サウジが迅速・断固とした対応を要求

2019.6.16


 今回のタンカー攻撃は先月にも起きていた石油タンカーへの攻撃も合わせて考える必要があります。関連する記事を2つ紹介します。

 BBCによれば、サウジアラビアはこの地域での石油タンカーに対する最近の攻撃に「迅速で断固とした」対応を求めました。

 エネルギー相のカリド・アル・ファリ(Khalid al-Falih)はエネルギー供給への脅威と市場の安定を警告しました。

 木曜日、ほか4隻がアラブ首長国連邦の沖合で狙われてから1ヶ月後、2隻のタンカーがオマーン湾で攻撃されました。

 アメリカはイランを非難しました。イランはいかなる関与も否定しました。攻撃は2カ国の間の緊張が高まる中で来ました。

 土曜日、世界最大の国際海運協議会の長は、攻撃の結果、一部の会社が自社の船にホルムズ海峡とオマーン湾に入らないよう命じたと言いました。

 BIMCOの海事安全担当の長、ジャコブ・ラーセン(Jakob Larsen)はBBCへ、状況が悪化するなら軍によるタンカーの護衛が編成されるかもしれないと言いました。

 アメリカは、木曜日の攻撃に引き続いて、1隻の船の船体から不発の機雷を取り外す小型艇のイラン軍を示すとされるビデオを提供しました。しかし、それはアラブ首長国連邦水域の中での過去の攻撃へのイランの関与の嫌疑の証拠を提供していません。

フランク・ガードナー(Frank Gardner)による分析

 木曜日にアメリカが公表した映像はより前に提供された状況証拠よりも説得力があります。

 ビデオ映像の中の小型の白い警備艇は、イランのIRGC(革命防衛隊)の海軍が湾岸で用いる典型的な形です。近年、IRGC海軍は、北部のイラク国境からパキスタンとアラビア海へ至るまで、イランの湾岸すべてに沿ってイランの通常戦力の海軍すべてを着実に置き換えています。その部隊は恐るべき船隊、機雷、ミサイル、魚雷、ドローンを装備する攻撃を探知するのが難しい攻撃艇を築き上げています。IRGCの遊撃隊は定期的に秘密の作戦とシミュレーションされた攻撃を訓練します。それらの船艇の一部は近年、湾岸で米海軍の軍艦の間近に来ており、洋上で衝突の危険が残っています。イランは木曜日の攻撃への関与を否定し、イランの国際社会との関係を狂わせようとする何者かによって行われたといいます。このビデオが本物かどうかについて、テヘランにおいては疑いがあるでしょう。


 もう一つ、ガーディアン紙から、5月のタンカーに対する攻撃の記事を、一部だけ紹介します。

 初期調査は、攻撃は4個のリムペットマインが攻撃で使われた可能性が高いことを示しました。それは磁気で船の喫水線の下に取り付けられます。報告書は、それらは高速艇から派遣された訓練されたダイバーによって設置されました。機雷は船が投錨された直後に設置されました。

 UAE(アラブ首長国連邦)は、攻撃は石油タンカー4隻を標的として特定するために、高いレベルの情報を必要とすると信じます。船の1隻はサウジの船で、フジャイラ(Fujairah)の係留区域でほかの3隻のタンカーから反対端にありました。

 報告書は、船を沈没させずに機雷を起爆するためには船の設計の詳細な知識が必要だとも言いました。機雷はそれぞれ1時間以内に爆発するよう順序づけられました。

 不明瞭な調査結果にも関わらず、サウジアラビアはその最大の敵、イランを非難し続けました。テヘランは関与を否定しています。

 「我々はこの攻撃の責任がイランの肩にかかっていると信じます」とサウジアラビアの国連大使、アブドラ・アル・モアリーミ(Abdallah al-Mouallimi)はブリーフィングの後で言いました。サウジアラビアは攻撃は国際的な航行の安全と世界の石油供給の安全に影響するため、安保理に対応が必要だと主張します。

 ロシアの副国連大使、ウラジミール・サフロンコフ(Vladimir Safronkov)は非公開のブリーフィングの後、イランと攻撃のつながりを示す証拠はなかったと言いました。「我々は結論に飛びつきたくありません」とサフロンコフは言いました。


 5月の事件と今回の事件で共通しているのはリムペットマインが使われたことです。相違点は5月の事件は爆弾が喫水線下に取りつけられたことです。 サウジアラビアもダイバーが爆弾を取りつけたと考えています。

 フジャイラの石油出荷施設というと下の写真がその施設です。沖合まで桟橋があって、そこに石油タンカーを接岸して、パイプを使って石油をタンカーへ移します。

 
フジャイラの石油出荷施設

 船が走行中にダイバーが爆弾を取りつけるのは不可能なので、停泊中に行ったのはいうまでもありません。特に警備していなければ接近は不可能ではありません。ダイバーを運んだ船が水上艇とは限りません。潜水艦からダイバーを出すことも可能です。水上艇がダイバーが作業をできる場所まで近づくと、かなり接近することになりますから、発見される恐れが高いといえます。あるいは、民間のレジャーボートなどに化けていれば、気がつかれないかもしれません。

 フジャイラは今回事件が起きた海域の対岸といえ、サウジアラビアがイランを疑うのは無理もありません。

 ホルムズ海峡を越えて来たのなら、フロント・アルタイルとコクカ・カレイジャスに港で爆弾を取りつけるのは困難です。まず、そこへ爆弾と工作員を運ぶのが困難です。ホルムズ海峡は交通量が多く、船の側面に異物があるのを目撃される恐れも高い。そうすると、ホルムズ海峡を越えてから走行中の船に取りつけたことになりますが、これは作業がかなり困難です。

 海賊対策が進んだ現在、船の乗員はレーダーに注意していて、急速に接近する船があれば気がつくでしょう。すると、飛来物による攻撃だった可能性もあることになりますね。米海軍が撮影した物体はなにか別のものだったのか。

 これ以上情報が出ないと、判断のしようがありませんね。

 

 


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