対テロ戦負傷の3分の1は戦闘外で発生

2018.6.1


 military.comによれば、イラクとアフガニスタンで負傷した兵士約30,000人は転落や車両衝突のような戦闘ではない事故で怪我をしたと、新しい研究は結論しました。

 水曜日に出版された医療専門誌「JAMA Surgery」も、これらの紛争で殺された兵士の10パーセントは戦闘ではない負傷で死んだと結論しました。戦闘ではない負傷の割合は2003〜2014年の時間枠にわたって比較的安定したままです。

 中心的研究者のフォート・サム・ヒューストン基地(Fort Sam Houston)の陸軍手術研究機関(the Army Institute of Surgical Research)のタン・D・リ博士(Dr. Tuan D. Le)は、戦闘ではない負傷の量を調べること、それらを特徴づけることを目的にした研究は、派遣の間の負傷を防いだり減らす方法を理解するために重要だと言いました。

 戦闘ではない負傷(Nonbattle injuries)、いわゆるNBIは医療資源を枯渇させ、コストを増やし、任務の可能性を減らし、負傷した隊員の長期間の体の障害をもたらす、とリ博士は書きました。

 「イラク・アフガン戦争の間、NBIは大きな重荷であり続けました」と研究の著者は書きました。彼らは十年を越える航空搬送医療の記録を使った研究は派遣中の陸軍の医療搬送の3分の1は戦闘ではない負傷の結果だったと指摘しました。

 戦闘ではない入院の率は13パーセントのベトナム戦争、25パーセントの湾岸戦争よりも上でした。

 「NBIの歴史的な負担にも関わらず、研究者たちは主に戦傷の発生と防止に集中してきました」と研究はいいました。

 2003〜2014年にイラクとアフガンで負傷し、病院へ搬送された隊員29,958人のデータを国防総省の外傷記録を用い、研究者はNBIは軍医療施設に入院した全負傷者の34.1パーセント、死者全体の11.5パーセントを占めると結論しました。

 転落は約21パーセント、車両衝突は約19パーセント、機械や装備による事故は約13パーセント、重たい物体による特定されない負傷は約12.6パーセントを占めました。銃傷は事故の負傷の約7パーセントで、スポーツによる負傷の少しだけ上でした。

 メリーランド州、ベテスダ(Bethesda)の「the Uniformed Services University of the Health Sciences」の研究副学長、トッド・E・ラスムッセン博士(Dr. Todd E. Rasmussen)は、新しい研究は「警鐘」だと解説に書きました。研究に関与しなかったラスムッセン博士は、転落、衝突、機械の事故の戦傷ではない3つの主要な負傷は防ぎ得ると付け加えました。

 しかし彼は、故意ではない火器による負傷が比較的低いことのような、この分析で特定された成果は重要だったと書きました。

 「数十万人の兵士が莫大な武器と共に派遣された12年間の期間で、故意ではない火器による負傷をしたのが728人の隊員だけという事実は注目に値します」とラスムッセン博士は書きました。

 研究は戦闘ではない負傷は男性よりも女性がほぼ2倍多く、陸軍よりも空軍と海軍が事故負傷率が高いことも見出しました。海兵隊は最も低い戦闘外の負傷率で、25.7パーセントでした。


 米軍の凄さや、米軍から出る情報に注目する理由の一つは、こういう研究が非常に多くて参考になるからです。

 反面、日本では何が起きているでしょうか?。南スーダンの日報は廃棄されて、実際に廃棄されていなかったものが読めるだけです。これでは、次の派遣で過去の派遣における医療に関する情報を見ることができない。誰も検証を行えないことを示します。

 ここに米軍と自衛隊の大きな違いがあります。どちらがよいかは明白ですね。

 戦死者は広報が出るので、誰がいつどんな理由で死んだかは分かります。しかし、負傷者は数が多いこともあり、隊員のプライバシーに関係することでもるので、総数くらいしか分かりません。このため、負傷者に関する統計情報は貴重です。今回、この事実がわかってよかったと思います。

 車による事故が多いのは、戦死者広報にも現れていました。非敵対的な交通事故による死亡例を、しばしば見ているからです。ただし、これには戦術上の理由で視界が悪い夜間に移動していたら、それは一見戦闘外でも、実際には戦闘において起きたことになります。

 また、イラクでは基地内での感電事故が多発した時期がありました。これが武装勢力のサボサージュ活動だったら、戦闘に無関係だったとは言えません。

 こういう分類の難しさはありますが、負傷者全体の3分の1も戦闘外で起きていたら、それは軍隊にとって大きな負担です。空軍と海軍は作業中の事故が多いのだろうと思われます。機械類を扱うのが主な仕事だからです。

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.