マティス長官がシリアでロシアと協力せずと明言

2018.7.25


 military.comによると、ジム・マティス国防長官(Defense Secretary Jim Mattis)は火曜日、少なくとも今からはシリアでロシア軍との協力はないだろうと言いました。

 ドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)がヘルシンキでロシアのウラジミール・プーチン大統領(President Vladimir Putin)と会った後、モスクワは先週、ワシントンとシリアへの難民の安全な帰還に関する協力する計画を前進させました。

 マイク・ポンペオ国務長官(Secretary of State Mike Pompeo)は金曜日にこれが大統領階段の一環であることを確認しました。

 しかし、米国防当局はシリアでロシアと協力する見通しについて驚いています。シリアではロシアとアメリカが2つの異なる軍事作戦を行っています。

 こうした動きは議会から特別な許可を必要とするだけでなく、国防総省は多くの民間人が死んだことと、第一に難民の流れを起こした状態の一因となったことでロシアを非難します。

 さしあたり、シリアでアメリカが率いる同盟とロシアの唯一の調整は、両者の地上軍や航空機が関与する事故がないことを確実にするための特別なホットラインを通じてだけです。

 「我々は国務長官と大統領が、将来にどの点でロシアと我々の同盟と共に活動を始めるかを考え出すまでは、さらに追加で何もしないでしょう」とマティス長官はカルフォルニア州での記者会見で言いました。

 「それはまだ起きていません。そして、この点においてさらなる詳細へ私が立ち入ることは時期尚早でしょう。なぜなら、我々はこれ以上に何もしていませんから」。

 シリアで米軍の関与を指揮する最高指揮官、ジョー・ボテル大将(General Joe Votel)は木曜日に、彼はトランプのプーチンとの会談のあと、新しい指示を受け取っていないと言いました。

 議会は2014年にロシアがクリミアを併合した後、軍隊同士の協力を禁止する法案を通過させました。


 金持ち喧嘩せずを実践したがるトランプ大統領ですが、そのために国防当局が混乱している様が、この記事から見えます。

 この記事はアメリカのシリア戦略というよりは、米政府内の混乱を示しています。

 議会はロシアと協力するなと主張しています。これは当然の反応に思えます。ロシアのクリミア併合はNATOの足元を見ながら、実に巧みなやり方で行われました。それを不愉快に思わない人はいないでしょう。

 しかし、そんなことは気にしないトランプにとっては、どうということはありません。大物同士は手を握っておけば安全だという発想しかありませんから、さっさと会談で協力を決めてしまいます。

 トランプに複雑なシリア内戦が理解できるとは思えません。

 米軍はロシアを排除して、反政府派を支援し、アサド大統領を追放したいのです。そこまで行かなくても、反政府派が生きる場所を確保したいのです。もともと、シリア内戦は反政府派に対するアサド政権の非人道的な武力行使を止めるために始まりました。

 トランプはそんな事情には頓着しません。彼にはプーチンといかに旨味が得られる世界を構築できるかが問題なのです。

 マティス長官もトランプ政権の中で立場を失いつつあるように思えます。トランスジェンダーの隊員の処遇に関する問題では、米軍首脳部は大統領と対立しています。軍人出身のマティスはその板挟みになっているはずです。

 


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