻撃したと持ち上げる者がいるかも知れませんが、単なる提灯持ちに過ぎません。自衛隊に宇宙・サイバー・電磁波に対応する部隊を作る関係上、効果があることにしておく必要があるためのプロパガンダです。日本にそれほど必要があるとは思えないのに、こうした部隊を創設するのは、アメリカからの指示でしょう。米軍の下請けを日本にやらせたいのです。そのためにはサイバー攻撃は強力だと日本国民に思い込ませる必要があります。

 サイバー攻撃を受けたくないシステムはネットから切り離しておくことができます。予防が容易なので効果は小さいでしょう。安倍総理大臣はサイバー攻撃だけでも憲法上、武力行使が許されると考えていますが、明らかに過剰反応です。

 記事の最後の部分には疑問があります。効果が薄いのだから、ロシアや中国が注目しているとは思えません。プーチンは笑っているかもしれません。

 


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