イギリス兵の戦争犯罪疑惑

2019.11.22


 BBCに よれば、「BBC Panorama」と「the Sunday Times」による調査は、戦争犯罪の信頼できる証拠が見つかったという調査員11人に話を聞きました。

 兵士たちは殺人で起訴されるべきだったと、内部関係者はいいます。

 国防省(MoD)は隠蔽の傾向の根拠のなき申し立てを却下したといいました。

 ドミニク・ラーブ外務長官(Foreign Secretary Dominic Raab)はBBCに「証拠がある疑惑の全ては調査された」といいました。

 彼は「申し立てられた戦争犯罪を調査するかどうかの決定について「適正なバランス」が積み上げられたといいました。

 新しい証拠は、イラク占領の間に英兵によって行われた戦争犯罪の疑惑を調査した「イラク歴史的に重要な申し立てチーム (the Iraq Historic Allegations Team: IHAT)」と、アフガニスタンでの戦争犯罪の疑惑を調査したノースムーア作戦(Operation Northmoor)の中から来ています。

 政府は、IHATで千件以上を取り扱ったフィル・シャイナー(Phil Shiner)が依頼人を見つけるためにイラクで仲介者に金を払ったという疑惑に引き続いて弁護人として除名されたあと、IHATとノースムーア作戦を終了すると決定しま した。

 しかし、IHATとノースムーア作戦の元調査員は、フィル・シャイナーは犯罪操作を終えるための言い訳として利用されたと いいました。IHATとノースムーア作戦が調査した事件で起訴になったものはありません。

 一人のIHAT調査員は「Panorama」に「国防省は階級に関係なく、絶対的な必要がない限り、どの兵士も起訴する意 志がなく、彼らはそれをどうにも解決できませんでした」といいました。

 もう一人の元調査員は、戦争犯罪の犠牲者はひどい見捨てられ方をしたといいました。「私は『むかつく』といいたい。さら に、私は家族に同情します……彼らは正義を得ていません。これでイギリス人として胸を張れますか?」。

 「Panorama」は嫌疑がかかる戦争犯罪事件の多数の証拠を再検証しています。IHATが調査したそうした事件の一つ は、2003年にバスラ(Basra)でパトロール中のイギリス兵がイラク人警察官を撃ったものです。

 レイド・アル・モサウィ(Raid al-Mosawi)は自宅を出たときに路地で撃たれ、後に怪我がもとで死にました。この事件は当時、イギリス兵の指揮官、クリストファー・ジュス・フランクセン少佐 (Maj Christopher Suss-Francksen)が調査しました。

 24時間以内に、ジュス・フランクセン少佐は、イラク人警察官が最初に発泡し、兵士は自己防衛を行ったのを理由に、発砲は 合法だったと結論しました。

 彼の報告は、もう一人のイギリス兵が発砲を見ていて、イラク人が最初に発砲したことを確認したとしました。

 IHATの調査員は2年間を事件の調査に費やし、発砲を目撃したとされる兵士を含めてイギリス兵80人に尋問を行いまし た。しかし、彼は調査員に、彼は路地にいなかったといいました。

 IHATへの供述の中で、この兵士は直接、ジュス・フランクセン少佐の報告を否定しました。「この報告書は不正確で、私が 目撃したことを印象づけています。これは真実ではありません」。

 この兵士は、彼は一発しか聞かなかったといいました。それは警察官がまったく発砲しなかったことを推測させます。これは IHATが尋問した他の目撃者から確認されました。

 調査員は銃撃した兵士はイラク人警察官殺害で起訴され、ジュス・フランクセン少佐は起きたことを隠蔽したことで起訴される べきだと結論しました。しかし、軍隊の検察官は誰も裁判にかけませんでした。

 ジュス・フランクセン少佐の弁護士は「依頼人はIHATの資料をみておらず、IHATの調査員が集めた証拠の品質や信頼性 について、なぜそれが英国法の下で英兵の起訴を満たすために不足だったのかについて、いかなるコメントもできません

 ノースムーア作戦は2014年に政府によって設置され、52件の非合法な殺人を調べました。

 その終了は、王室憲兵隊の調査員が主要なアフガン人の証人に尋問する機会を得る前に、政府によって発表されました。

 ノースムーア作戦のある調査員は「私は両方の政党に話をするまでは仕事を終わらせたくない。仕事をやめて、得たものがイギ リスの説明だけだったら、それが調査とはひどい」といいました。

 「これらの死者の全員は調査され、法手続きがとられるべきというのが、私の視点です」。

 国防省は軍事作戦は法律に従って行われ、嫌疑について広範囲な調査があったといいました。

 「調査と起訴の決定は間違いなく国防省から独立し、外部の監視と法的な助言が関わりました」と報道官はBBCにいいまし た。

 「照会された事件を注意して検討した後、独立した軍起訴機関が起訴しないと決定しました」。

 「BBCの主張は、嫌疑の検討を解放したままの憲兵隊と軍起訴機関に渡されました」。

 日曜日の「Andrew Marr Show」で嫌疑について質問され、ラーブ氏はイギリスは「不正行為があった説明を得る」ことを望んでいるといいました。

 彼は「我々がまったく公正に行ったのは、誤った主張や証拠がない主張が、何年も続けて国に奉仕した人びとを脅かす疑惑の 影、疑惑の雲につながらないようにすることです。我々は適正なバランスをとりました」といいました。

 ラーブ氏はこれらの主張が彼にとって目新しいかどうかの説明を拒否し、イギリス軍の起訴機関は「世界で最も厳格だ」といい ました。

 一方、IHATが調査した兵士数名を代理する弁護士は、不備があり、根拠がなく、偏向しているとして、戦争犯罪の主張を否 定しました。

 ヒラリー・メレディス法律事務所の主席、ヒラリー・メレディス(Hilary Meredith)は、申し立ては「少しも真実味がない、我々の軍人に対する魔女狩りだった」といいました。

 彼女は「数え切れない虚偽の申し立てを企てたフィル・シャイナー弁護士は正当な理由で弁護士の役割を奪われました。彼は英 兵の行動に関する虚偽の目撃証人についての不正行為を含めて、有罪判決を受けました。

 「Panorama」の「War Crimes Scandal Exposed」は11月18日月曜日、GMT 21:00にBBC Oneで放送されます。

 番組はインターネットで見られるようですが、まだ視聴していませんので、これらの事件の信憑性を確認することはで きません(番組はこ ちら)。しかし、複数の調査員が問題を指摘しているので、簡単に間違いだと決めつけることもできないように思わ れます。メレディス弁護士の「魔女狩り」という大げさな表現も気になります。

 イギリスの軍法は厳正に施行されていると思います。米英仏の軍法とその施行態勢は注目に値すると考えています。しかし、こ れらのスキャンダルが真実であれば、見方を変える必要があります。慎重に事実関係を見ていきたいと思います。



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