米海軍で間抜けなスパイ事件が発覚

2019.5.27


 military.comによれば、米海軍の隊員が海軍の原子力で動く軍艦に関する機密情報を得て、それをジャーナリストに与え、それからロシアへ亡命することを計画したと認めたあと、スパイ罪2件で有罪を認め、刑期3年の有罪判決を受けたと、金曜日に当局者がいいました。

 米海軍のスティーブン・ケロッグ三世2等海曹(Petty Officer 2nd Class Stephen Kellogg III)は軍隊の廃棄物に関する暴露を公表することを望み、彼はロシア人と情報を共有しようとしたと、海軍犯罪調査部のジェフ・ヒューストン(Jeff Houston)は電子メールでAP通信にいいました。

 海軍の法定書面によれば、26歳のケロッグはロシアの最大の造船会社、セブマッシュ(Sevmash)と接触しました。彼は情報を公開することが原子力駆動の軍艦の能力を下げ得て、合衆国に損害をもたらすことを知っていたと認めました。

 ケロッグも彼の弁護士のいずれもコメントのために連絡が取れませんでした。

 法定書面によれば、当局8月27日に、サンディエゴ空港での酒によっての治安紊乱行為でケロッグを逮捕したあとに計画を知りました。空港で彼は嘩腰であったためにニューヨーク市行きの便への搭乗をデルタ航空の職員に止められました。

 調査官と法定書面によれば、彼は片道のチケットを買い、ニューヨーク市に住むジャーナリストで高校時代の友人に会う計画を立て、人にでかい話があると言いました。

 事前審理の書面によれば、ケロッグは情報が公になれば、潜在的な敵対国が合衆国の原子力駆動の軍艦の能力と限界を知るだろうことを知っていました。

 2014年に海軍に入隊したケロッグは、海軍の核推進システムの能力、操作、整備に関連する機密情報にアクセスできる核電子技師だった。彼は2016年から2018年までUSSカール・ビンソン(USS Carl Vinson)で勤務した。

 「機密の海軍の核推進力の情報を開示するこの隊員の試みは、国家安全保障に重大な脅威をもたらし、アメリカ人の隊員の命を危険にさらしました」と担当のFBI特別捜査員ギャレット・ウォー(Garrett Waugh)は声明でいいました。

 当局は、ケロッグは海軍の艦上の核推進力計画に関する気密性が高い情報を含むエリアを写真に撮り、それから写真を父親と元恋人に送ったことも認めました。

 FBIによれば、彼は当局に規則に違反して、機密情報を寝台に仕舞ったと言いました。

 彼は不名誉除隊と降格の処分を受けるだろうと、当局は言いました。


 どう見ても、なんの計画性もないスパイ事件です。仮に、彼が酔っ払わずにニューヨーク行きの飛行機に乗り、友人の記者に会ったところで、その記者は彼が提示した情報を見て青くなり、当局に通報したでしょう。そんな情報を記事にしたら、彼自身のキャリアが終わりますから。

 あまりにもずさんなスパイだったので、刑期3年と比較的軽い処分で済んだのでしょう。

 こういう風に軍事機密は隊員から漏れるものです。近頃、日本でみかける愛国者の方々は、とかく反政府的とみなした人たちをスパイ呼ばわりしますが、それは間違いです。大半の情報は現役や退役した自衛官や防衛省職員から漏れるのです。

 たとえば、ジャーナリストの有本香氏は最近、立憲民主党の蓮舫氏に「わが国の軍事基地を上空から覗き見る権利、そんな特殊な『知る権利』に固執する国民がどれほどいるというのでしょうか。 そういう方々、一体どこの国民なのでしょうね、蓮舫さん」とツイッター上で立憲民主党のドローン規制法改正案を批判しています。

図は右クリックで拡大できます。

 現代は民間人も簡単に世界中の衛星写真を手に入れられる時代です。お金を出せば高い解像度の衛星写真を買えます。無料のGoogleEarthは手軽なサービスで、世界中の軍事基地をみることができます。私はリビアやシリアの内戦を調べるためなどで、GoogleEarthに限りなくお世話になっています。北朝鮮がテポドンミサイルをどうやって舞水端里の基地に搬入しているか、どこから可搬型の弾道ミサイルを打ち上げたのかを調べたのも、GoogleEarthがあったから可能でした。

 もちろん、やろうと思えば自衛隊の基地も調べられます。写真は過去のものですから、現在、基地にどれだけの装備があるかまでは分かりません。しかし、建物の配置はわかりますから、仮に私に300人の部下がいたら、どうやってその基地を攻撃するかを考えることは可能です。

 もちろん、そんなことはしません。する理由がないからです。

 ドローンを使えば、確かに現在の基地の配備状況はわかります。もし三島由紀夫が生きていたら、ドローンで配備状況を調べて、演説を一番聞かせたい戦闘部隊が駐屯地内にいるかどうかを確認してから切腹しに行ったかもしれません。

 衛星写真を使えば、弾道ミサイルの照準点を考えることはできますから、北朝鮮が弾道ミサイルを飛ばせるのなら、ドローンは不要でしょう。もし、彼らが日本国内に300人の遊撃部隊を潜入させていたら、ドローンによる偵察情報は役に立つかもしれませんが、そんな可能性はほとんどありません。一つの自衛隊基地を壊滅させたところで、犯人が北朝鮮だとわかれば、ただでは済まないからです。

 迫撃砲を日本国内で彼らが隠し持っていたとして、護衛艦を狙って撃つとすれば、双眼鏡で位置を確認すれば、あとは地図上で照準点を割り出せますから、ドローンなどなくても攻撃はできます。

 しかし、それをすれば、いよいよ北朝鮮本土に対する米軍の攻撃を誘発しかねません。そして、それは日本に平和主義を捨てさせ、本格的な戦闘へと誘導しかねません。そのような余裕は北朝鮮にはありません。

 自衛隊に関するものをなんでも秘密にすると、それは自衛隊にとって、どんなミスをしても隠せるという環境ができあがります。失敗してもバレないとなれば、自衛官が何をはじめても分からないことになります。すでに自衛隊や防衛省の情報公開が劣悪であることは証明済みです。その上で、さらに自衛隊の秘密を増やすための制度が必要とは思えません。大体、自衛隊はくだらないことまで秘密にしてスパイごっこをやりすぎです。

 『サザエさん』の作者、長谷川町子氏は新聞社の依頼でスケッチをしていたら、スパイと疑われて憲兵隊に捕まったことがあります。似たようなことが、ドローンに関しても起きそうです。

 ドローンを気にするよりも、退役した自衛官や防衛庁職員の中に中国などに雇われている者がいないかを調べるほうが、機密漏洩防止には役に立つはずです。

 余談ながら、北海道の滝川市開基百年記念塔は陸上自衛隊の駐屯地の隣りにあります。お陰で基地の中は展望台から丸見えでした。北電公園の中にありますが、滝川市役所や北海道電力がスパイ行為に協力しているとは聞いていたことがありません。自衛隊もこの塔をなんとも思っていないようです。一時期、陸上自衛隊滝川駐屯地曹友会が塔をライトアップするイベントを行いました。広島県の呉でも、海上自衛隊の艦船を観に行くクルージング「呉艦船めぐり」をやっています。スタッフは海上自衛隊OBです。

 


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