朝鮮戦争の遺体返還が行き詰まる

2019.5.28


 military.comによれば、この戦没者追悼記念日は朝鮮戦争の行方不明者の家族が遺体の捜索を再開することで後退をみてから、たった数週間後に来ます。

 「それが何年にもわたって期待が持ち上がっては打ち砕かれる、ローラーコースターのライドだったことを、私は認めなければなりません」と、父親が1952年に朝鮮で行方不明になったリック・ダウンズ(Rick Downes)は言いました。

 「昨年、シンガポールでドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)が北朝鮮の指導者金正恩(Kim Jong-un)に会ったあとで、北朝鮮が55個の棺を返還したとき、我々は下り坂のライドで大喜びをしました」と、朝鮮・冷戦戦時捕虜、行方不明者家族同盟(the Coalition of Families of Korean and Cold War POW/MIAs)」の理事であるダウンズは言いました。「そしていま、我々は再び長い上り坂を登っているところです」。

 昨年8月のハワイ州のパールハーバー・ヒッカム統合基地(Joint Base Pearl Harbor-Hickam)での厳粛な遺体帰還式典で、朝鮮戦争で斃れたアメリカ人とその他の同盟国兵士の遺体を含むものと信じられた55個の国旗をかけられた棺は、軍用機から移されました。

 「今日、我々の少年たちは家に戻っているところです」と、式典に参列したマイク・ペンス副大統領(Vice President Mike Pence)は言いました。彼は55個の棺が北朝鮮における捜索の再開を進展させる手始めとなるという希望を表明しました。

 「我々の仕事は行方不明のすべての戦火に斃れた英雄たちが家に戻るまで終わりません」と彼は言いました。

 7,800人を超えるアメリカ人が朝鮮戦争で行方不明のままです。国防総省の国防戦時捕虜・行方不明部(DPAA)によれば、約5,300人分の遺体は北朝鮮にあると考えられます。

 ハワイの式典に続いた行方不明者の家族とのワシントンでの会談で、DPAA部長のケリー・マッキーグ退役空軍少将( Maj. Gen. Kelly McKeague)は、北朝鮮がさらに遺体を返還することに協力することに用心深くも楽観的だと、あふれかえる群衆に言いました。

 DPAAの報道官、チャック・プリチャード(Chuck Prichard)は火曜日、55個の棺の返還以降、過去に政治的な状況が許したときに行われたように、捜索を再開するためにアメリカの法医学と軍のチームを許可することで北朝鮮当局と定期的な接触があるといいました。

 「これらのコミュニケーションはいかなる種類の進展ももたらしませんでした」と、プリチャードはいい、接触は2月にハノイでトランプと金が会談したあとで潰えたと付け加えました。

 その会合は北朝鮮の軍縮や捜索の再開でいかなる合意もできなかったと、当時、ホワイトハウスは言いました。

 5月8日、DPAAは返還再開の努力は終止させられているところだと発表しました。

 「我々はもはや、9月30日に終了する今年度中に北朝鮮で現地での作業を効果的に計画し、調整して実行できないところに来ました」とDPAAは声明で言いました。「2020年度の間に予定される可能性がある合同の回収活動を計画するため、我々は(北朝鮮との)コミュニケーションを再開する上で可能性がある次のステップを見極めているところです」。

 長らく遺体返還はは北朝鮮人との人道問題と分けるべきだと主張しているダウンズは、戦没者追悼記念日の式典は、通常、行方不明者は決して忘れられないという演説者の誓約があるといいました。

 「私はこうした言葉が状況を改善できる人たちに意味があることを望みます」と彼はいいました。

 父親のハロルド・ダウンズ中尉(Lt. Harold Downes)が、1952年1月末13日にB-26「マローダー」爆撃機に搭乗して北朝鮮上空で撃墜され、行方不明になったときよりも3歳年上のダウンズは、「これはさらに60年、70年継続すべきじゃない」といいました。


 トランプ大統領が日本でいい思いをしたあとで直面するのが、この朝鮮戦争の行方不明者の問題です。

 戦没者追悼記念日は5月30日または5月の最終月曜日に行われ、未だ故郷に戻らない軍人の追悼集会が行われます。

 日本と違い、アメリカでは政府が軍人の帰還に責任を負います。記事中に登場するDPAAは戦没者の遺体の身元確認を行い、遺族へ返す任務を負っています。

 だから、この記念日は軽視できません。アメリカ国民はこの問題でトランプ大統領が成果を出せていないことを改めて認識します。

 でかい体で迫れば、いうことを聞くような金正恩ではありません。

 そんなトランプ大統領の北朝鮮との交渉に期待しても、成果が出るとは考えにくいと考え、日本は別の手段を講じるべきです。報道がアメリカに頼んだから大丈夫という方向へ流れていて、日本政府もそれでよいと考えているのは問題です。

 


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